REAL2
数時間後、目的地についたのか停車した。
柄沢
「お、着いたみたいだな」
出口付近に座っていた谷村から降り、最後に柄沢が降りた。ふと、前に目線を送る。
谷村
「…あぁ…」
そこには、大きく佇む立派な白城が立っていた。一同はその外観に目を奪われる。
天月
「さぁ、入るわよ」
谷村
「…っ、は、はい!」
見惚れていた谷村達を起こす様に言葉をかけた後、城内へと向かう。すると、三人の前に見覚えのある車が何台か停まっていた。
門崎
「これは…」
それは、生徒達が乗っていた警察車であった。どうやら先に到着して中にいる様だ。
谷村
「俺達も遅れらんねぇな」
早川
「んふ…そうね」
門崎
「おいお前達、もうちょっと緊張感を持ったらどうだ?」
谷村&早川
「何でだよ、いいだろ別に〜」「そうよ、門崎君もこういう時こそ力抜いてやるべきだわ」
天月
「いいえ、門崎君の言う通りよ」
谷村&早川
「…っ!」
天月
「ここから先は…」
何かを言いかけた天月は、首を左右に振って言葉を濁した。
天月
「いいえ、何でも無いわ。行きましょう」
谷村
「…っ」
天月が先頭を切り歩み出す。その後ろを三人が着いていった。中は広く、思ったよりも静かだ。赤と白で装飾されたその内装は、とてもでは無いが日本らしくない。大きく奥がある廊下を突き進み、螺旋状の階段にたどり着く。
天月
「…こっちよ」
天月が腰に手を回した。
カチャ…
金属類の音が鳴る。谷村は、すぐに何か分かった。天月に続き、柄沢も銃を取る。ここで、谷村がある違和感に気づいた。
谷村
(そう言えば、やけに静かだな…。天月先輩から説明を聞いた限りではもうちょっと争う音とか聞こえても良いのに)
更に、自分達よりも先に到着していた人守り達(生徒)も、数時間の違いと言えど一人として見当たらない。何かがおかしい…。一体ここで何があったのか、どんどんと恐怖心が増していく。
天月
「…っ」
階段を降りきった天月は、目の前にある鉄の扉にゆっくりと手を添える。
天月
「いい、これから作戦の説明をする」
谷村&早川&門崎
「…っ」
天月
「まず、この基地の構造だけど広さは縦横合わせて約30メートル、部屋の数は20個、どの部屋も特に気にしなくて良い。次に、敵の人数について…ごめんなさい、これに着いては予測になる。私が思うに、敵は30人程。最後に、今回この作戦において最重要目標が、この基地における「空洞プログラム空間」を見つける事」
谷村
「空洞プログラム空間…?」
柄沢
「簡単に言うと、白童一族のバッテリーみたいなものだ。そのバッテリーを破壊すれば、白童一族が所有する情報や日常に必要なあらゆる電力を断ち切る事ができる。それに、必要な情報だけでも抜けるかもしれない」
門崎
「なるほど…それはこちらとしてもかなり好都合ですね」
柄沢
「あぁ、だから決して失敗は許されない。その為、お前達に着いてきてもらった」
谷村
「え?他の奴らと一緒に行ってればもっと早く行けたんじゃ…」
柄沢
「それでは意味がない。出来るだけ体力を消耗せず、かつ安全に行く、そして先に争わせて人数を削る。残っている人数を敵に認知させ、その隙に俺達で空洞を見つける算段だ。他の者達には悪いが、今回は利用する形になってしまった」
谷村
「…」
なんとも言えない感情に悩む谷村。
天月
「とにかく、時間がない。いくわよ…準備は良い?」
天月の問いに、三人は首を縦に一回振る。
天月
「うん…」
ガチャ!
天月は、添えていた手を強く押し、扉を開いた。中は全体に渡り白く、科学的装飾がなされている。天月は、右手を首筋まで上げ、二本指を立てる。それを2回ほど前に振る、これは進めの合図だ。合図と共に進む一向。しかし次の瞬間!
バキュン!
谷村
「ひぃっ!」
谷村の方向に銃弾が飛んできた。
天月
「隠れて!」
五人は、左右に分かれ体を隠し壁に背を預ける。
谷村
(うぉ…ビビった〜…)
チャプ…
谷村
(お?あったかい……っ!!)
谷村が違和感のする方向に目をやる…そこには、SBUと表記された防弾チョッキを着用した兵士の死体があった。
谷村
「なんだこれ!!」
死体を見た谷村は驚き大きな声を出す。
門崎
「お前!声がでか……っ!!」
門崎も同様に、その死体に目をやる。そして、あらゆる知識を踏まえてきた頭脳から、この状況に絶望した。
門崎
「この死体…SBUの」
早川
「え、SBUって?」
柄沢
「SBU…海上自衛隊特別警備隊(SBU)日本で数少ない特殊部隊の一つだ」
谷村
「と、特殊部隊なのにこんなあっさりと!」
驚き腰を抜かす谷村とは違い、閉ざす事の出来ない目をやる門崎。
門崎
(嘘だろ…SBUがいとも簡単に…これで5日?…どうなってる)
撃たれ続ける一向、その時、天月は自らの体を乗り出して、銃を撃った。
バン!バン!
敵
「うぅ…」
弾は見事心臓に命中、たった二音で仕留めた。
天月
「いくわよ…」
谷村
「は、はい」
それから、天月達は基地内を走り回りなんとか空洞を見つけようと必死になる。
天月
(一体、何処にあるの)
谷村&早川
「…」
なんだか谷村と早川の様子がおかしい。二人とも表情が暗い。早川に関しては、瞳を潤わせている。
谷村
「…最悪だ」
谷村達がこうなっている原因…それは、通ってきた道にあった。
早川
(もう、帰りたい)
そこには、沢山の血に転がる死体達。中には、自分達と顔馴染みの生徒達の死体もあった。つい最近まで学校という名の施設で、楽しく話していた同級生が、今は息もせず貫かれた場所から血を垂れ流し倒れている。まだ未成年の二人には、あまりにも残酷な光景だ。数十分後、五人は開けた場所にたどり着いた。そこはドームの様な広さに、窓が二つ、目先には奥行きのある暗い空間があった。
天月
「…はぁぁ、つ、遂に見つけた…私達が、本部より先に見つけた!!」
柄沢
「や、やったなぁ」
二人は、目を見開き喜んだ。
門崎
「なら、ここがその空洞プログラム空間…ですか?」
天月
「そう!やったわぁ!!これで私達育成場の人守りは活躍できるって胸を張って言えるわぁ!」
柄沢
「あぁ、本当にやったなぁ…静波」
天月
「えぇ…」
二人は向き合い笑顔を交わしていた。天月と柄沢の過去を思うと、ここまで来るのにどれ程の努力を積んできたのかを考えさせられる。特殊部隊や警察よりも、人守りである自分達が活躍できたその喜びは、谷村達も共感できる。そんな幸せそうな天月達を見た三人は、並んで微笑んでいた。天月と柄沢は、三人を挟む形で話をし出した。
天月
「それじゃあ、本部に報告しましょう」
柄沢
「あぁ」
すると、柄沢はポケットから無線機を取り出し本部へと連絡を始めた。
谷村
「いや〜やりましたね!」
天月
「えぇ、沢山犠牲は出してしまったけれど…それでも、この結果はとても大きな物となったはず。相手は相当な打撃を受けるわよ」
早川
「良いですね、その響き」
門崎
「死んでいった仲間も、これで報われるんですかね」
谷村&早川
「…っ」
盛り上がっていた二人とは違い、門崎は真剣な顔で言葉を発した。
天月
「…だと良いなぁ…」
天月は、自分の過去を振り返った。それは、とても壮絶な物だ。立っている自分の辺り一面に、仲間の死体が転がっている。そして、仲間だけでなく…。
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天月が中学生の頃の話だ。
天月
「…お、お母さん…お父さん…お兄ちゃん」
天月の目の前には、腹を切り裂かれ内臓を取り出された家族の死体が転がっていた。内臓は天井にフックと共に吊るされていた。天月は、泣きながら倒れていた三人に保たれかかる。
天月
「生き返って…生き返ってよ、お母さん、お父さん、お兄ちゃん…生き返ってよ!!」
成長した天月
(私の家族を殺した人狩りを、私は絶対に許さない)
そして天月は、人守り育成場に入学した。過酷な状況下ではあったが、支えがいた。それは、仲間だ。
天月の友達
「静波〜!」「静波〜」
ニコニコと笑顔を振り撒き天月と接する友、しかし、気づいた時には…全員息をしていなかった。そんな絶望の中、自分に唯一寄り添ってくれたのが、紛れもなく柄沢だった。
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天月
(皆…私達、やったよ…)
柄沢
「はい、はい、お願いします…では。(プツッ←通話が切れた音)…ふぅ〜、ん?」
胸に手を当て喜んでいた天月を、柄沢は微笑んで見た。
柄沢
「直ぐに向かうらしい」
天月
「…っ、分かった」
天月達は、全員で顔を見合わせる。
天月
「みんな、お疲れ様」
谷村
「お疲れ様です!」
谷村は、笑顔で天月と柄沢に敬礼をした。そんな谷村を見て天月は満面の笑みを見せた。
天月
「んふふwこれで、任務は完了よ。後は応援を待つだけ」
谷村
「ハァァ//」
(笑った顔…めっちゃ可愛い!!!!!)
天月は、左手に拳を作りそれを胸に当て、嬉しそうに四人に向け報告し始めた。




