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AF―After Fantasy―  作者: 04号 専用機
Beyond belief
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仰る通りです

 呆れたように肩をすくめるのが見えた。

「手助けはしません」

「最初からそのつもりだ」

 連戦か、それも悪くない。


 柄に手を置く。

「ご指名ありがとうスサノオ。熱烈なラブコールだったよ」

「お前に会いたくてな。思わず走ってきたんだ」

「死んでれば良かったのに」

「そういうな。感動の再開だぞ?」

「感動ってほど、間が空いてないよ」

 おっしゃる通りです。

 知っている相手がミカエルしかいなかったのだ、仕方あるまい。それに、僕ももう一度会いたかった。…………何故かは分からないが。

「あぁー、でもちょっと泣きそうかも。報告したらまた、ゼウスにお説教喰らうし」

「黙っていればいい。あの男のように」

「不正はしたくないの、それにどこに隠れてたのか調べないとね」

「じゃあそろそろ」

「うん。覚悟はいい?」

「俺はできてる」

 倒して逃げる。僕も、ドクトルへの報告がまだだ。

 お互い仕事が溜まっているか、辛い身だ。

 なるだけ早く、手短に。

 僕としては、あの一撃がかわせれば充分だ。


「――加速」

 ミカエルが小さく呟いた。

 のを聞いた。

 動かなくなった右腕を押さえて。

「は……?」

 ミカエルは後ろだ。ユダに迫っている。

「言わんこっちゃない……!」

 どうやら、すれ違い様脇を切られた。

「私と一緒にお話しようよぉ!」

 すぐさま治す。治す、が……やはり思うように行かない。あの男や、ユダのような円滑な治療はまだ無理だ。

 こればかりは、経験を積まないことには。

「やはりこうなるのですか!」

「ねぇなんで逃げるの? あと属性盛りすぎでは? テンションが上がりますなぁ!」

「ボディランゲージはお断りです!」

 逃げの一手か、援護するしかなさそうだ。

 治癒は完了した。

「お前だけでも――」背後から声をかけ。「逃げろ!」

 ミカエルが振り返った瞬間、そこに面を叩き込む。

 盾で防御。すかさず横薙ぎが――

「……あ?」

「ふりだしに戻っといて」

 かわそうと思った次の瞬間、ミカエルはすでに振り抜いている。

 血がしとどに流れ出した。

「は?」

 この出血はまずい。

 すぐさま塞ぐ。まずは皮膚だ。それから体の内部を治していく。

 時間がかかるな。

 しかし、これはどういうことだ。以前戦った時は、相手の三手先までしっかりと見ることが出来たのに。

 今はそれすらできない。一秒後には斬られている。


 考えられるのは二つ。

 一つはサトリの不調。

 もう一つは、ミカエル自身がもっと素早くなったこと。


「ほら! ほら! ほらほらほらほら!」

 ユダを着々と追い詰めていく。やはり素手では部が悪い。盾を持っている上、その攻撃は、僕に対するそれより遥かに速い。

 肉体の強度が段違いだ。あれほど速く動かせば、関節か筋肉か、どちらか痛めるのが道理というもの。

 だと言うのに、治癒を施す気配がない。

「本気出さなきゃ後輩くん! スサノオパイセンにいいとこ見せたいっしょ?」

「別にそんなことは!」

 剣を弾いて距離を取った。

 瞬間、ミカエルが剣を引く。

 あの構え――

「左に飛べユダ!」

「言われずとも」

 ――剣を突き出した瞬間切っ先が消える。そう形容しても良いほどに速い突き。

 それを、ユダが避け切る前に五連発。

 右腕から出血か。力無く下げると、スーツが血で染まっていく。

 治癒を始めない。何をやっているんだ。

 ミカエルが剣を振り上げた。

 すかさず、僕は全身を強化する。


 前へ。

 黒剣が下ろされるより早く、僕の横薙ぎがミカエルを襲う。

 やはり、想像よりも速い。

 大きく弾かれたのは僕の方だった。

 この速度。

「……お前、どんな能力だ」

「残念。明かさないから武器になるんだよ」

 やはりこいつも能力持ちか。

 カマをかけてみて正解だった。

 神官は能力持ちと見ていい。

 速度の強化。それが能力と見て間違いない。

 次は防ぐ。相手が想定より速く動くというのなら、こちらもそれを踏まえた上で動くまでのこと。

 呼吸を見る。やはり――

「おぉ。もう攻略されちゃった」

「そう何度も同じ手はくわん」

 ――動き出しを見てからでは遅いようだ。

 そして受けるのは上手い手とは言えない。一瞬消えて見えるほどの速度だ、まともに受ければ手が痺れてしまう。

 攻略しやすい能力で助かった。

「ユダ」

「はいなんでしょう」

「後で迎えに来い」

 更に強化を。

 ミカエルの速度に追いつかねば。

 ただ循環を速めるだけではいけないのか。ならどうすればいい。

 脚だ。

 速度が欲しいならまずは脚。

 それから攻撃するなら腕も。

 だが集中させては爆ぜるだけ。

 なら、どうすれば?

 考えている暇はない。

「悪いんだけどさ、もう手加減は出来ないから」

「結構だ」初めからそうだと思っていたのに。

 今までの全てが通用しない。

 培ってきた技術の全てが。

 改めて感じる。僕の知っている世界の狭さを。

 ミカエルが連撃を浴びせる。

 どうかわしても数発は貰ってしまう。

 魔力がなければ一瞬で勝負が付いているな。さて。


 脚への流量を多くする。今はまだ深く考えずに行こう。

 これはちょっとした仕返しだ。


 強く踏み込み退る。

 ついで、ユダを脇に抱えた。

 開いた距離は五歩分か。

 上出来だ。

「鍵は持ってるか?」

「貴方が持っている分だけです」

「なら」仕方がない。「今渡しておく。落ち着いたら迎えに来い」

 ポケットから取り出して投げた。

 虚空に鍵が光る。

 ユダがそれを受け取るや否や。

「逃がさない!」

「逃げるんだよ!」

 ミカエルがその距離を踏み潰した。

 適当にユダを投げる。

 さっさと駆け出したらしい。その姿はもう見えない。

 薄情とは言わない。むしろ懸命な判断だ。

 何分くらい持つかな、僕は。

 そんなことをぼんやり考えながら、ミカエルの攻撃をしかと受けた。

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