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話し合いの前に

「ちなみに、主様は魔法の心得はあるのかい?」


 アニエスがふと、そんな質問を投げかけてきた。


「魔法? 初期魔法ならなんとか、って所かな。急になんで?」


「なに、あるに越したことはない。それだけ漆黒の髪をしているんだ。持て余すのは勿体ないと思ってね」


 ……また、髪の話か。


「アニエス、ごめん。髪の話は止めてくれないかな。あまり良い思い出が無いんだ」


 ちょっとアンタ! と何故かリリが止めに入ろうとするが、アニエスは話を続けていく。


「何を言う。私では行けなかった高みへ、届きうる存在が眼の前にいる。その色、その艶、天然なのだろう? 闇を扱う者として、憧れない者などいなーー」


「止めろ、って言ったの……聞こえなかったのか?」


 俺の言葉に、その場が静まり返る。……自分自身、どんな顔をしているか分からない。努めて冷静にしているつもり、なんだけど。その話になると、あまり抑えが利かなくなる。だから嫌なんだよ。


「……そんな顔も出来るんだね、安心したよ。機嫌を損ねたいわけじゃない、詫びよう」


「いや……ごめん。キツい言い方をした。その話は、なるべくしないでくれると嬉しい」


 分かった、とアニエスは言ってくれた。一先ず安心かな。周りを見ると、イッカク以外全員驚いていたし、リリが一番びっくりしている様だった。ごめんよ。


「さて、話を戻そう。そうしたら、一人ずつ話をしたい。まずは主様と、良いかい?」


「分かった」


「他の者は転移で中央まで送ろう、イッカクは私達と一緒に来てもらう。一応になるが、外で見張りをしておくれ」


「アア」


 迅速に、皆へ指示を出していくアニエス。だがリリはその動きに待ったを掛けた。


「ちょっと待ちなさい、何勝手に話を進めてんのよ。そもそも偉そうにしてるけど、アンタ何様なワケ?」


「ちょ、リリ」


 俺は制止しようと試みたが、リリは止まらない。


「後から入ったくせに。私は素性も分からない奴の言う事なんか聞く気も無いわ。舐めんじゃないわよ?」


 リリの言葉を聞いて、アニエスは眼を見開いていたが、やがて静かに笑い始めた。リリは苛つきを隠さず、アニエスへ尋ねていく。


「何がおかしいのよ」


「いや、なに。久し振りに啖呵を切られたなと思ってね。つい嬉しくなってしまった。ただまぁ、私も自分より実力の低い者には従う気は無いし、言わんとしている事は分かる」


 え、じゃあ俺は? 従魔になってくれたけど。


「主様は別だ」


 視線を俺へ向けるアニエス。……だから、思考を読まないでおくれ。そうだね、とアニエスは少し考え、リリへ告げた。


「圧倒的な力があれば、私の意見を受け入れてくれるかい?」


 リリはフンと鼻を鳴らした。


「アンタ、【魔法使い】だかなんだか知らないけど、サキュバスだからって私の事舐めてるでしょ。私、強いのよ? 圧倒的な力? やれるものならやってみなさいよ」


「二言は無いね?」


「アンタもね」


 リリの言葉を聞いたアニエスは、口角を上げながらこう呟いた。


「おいでーーーーホムラ、リク」


 呟きと同時に地面が光る。転移陣に近い形だが、今光っているのはこじんまりとした陣だった。そこから人と、狼らしき獣が現れた。


 出て来た人物は、女性。長身で、赤髪の長髪だった。眼もこれでもかと赤く染まっている。もう一方の狼は、月狼程は大きくないが、野生の狼より一回り大きい体躯をしており、こちらは漆黒。全身真っ黒だ。


「アニエス様……!! お久し振りにございます。呼び出して頂けるのを、心待ちにしておりました」


 女性は、アニエスを前に跪いた。相変わらず大げさな、とアニエスは苦笑していた。


「久し振りだなぁ、アニエス! 相変わらず良い胸と尻してんじゃねぇか、オイ! お? 他にもイイ女がいるじゃねぇか、ここは天国かぁ!? ギャハハハ!!」


 こっちの狼は、とても下品な言葉を使っている……! 赤髪の女性は、嫌そうな顔を隠そうともせず眉間に皺を寄せ、狼を見つめている。狼が喋る事には、もはや驚かなくなっている自分がいた。


「アニエス、これは?」


「私の召喚魔法で呼び出した者達だ。人型がホムラ、その狼がリクだ」


 召喚された両名は、俺を見つめてきた。


「ほれ、挨拶しないか。我が主となった【従魔士】のカイルだ」


 アニエスがそう言うと、ホムラと呼ばれた女性が立ち上がり、こちらへ向き直った。スラっとしており、俺より身長が高い。ホムラさんは深々と頭を下げてきた。


「ーー我が主様の主、ということは、私にとっても主様ということになります。カイル様、これから宜しくお願い致します」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 俺もしっかりと挨拶を返す。うん、これなら良好な関係を築けそうだ。


「オイ、コラ。勘違いすんなよカイル」


 そう言ってきたのは、リクと呼ばれた狼だった。発言がおっかないぞ……!


「俺ぁ、お前なんかと馴れ合うつもりはこれっぽっちも無ぇ。せいぜいアニエスの為に、身を粉にして働けよ?」


「わ、分かった」


 分かりゃあいい。そう言ってリクはその場で丸まった。モフモフしてる、喋らないと可愛いタイプか。


「すまない主様。私とこの者達との関係は、それぞれ違うものでね。不敬を許しておくれ」


 苦笑しながら謝ってくるアニエス。


「いや、うん。その辺りは大丈夫。ちょっとびっくりしただけ」


 ホムラとリク、両名ともアニエスの為なら動く、って事だよな? ど、どれだけ強いんだこの人。


「さて、リリよ。こんな所でどうかな?」


 アニエスがリリへ尋ねる。リリは腕組みをしながらそっぽを向いた。


「……私、カイルに空いた分の埋め合わせしてもらうんだから。話し合いだかなんだか知らないけど、さっさと終わらせてよね」


 口には出さなかったが、リリはアニエスの実力を認めた様だった。


 その後、アニエスはホムラとリクをこの場から消失させて、イッカクと俺以外を転移陣で中央へ戻した。ホムラさんは、なんだか名残惜しそうにしていたな。


「さて、じゃあ主様とライム。付いておいで」


 そう言って、アニエスは外へ出て行った。ん、ライムの名前も呼んだな? 見ると、まんまるのスライムが俺の肩で身体を揺らしていた。

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