ギルドの個室にて
そこから俺達は、ギルドの中に居た全員に見られながら、いそいそと個室へ移動した。
「さ、先程は失礼いたしました。公で大きな声を出してしまい、大変ご迷惑を……」
「よい。私の二つ名を知っている者も、現在はそう多くないだろう。よく覚えていたね、受付嬢」
「き、恐縮です……」
ジェシカさんが、こんなに縮こまっているの初めて見た。
「やっぱり、アニエスって凄いんだな」
「凄いなんてもんじゃないわ! カイル君、貴方分かってるの? 魔法を扱う職業の人なら誰でも憧れる……それはもう、神みたいな存在なんだからっ!」
「ジ、ジェシカさん?」
魔法を極めたといっても過言じゃなくってね、と説明に熱が入るジェシカさん。ハッとした様子で、一つ咳払いをした。
「あ、後でエルフ領にも確認自体は取りますが。カイル君の従魔になったというのなら、間違いないと思います。カイル君、これはかなりの大事だから上にも報告するわよ?」
「はい、大丈夫です」
「アニエス氏、アニエス氏と呼ばせてもらっても失礼じゃないかしら……えぇと、彼女の素性は把握しました。それで、そちらの従魔は?」
ジェシカさんが尋ねてきたのは、イッカクについて。
「ゴブリンキングの変異種になります」
これは事前に決めていたことだ。オーガと正直に答えるのも、要らぬ反感を買うかも知れないから、捻り出した結果これでいこうとなった。元々アニエスが従えていたと告げると、ジェシカさんも納得の様子だった。イッカクをまじまじと見つめるジェシカさん。
「アニエス氏が従えていたなら納得です。それにしても……ゴブリンにはとても見えないわね。肌も人に近いものだし、ゴブリン特有の臭いがある訳でもない。へぇ……東の森にはゴブリンも生息しているのね」
ゴブリンの長にあたる存在だから、当然ゴブリンも居るのだろうと感心するジェシカさん。すいません、他の魔物は見てないです。
イッカクが視線を返すと、ひいっと言いながらジェシカさんは後退した。分かる、その気持ち。
「ご、ごめんね。カイル君の従魔だから危険がないことは承知してるんだけど。そしたら、ちょっと纏めるわね」
そう言ってジェシカさんは、紙にペンを走らせた。
「よし、と。じゃあ一旦終わりで大丈夫です。後で聞きたいことが出たら、呼ぶことになるかも。報酬に関しては、直接預かりの方へ入れておくわね。これ、詳細の用紙です」
「ありがとうございます」
報告も終わり皆個室を出ていく中で、俺だけジェシカさんに呼び止められた。
「カイル君」
「どうしました?」
「あ、後で……アニエス氏に、サインだけお願いしてくれないかしら?」
サイン? なんでだろう、有名だからかな? 俺は本人に聞いてみますねと告げて、個室を後に。カイル君、ありがとう!! とジェシカさんから今日イチの感謝が飛んできた。




