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AF―After Fantasy―  作者: 04号 専用機
Vengeance is mine
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トーク・ウィズ・フレンズ

「……ていう夢を見たんだ」

「バッカヤロー、じゃあなんでGPSの記録なんて見せてくんだよ」

「いやぁ、よく出来た夢だと思って」

「じゃ、聞くぜ? 聞いちゃうぜ? なんでメッセージにグロ画像送ってきたん?」

「…………やっぱり無理あるか」

「無理だって」

「現実かなぁ」

「現実かもな……」


 次の日の夕方。ボクは友達の家に寄ることにした。


「広希さぁ、わざわざオレに話すってことはなんか意味あるんだろ?」

「いや、ただちょっとね。君が恋しくなっただけだよ藤高くん」

「うえー気持ちわりぃ。そういう言い方やめろよな」


 そういって、隣でモデルガンの整備を始める。


藤高 友也(フジタカ トモヤ)……」

「どうしたん、急に名前呼んじゃって」

「お前さ、何番目に狙われると思う?」

「え、なに? 急にビビらせてくんじゃん」


 整備を進める藤高を横目に、昨日のことを整理していく。

 ボクには――正確に言えばボク達には、夢と片付けられない事情があった。


「藤高だって、分かってるだろ。失踪してるのはボクらと同中だった連中だ」


 実は、いなくなったと知らされているのはあの後輩だけではない。

 高校二年に進学した直後から、この六月までで、同じ中学に通っていた同級生達が次々と失踪しているのだ。


「だからこうして欠かさず銃の整備してんだ」

(オモチャ)はお前の趣味だし、整備は日課だって言ってたろ」


 藤高はボクの言及を適当に受け流し、綺麗になった部品を視界の端へと退けていく。

 しばらく眺めているついで、昨日のことをまた思い返した。


 近い。

 そう思った。夢の景色に近いと。

 真っ暗だっただけだろ、とか、別に天井は光ってなかっただろ、とか、独りでにツッコミながら、それでも、あの夢に近いと思った。

 身近に迫った死の感覚。生を感じさせない、閉塞された空間。

 あの場所はなぜだか、夢の景色によく似ていた。


「なんでもいいけどよォ。どうすんだ? まさかこのまま、放っとくのか?」


 銃を組み立て終わったのか、明後日の方向に照準を合わせて藤高がいう。


「それはない。誓ってないね。有り得ないよ」


 対するボクのスタンスは決まっていた。


「オッケー。そういうと思ったぜ」

「え、なに? 急に期待させるじゃん」

「常日頃から準備は怠らない。それが藤高家の家訓なんだよ」


 やはり持つべきものは友だ。コイツとは数年来の仲だけど、いつも本当に頼りになる。

 頭を働かせるのがボクの仕事なら、体を動かすのが藤高の仕事だ。

 ずっとそうやって来たし、まだまだ変えるつもりはない。ボク自身、運動するのは苦手だしね。


 部屋の隅に置いてあるボックスから幾つかのガジェットを取り出して、机の上に広げた。


「カメラと懐中電灯は必須だろ。証拠はいるしな……あとは護身用にスタンガンか警棒ってとこか……使い方分かる?」

「説明書読めば」

「あるかよ、んなもん」


 藤高は呆れ気味だ。


「これ手に入れるのだって苦労したんだぞ?」


 どんな経緯でここにあるのかぶつくさと話しながら、どうやらボクの不満がどこにあるのか気が付いたようだ。

 正にその通りだ。相手が何を持っているか分からないが、予測は出来るのだから。

「刃物相手じゃ心もとないって」

 よく『憶えて』いる。

 一瞬だけ目に映った山を、鮮明に思い出す。

 目立ったのは、首のない死体だ。何か鋭利なもので斬られたような、言ってしまえば創傷の目立つ死体達。どうやって一太刀の元に両断したかは想像の域を出ないけれど、ある程度刃渡りのある得物を持っている――と考えるのが妥当だ。

 どうやって入手したかは、完全に分からないが。


「いくら爺ちゃんがマタギやってるとは言えな。銃だって触らせてくれねぇし」


 数々の不安に対しても、藤高は変わらず楽観気味だ。彼も彼なりに重く受け止めていると思うが、どうしても、武力の差というのは致命的だった。


「いや、免許もないやつには触らせないだろ」

 腐ってもボク達は学生だ。少なくとも真面目だし、アウトローではない。法を破るなんて以ての外だし、外道に落ちるようなことはしない。


「何事も準備が全てだ。お前が言い出したことだろ?」


 同時にいい子ちゃんでは居られないことも確かだが。

「それはまぁ」

 当たり前のことだし、僕達がどれだけ真面目に取り合っても相手が所謂まともでなければなんの意味もないことだ。

 どうやら、藤高はボクよりずっと、事態を重く考えているらしい。


「だから慣れといた方がいいと思ったんだよ。いくら競技でやってるとは言え……」


 静かな家の中を移動する。決して大きくはない庭に出て、藤高がホルスターの具合を確かめた。

 腰から提げられたホルスター、そこに納められているのは競技用のハンドガン。


「そういえば、そっちの成績はどうなんだ?」


 ……競技として存在するのはライフル射撃で、僕達の年齢ではまだ、クレー射撃行えない。

 ハンドガンはただの趣味だと彼は言う。

「やっぱり実弾がなぁ。反動に慣れるには実践あるのみって感じ」

 だがボクは知っている。藤高にとって、これらも全て準備に過ぎないということを。

 中学二年から競技射撃を本格的に始め、僅か一年足らずでタイトルを総舐めした男――それがボクの隣に立つ、藤高 友也だ。


「悪いの?」

「いや、悪かぁない。納得はいってないけど」


 藤高は不服そうに口を尖らせた。

「なんで?」

「速度に精度が追い付かねぇんだ」

 なるほど、それで反動。


 ふぅと短く息を吐き切って、これまた小さく息を吸った。


「タイマー頼む」

「いいよ」

「今日は行くぜ」


 藤高が両掌を頭の上にあげる。

 ピリ――っと張り詰めた瞬間だ――タイマーに掛けた指を押し込む――


「……どうよ」

「ちょっと遅い」


 抜かれた銃がもう一度ホルスターに収められるまでのタイムを取った。

 ベストタイムは切れていないが、相当早いと思う。

 頼もしいやつだ。もし本物を使えたらどうなるんだろう。


「とはいえ、かなり様になってるよ。重心のズレはなかったし、強いて言うなら腕の角度を――」

「数ミリの指摘、後で聞くわ」


 ウンザリした様子でボクの有難い講釈を遮って、軒下に腰掛ける。


「まぁ、こんなもんだよ、今の俺は。刃物相手にゃ負けねぇ」

「勝算があるって顔してる。金庫破りでもするって?」

「爺ちゃんの寝てる間にな」


 ポケットの中を探った藤高の手には、一枚のメモが握られている。

 大量に書かれた数字の組み合わせと、それを訂正するように引かれた幾つかの線。


「番号はこないだ割った」

「これで武器の心配はなくなったな」

「そう言うこと」


 なるほど。ふむ。条件は揃っている。どうやら藤高もボクの考えを理解している。

 後は覚悟を確認するだけだ。

 こういう事は、早ければ早い方がいい。


「お互いを見捨てる覚悟はあるか?」

「もちろん」

「何より命を優先するか?」

「もちろん」

「勝算はあるかな?」

「高田次第だ、分かってんだろ?」


 決まりだ。


「もう一度行こう、穴の底へ。確かめてやる」

 この好奇心の昂りを鎮めに。

「ボクらの後輩が、今いったい何をしてるのか」


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