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ギルド医療班

「アメルさん、ありがとう。それは……そこの棚に入れておいてくれるかな」


「分かりました」


 ギルド医療班が治療の為使っている一室で。私は手伝いに来させてもらっている。私に付いてくれているのは、カイルさんを診てくれた医療班の方。アミカさんに胸ぐらを掴まれた、という方が印象に強いかも。


 配給されたであろう薬品の整理が終わり、私達は一息ついた。


「医療班って、皆さん朝から大変なんですね」


「冒険者は、朝も夜も関係なく活動するからね。魔物の動きだけ見れば、夜の方が活性化しているという話だから、朝から昼にかけてギルドへ来る冒険者が多い様だよ」


「そうなんですね」


 私達も早い時は朝から、遅くても昼過ぎにはギルドへ来ることが多い。冒険者にとって、生活のサイクルになってるんだろうな。


 椅子へ腰掛けた女性が、アメルさんもどうぞと声を掛けてくれた。お言葉に甘えて、座らせてもらう。


「ここから患者が運ばれてくるまで、私達は基本的にゆっくり出来る。そういえば自己紹介がまだでしたね。私はセラ、といいます。よろしく、アメルさん」


 笑顔で話してくれるセラさん、綺麗な人だなぁ。


「精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」


 私はしっかりと頭を下げた。


「ふふ、そうかしこまらないで。今日アメルさんに応援を頼んだのは、西の領主、その古傷を治したという実力も頼りにしているんだけど、医療班側の人数が足りないのも正直な所で。おまけに、私は医療班の一人ではあるけど、まだまだ未熟なものだから、いつも二人体制で動いているんだ」


 だから私と一緒、ごめんね? 相方が頼りなくて。そういうセラさんへ、私は頭を横に振った。


「私も、知っている人じゃないと上手く喋れないかも、と思っていたので。セラさんが一緒で嬉しいです」


 そう言った私を、セラさんは眼を細めて見つめてくれた。


「嬉しいことを言ってくれる。では、午前中だけという事でしたね。患者が来ないのが一番だけど、それまでゆっくりしましょうか」


「はい」


 セラさんが飲み物を淹れてくれて、私達はささやかなお茶会を開始した。



「そうですか。水の巫女候補になったのは、やはり事実なんですね」


「はい、何故か気に入られてしまって」


「それは領主の古傷を治し、水の祭典を復活させたんですし当然の事でしょう」


 セラさんは凄いね、と褒めてくれた。て、照れちゃうな。


「気にはなっていたんですが、肩にいる水鳥はその時に?」


「はい、アプサラスといいます」


「ふふ、良い名ですね」


 ギルドの人達は周知しているかもだけど、アプサラスにはなるべく話さないようにお願いしている。アプサラスは翼を広げ、セラさんへ首を垂らしていた。


「おぉ……賢いですね。良いパートナーだ」


「ありがとうございます」


 貴方達のパーティーは、私達医療班でも度々話題に上がるんだ。そう言って、セラさんは口下手な私に代わり話を進めてくれた。


「ジュエレールの前には、盗賊の捕縛もしたとか。本当になんでも出来るよね、貴方達は」


「いえ、凄いのはカイルさん達で、私は足を引っ張ってばかりです……」


 あの時も捕まってしまって、カイルさんの足を引っ張ってしまった。違和感はあったのに……もっと、しっかり視ていればあんなことには……。


 ーー身の丈を知るんだ。


 アニエスさんに告げられた言葉が脳裏を過ぎり、私は頭を振って思考を切り替える。その様子を見たセラさんが、少し優しい声色で語りかける様に話してくれた。


「……そんな事はない。きっと、その経験はアメルさんの糧になります。無茶し過ぎないよう、それでも前へ進める強さを手にして欲しい」


「……はい、ありがとうございます」


 私なんかじゃ、なんて思っちゃいけない。私も決めたんだ、強くなるって。カイルさんが大変な時、今度は私が助けるんだ!


「アメルさん、その……興味本位で伺いたいんだけどね?」


「? はい、何でしょう?」


「その、盗まれたのは貴族の物だったと聞いて。私は貴族の方と接点がないから、えぇと、つまり……どんな報酬があったか、気になって」


 下世話ですみません……とセラさんは指を合わせて眼を泳がせている。私は思わず苦笑してしまった。


「えっと、お食事には呼んで頂けました。盗まれた品は全て貴族にお返ししたみたいで、貴族の物では無かった武器を報酬として受け取っています」


「武器、ですか?」


「はい。鑑定してもらった所、それ、は魔法銃で……」


 魔法銃!? その辺ではお目にかかれない、それこそ魔法剣以上の代物じゃないですか! セラさんが興奮しながら話してくれていたが、私は違う考えが頭の中に浮かんでいた。


 ーーアメルの魔力量じゃ、この武器は扱えないよ。そう教えてくれたのはランクス。


 確認もしたし、私ではあの武器を使いこなすことは出来なそうだった。でも今は、水の精霊と呼ばれるアプサラスがいる。……もしかしたら?


「アメルさん? どこか具合でも?」


「い、いえ! 少し考え事を。すみません」


「いきなり口数が減ったので、慌ててしまいました。体調が優れないようなら、すぐに言って下さい。私はこれでも医療班の一員ですので」


「はい、ありがとうございます」


 ところで、その魔法銃っていうのはどんな性能なんです? ま、魔法が出せるのかな? とセラさんは興味津々だった。


 他にも、ジュエレールでの話やダンジョンの話など、セラさんは楽しそうに聞いてくれていた。その後、三十分もしない内に、ギルドが喧騒に包まれることになるなんて、その時の私達は思ってもいなかった。

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