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話し合い

 ちょっと長いです。

「アニエス、ライムも一緒でいいの?」


「構わないよ、試したいこともあるからね」


 古家の入口には、イッカクが腕を組み寄りかかっていた。試したいこと、か。なんだろう? アニエスに付いていく形で、古家から少し離れた場所まで来た俺達。アニエスは立ち止まり、本を取り出した。その本を開きながら手をかざすと、地面の一部がどんどん隆起していって、次第に一枚の壁となった。これも魔法なんだろう、す、凄いな……。


「主様、ティアジャールから貰った剣があるね。あれに魔力を流してみてくれないか」


「魔力を?」


 俺は鬼剣、鬼斬を取り出す。手に集める感じでいいのかな?


「集めた魔力を、剣に流すイメージだ」


 びっくりするから、当然の様に返答してこないで。口に出してないんだよ? これ。魔力そのもので良いみたいだから、火を出すとか水を溢れさせる、みたいなイメージはしなくても良さそうだな。俺は剣へ魔力を流すイメージを持って集中する。すると--刀身に変化が現れた。


 根本から先端へ向けて、光の筋が入っていく。な、なんだこれ?


「よし、その状態を維持したままこれを斬ってみておくれ」


「……え?」


 これって……この壁の事? 土といっても厚みはあるし、魔法で出したものだから防御で用いたり、敵の真下から攻撃する形で使うんだと思う。


「け、剣、折れない? これ」


 二年使ったとはいえ、俺の力量不足で剣を折っちゃったばかりなんだけど。


「鬼剣とティアジャールが言っていたし、オーガの素材をふんだんに使っているのだろう? 刃こぼれはしても、折れることはないよ」


 アニエスがそう言うなら、やってみるか。俺は構えを取り、土の壁へ向かって薙ぎ払いをした。弾かれると思っていたから、気持ちゆっくりと振ったがーーーー剣に抵抗は無く、壁には横一文字の綺麗な剣筋が出来ていた。これを、俺が……?


「実際にやってみた方が早いからね。その剣に細工をした。魔力を流すと一時的にだが、切れ味が増す。ある程度なんでも斬れる様になるよ、刃こぼれも無いだろう?」


 切れ味が増すどころの話じゃないだろ、これ。それに、刃は新品そのものだ。この性能……。


「これ、魔法剣より凄くない?」


「あれは武器自体を摩耗するが、こちらは使い手の魔力がいるだけだ。勝手は良いはずだよ、あやつには吠えられたがね」


 アニエスは何の気無しに言うが、そもそも魔法剣自体とんでもない性能をしている。それをゆうに超えるなんて。


「気にすることはない、ちょっとしたお礼だよ」


 魔力を流せばいつでもその状態になるよ、とアニエスは言ってくれた。俺自身、ティアジャールさんとアニエスの合作とも言える凄い武器を手に入れて、高揚した気分が抑えられなかった。



 その後、アニエスに常時扱うには主様の魔力量がイマイチだね、としっかり釘を刺され、いざという時の運用となった。それでも、切り札になりうる性能と使い勝手の良さだ。頼れる武器を手に入れる事が出来た。


「武器の扱いは大丈夫そうだね。次は、ライムとの従魔融合についてだ」


「アニエス、俺は嬉しいんだけど話し合いは良いの? 聞きたいこともあるんじゃ」


「主様とはこれからも時間がある、ゆっくりと聞くから大丈夫だ。仲間へ聞くことの方が多いから、そちらが優先になる。主様に関しては、話し合いより、今のうちにどれほどの強さなのかしっかりと把握しておきたい」


 戦略を練る為に、ってことだな。納得。


「その為にライムを残した。主様は、その子と一番長いのであろう?」


「うん」


「イッカクとじゃれてる時に、動きがスムーズだったからね。しかし、あの動き……主様、楽をしているだろう?」


 じゃれてた? 俺はただただ必死だったぞ。


「ら、楽はしてないよ?」


「その子に移動を任せていたと見る。本来、自身が動かないといざという時、それが枷になる場合がある」


 アニエスには見抜かれていた。だけど、自分で速く動こうとしてもライムの能力を全部引き出せていない俺じゃあ、逆に遅くなっちゃうんだよなぁ。


「それを慣らす為に常時融合すべきなんだ。主様がそれを良しとするかは別としてね」


「……そうだね」


 今後は、ライムが良いって言ってくれる時は、日頃から融合していくか。


「そもそもな話、融合をすると、どの程度魔物のスキルを扱える様になるんだい?」


 アニエスにそう聞かれ、思い出した。ライムに使えるスキルとそうでないスキルがあること。俺は逆にどうしてだろう、とアニエスに尋ねてみた。


「大体は使えるんだけど、ライムに関してだけ使えないスキルがいくつかあるんだ」


「何だい?」


 俺はライムのスキル、擬態、分裂について話した。


「ふむ、面白いスキルだね。ライムや、試しにそのスキルを使ってみてくれないかい?」


 それを聞いたアニエスが、ライムへ提案した。


「いいよー!」


 ライムは俺の肩から降りると同時に二体へ増え、両方でポーズを取る。


「「へんっしん!」」


 眩い光を発し、それが収まっていくと……俺が二人出て来た。選ばれたのは、俺でした。アニエスはそれをまじまじと見つめる。


「これは……眼の色以外は主様そのものだ。それに、どちらも実体がある、と」


「「すごいでしょー!」」


 ライムは、褒められた事に嬉しくなったみたいで跳ねていた。だから、俺の姿で跳ねないでってば。


「……想定以上だ。凄いね、この子は」


 アニエスも感心しているみたいだ。なんだか、俺も褒められてるみたいで鼻が高い。


「うん、頼りになるんだ」


「他のスキルはどうなんだい?」


「多分把握できてるし、使えてる。えっとね」


 契約時のスキルは使えている。物理的な攻撃へ耐性があること、魔法には弱いことを伝えた。


「ふむ……それだけ正確に把握できていて、擬態や分裂は使えない? 主様、他の者達と融合した時に、何か状況が違うことは無かったかい?」


「状況で?」


 ライムと初めて融合したのは、アメルを救出する前に練習で。リリとは助けに入った洞窟で。うーん……?


「まぁ、焦ることはない。スキルは分かっているんだ。ライムと融合している時に、常に確認する様にすればいい。何か条件が整えば、使えるかも知れないからね」


「分かった、そうしてみるよ」


 これだけのスキルだ。やっぱり何か条件があるんだろうな。融合した時は、忘れずにスキルを確認しようと決めた。


「では、一先ずこんな所だね」


 そう言って、アニエスは地面へ転移陣を描く。ーー次の瞬間、皆がいる中央へ戻ってきた……ここは、ギルド前か?


「おい、地面から人が出てきたぞ……?」


「嘘つけ、そんな話があるか」


 辺りの住民は、俺達を見てざわつきを見せる。アニエスは溜息を吐いた。


「お前達……もうちょっと、目立たない場所で待てないのか」


「なによ、アンタがいきなり中央まで飛ばしたからでしょうに。分かりやすい所に居るんだから、感謝して欲しい位よ」


 そう言うのはリリ。アニエスは俺へ向き直ってこう提案してきた。


「……主様、宿で待機してておくれ。話が終わればそこを目掛ける」


 とんでもない発言だったが、アニエスなら造作もない事なんだろう。俺は頷いた。


「では、次はお前さんだよ」


「ちょっ、気安く触んないでよ! 私そんな趣味はなーー」


 アニエスがリリの肩に手を置くなり、転移陣を展開し二人はあっという間に消えてしまった。


「おい、おい……今度は人が消えたって!」


「馬鹿言うな……ってあれ、さっきまで居た女がいねぇな……?」


 不思議な現象に、段々と人だかりが出来始めていた。マズいぞ。


「こ、ここじゃ目立つから、とりあえず宿に行こう」


「わ、分かりました」


 俺達は早足で宿へと移動した。



 宿へ入り、多目に部屋も取れたので、一部屋に集まって待機することに。そこで、アメルに尋ねられた。


「カイルさん、アニエスさんとはどんな話を?」


「そうだなぁ、主に戦闘についての話だったね。仲間になってくれたから、皆の実力を知りたい感じだと思うよ」


「そ、そうなんですね」


 良かった、とアメルが呟いた。アメルも精霊化が出来る様になって、益々力を付けているし問題ないはずだ。リリは……分かんないな。実際に戦う所を見たことないし。でも、スキル関連で頼りになるのは間違いないし、アニエスもその辺りを評価してくれるはず。


 戦闘はしないだろうし世間話、なんなら俺の話をしながら帰って来るだろう。俺は楽観的に考えながら、飲み物を口に入れた。

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