第244話 光を携える者
森人族に類似した種族。
アルメリア・ハインディン・レイロード
メルキオール・セファルディア
彼女たちは約1万年ほど前に別の次元から、この精霊に満ちた世界(彼女たちは精霊世界と呼ぶ)にやってきた。
自らの過ちから、荒廃した自分たちの世界を捨て、新天地に未来を求めた者たち。
彼女たちは自分たちの事を光を携える者と呼んだ。
魔術に秀でたアールヴは自らの肉体を不老として永遠の時間を手に入れた。その過程で時空魔術という新たな領域を開拓。
その時間と空間を支配する時空魔術が、荒廃した世界を脱出する鍵となった。
『もとから少なかった仲間を効率のため、幾つものグループに分かれて安住の地を求めて旅立ちました。どれだけの世界を彷徨ったのかはわかりません。自らの肉体を保ったまま次元を超える魔術は、容易ではありませんでした。次元を超える魔術には、相応の時間と準備が必要になります。幸いにも私たちには時間が豊富にありましたので、大きな問題にはなりませんでしたが』
アールヴには生殖能力が無かった。
生物として誕生した頃にはあったはずだというが、種として繁栄し成熟し不老となった過程で失ってしまったらしい。
スピリットワールドにやってきたアールヴは5000人ほどいたらしいが、個人主義で全体という意識の薄いアールヴは年月を重ねるごとに世界中へ散り散りになっていった。
神の如き魔術を操るアールヴとはいっても、何かにつけて人手は必要だった。例えば午後の紅茶を入れるにも人の手がいる。裏庭の倒木を片づけるなら魔導兵に任せておけばいいが、使用人として扱うには難がある。
そこで作りだしたのが森人族の祖となるエルフだ。何か名前をつけるとすれば古代森人族と言ったところだろうか。
自分たちの細胞を元に作りだしたのだから、アールヴとエルフが似ているのも当然の事。
『私たちが精霊世界に最初に辿り着いた時、人族も海人族も存在していませんでした。知性のある種族は何一つ存在しておらず、世界を支配していたのは後に私たちが精霊と呼ぶようになった存在です』
精霊は濃縮された魔素から突然変異によって発生した。この世界特有の存在でアールヴたちの故郷でも見られなかった。
精霊の存在を観測してから、彼らは精霊を研究対象としてその性質を解明していった。彼らは時に別の次元から、自分たちの元には無い素材を呼び込もうとする性質がある。
自分たちが精霊世界に辿り着き研究を始めるようになってから、様々な知的種族が呼び込まれた。
アールヴはできる限り、その現象に干渉せず見守ることにした。精霊には自我がないとされているが、その活動に意味があるのか無いのか自分たちでは判別できない。
この世界の住人である彼らの行動に、よそ者である自分たちが積極的に干渉するべきではないという判断だ。
それは自らの力を過信して神のように振る舞い、自分たちの故郷を滅ぼしてしまった経験からくる結論だった。
世界の各地で徐々に知性ある種族が繁栄していった。そして異変が起こった。
動物でもなく、植物でもなく、一見すると無機物、岩石にしか見えないそれが各地で知性ある種族を襲い始めた。
最初は知性ある種族を、後に生物であれば種類に関係なく――
当初、固有名詞を持たなかったそれは、その活動の様子から混沌と称された。
『この世界の事象には原則関わらないとしておりましたが、アレを放置しておけば世界のそのものが滅び兼ねないと判断しました。その時点で私たちは、この世界で数千年の時を過ごしていたのです。既に第二の故郷と呼べるほどに重要な場所になっていました』
基本的に知性ある種族との接触を断っていたアールヴだったが、限定的に何人かのアールヴが知性ある種族と接触し、技術や知識を提供して協力関係を結んだ。
世界の各地で活動し続ける、混沌を駆逐するために。
『あれは、まだ世界に何体か存在するであろう生き残りの1つ。私の能力では完全に滅するには至らず、この場所に封じることになってしまいましたが』
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