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訓練と再会

 ちょっと長いです。

 宿へ戻ってから、アメルとリリに夜遅くまで問い詰められた俺。翌日、身体はだるかったが出発の準備をし朝食へ。皆で食事を済ませた後、アメルはギルドの医療班へ手伝いに。何かあれば連絡をとアニエスは自分の家へ。リリは埋め合わせちゃんとしてよね! と言い、どこかに行ってしまった。ちょこちょこ居なくなるけど、あてがあるのかな?


 残ったのは俺とライム、そしてイッカクだ。俺が今より強くなるためにアニエスからの助言、余暇時間をイッカクとの戦闘訓練に充てること。どこでやるかを悩んでいた俺は、駄目元でティアジャールさんを訪ねることに。


 店まで向かうと、ティアジャールさんは外で作業をしていた。俺達を見つけると、手を止めてこちらへ歩いてくる。


「連日は珍しいな。開店前だが用事か」


「おはようございますティアジャールさん。開店前なのにすみません、実はーー」


 俺はアニエスから言われた事を伝える。ティアジャールさんは黙って話を聞いてくれていた。


「そんな訳で、もし良かったら裏の土地を貸してもらえないかなと」


「俺が断ったらどうするんだ?」


「その時は、草原の方へ行こうかと思ってます。少し距離はありますが」


 ティアジャールさんは考えている様だった。少しして、ゆっくりと口を開いた。


「……日の出から開店時間までの間なら、いつ使っても構わん。ただし、その様子は俺も見せてもらう」


「ありがとうございます! それで大丈夫です」


 俺達は許可を貰い、店の裏手に移動した。



「それで、どうするんだ」


「え?」


「訓練の内容だ。お前より、そこの従魔の方が強いんだろう?」


 ティアジャールさんに聞かれ、改めて考える。そうだ、戦闘訓練をするというだけで、内容を全然考えてなかったな。


「主ヨ、別ニイツモ通リ武器ヲ使ッテ構ワナイ。俺ハ受ケニ回ル」


「そ、そうは言ったってさ」


 確かに、俺がイッカクに攻撃を当てれるか分からないけど。イッカクも、受けきれるからこその発言なんだろう。だが、そこにティアジャールさんから待ったが掛かる。


「人の土地で物騒な事をするな。模擬刀を貸してやる、お前は何か使うのか?」


 ティアジャールさんがイッカクへ尋ねると、必要ない、と何か球体の様な物を取り出した。綺麗だな。


「イッカク、それは?」


「主ヨリ受ケ賜ッタ恩恵ダ。名ヲ、千変万化トイウ」


 そう言ってイッカクは球体を見つめる。すると、球体はみるみる形を変えていき、一本の長い棒へと変化した。え、凄い。


「コノスキルハ、望ンダ武器ヘ姿ヲ変エル事ガ出来ル」


 え? という事は、本人が望めばどんな武器にでも変化するの? 魔法剣や魔法銃にでも? なにそれ、最強じゃん。ティアジャールさんも驚いているかなと視線を向けたら、何とも言えない顔をしていた。じゃあカイルだけでいいな、と一度店に戻り、愛剣と瓜二つな模擬刀を持ってきてくれた。


「刃は潰してある、思い切りやっていい」


「分かりました!」


 裏手の土地から出ないこと、イッカクは基本受けに回ることを条件に、俺達は訓練を開始した。



「のわー!!」


 吹き飛ばされる俺。これ、森の時と一緒。めっちゃ痛い。


 イッカクは俺の攻撃をいなし、そのまま返しの一撃を的確に当ててきた。ちなみにライムとは融合済み。イッカクは綺麗な手捌きで、棒状になっている武器を回している。


「主、今ハ考エテモイイ。ソノ動キヲ、反射デ出来ル様ニナレ」


「分かった!」


 そして繰り返すこと数十回。結局、一撃も当てることが出来なかった。


「カイルお前……動ける様になったな」


「あ、ありがとうございます……」


 何故かティアジャールさんに感心され、俺は複雑な気持ちになった。一発も入ってないんだよ? 悲しいよ俺は。


 段々と、身体に力が入らなくなってきた。限界が近いか、ティアジャールさんに迷惑を掛ける訳にはいかない。


「イ、イッカク。ちょっと休憩させて」


「分カッタ」


 イッカクに疲れた様子は微塵もない。俺はスキルを解除し、だるさと息切れを一身に受けながら、今の戦闘を思い返す。


 ーー分かっていたけど、まじで強い。色々な動きを織り交ぜてみたけど、一向に当たる気配がない。全て捌かれた。イッカクがアニエスの方が強いって言ってたけど、近接戦闘をさせてもらえないって事なんだろうなと勝手に結論付けた。


「おい、カイルが回復するまで暇だろう。俺の相手もしてくれ」


 声がした方を見ると、ティアジャールさんが棍の様な武器を持っていた。奇しくもイッカクが作った棒とそっくりだ。イッカクは俺の方を見てくる。


「ティアジャールさん、その、大丈夫なんですか? 俺じゃ参考にならないかもですが、イッカクってかなり強いんです」


「武器の扱いを見れば分かる。俺も少しは身体を動かさんとな」


 そう言ってティアジャールさんは、イッカクヘ向けて構えを取った。俺が言えることじゃないけど、様になっている。イッカクはこちらを見たまま動かない。俺からの指示を待ってくれているみたいだ。多分やるなと言えば、そのまま立っていそうにも見える。


「イッカク、怪我はさせるな」


「……良イノカ?」


 戦ってしまってもいいのか? という意味合いに聞こえた。俺が頷くと、イッカクがティアジャールさんに視線を向ける。ティアジャールさんは息を吐き、こう言った。


「ーー俺も甘く見られたもんだ」


 瞬間、ティアジャールは間合いを一瞬で詰め、イッカクの顔面へ棍が突き出される。


「……!!」


 イッカクが慌てて棒で払いのけるが、その反動を使って、流れる様にイッカクの脇腹へ棍を当てていく。イッカクはその動きに眼を見開いていた。


「折角の訓練だ。お前も少しはやる気を出せ」


 ティアジャールが告げると、イッカクは初めてと言える程の笑みを見せた。


「……面白イ!」



 そこから激しい応酬が続く。俺は興奮して見入ってしまっていた。二人は攻防の後、一度距離を取る。


「……こんなもんだな」


 ティアジャールさんは汗を拭いながら、棍を地面へ立てる。対するイッカクは汗をかくことなく、その場へ佇んでいた。俺は興奮冷めやらぬままティアジャールさんへ駆け寄った。


「ティアジャール、滅茶苦茶強いじゃないですか!」


「【鍛冶師】として、武器の扱いをちゃんと出来ん奴に、自分の武器を任せたくないだろう? それだけだ。お前達の方が余程強い」


 それに、と話を続ける。


「アイツは素手の方が強いはずだ。動かし方が少し、ぎこちなかったしな」


「……イッカク、それ本当?」


「見抜カレル様デハ、俺モマダマダダ」


 肯定と取れる返事をされて、複雑な気持ちになった。俺、その状態のイッカクに一発も入れれてないんだけど……。


「カイル、そう腐るな。馴染めば、俺くらいの動きならすぐ出来る様になる」


「だといいんですが……」


「さて、少し動きすぎた。開店準備を始めるから、俺は店に戻る。お前達も落ち着いたら帰れ」


 またな、とティアジャールさんは店の方へ。まだまだ頑張らないとな。


「よし、イッカク。俺達も行こう」


「アア」


 ティアジャールさんの店を後にした俺達。少し歩いた所で声を掛けられた。


「おう、カイル。それと……新しい、従魔、か?」


「! アミカさん!」


 おう、とアミカさんは手を上げて応えてくれた。



「久し振り、になるか。どうだ? 調子は」


「ぼちぼち、になりますね。色々とあったんですよ」


「嬢ちゃんの話は聞いてる。西の都ジュエレールで、水の巫女候補になったんだってな」


 全く、お前達はすげぇな、とアミカさんは豪快に笑った。どこか吹っ切れた感じを受けた。


「アミカさんの方はどうですか? やることが出来たって、それから少し経ちましたけど」


 そこでハッとした顔をしたアミカさん。改めて俺へ向き直り、真剣な表情で話し出した。


「そうだ、一番大事な事を忘れちまう所だったぜ。ということでカイル、話がある」


「なんですか?」


「俺をーーーーお前達のパーティーに、入れてくれ」

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