↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
23/26

空虚3

場面は移り白童一族の豪邸へ。


庭には一台の高級車が停まっていた。


シュ…(車の扉が開く音)


後部座席から気だるげに降りて来たのは、負・葊であった。


負・葊

「ついたついた〜。さぁ〜てと」


その後運転席からノイズも降りて来る。

大きな扉の前に立ち金色に装飾されたボタンを押す。


ポーン…♪


数秒後、扉が開きそこからメイド服を着たニコニコとしたお団子ヘアーの少女が現れた。


少女

「どちら様でしょうか」

負・葊

「は〜い」


負・葊は少女にゆっくりと手を振る。


ノイズ

「こちら、負・葊一族現当主であらせられます。本日は白童一族の当主、白童エヴァン様にご用事があるとお伝え願えますか?」

少女

「はーい、呼んでまいりますので少々お待ちくださーい」


この二人を相手にまったく動じない姿勢を見せる少女。


負・葊

「この子凄いね」

ノイズ

「ん、んん!」


咳払いをするノイズ。


少女は扉を閉め広く赤色のカーペットが敷かれた立派な廊下を歩く。


そして中央付近に構える扉に到着しノックをした。


コンコン…♪


少女

「エヴァン様失礼します」


ガチャ…とまだ声もかけらていない状態で勝手に扉を開ける少女。


少女の目の前には、カイとそして色白の少年がいた。そう…白童エヴァンとは、谷村の最大の仇である白童一族現当主の本名である。


白童

「ハァ…"鈴音(すずね)"入っていいと一言も言ってないが」


その少女の名は分かる範囲で鈴音と言うらしい。


鈴音

「あーすいません、エヘヘ」

カイ

「…」

白童

「それで、なんのようだ」

鈴音

「え〜と、なんでしたっけ」


鈴音の返答に沈黙が生まれた。

するとその後ろから黒白の燕尾服(えんびふく)を着た背の高い格式ある雰囲気を纏う白髪と白髭をはやした男が現れた。


???

「これは失礼いたしましたエヴァン様、私がお伺いしようと思いましたが鈴音が勝手に出てしまったようで」

エヴァン

「ジィ、頼むぞ」


その男をエヴァンは「ジィ」と呼んでいる。

察するに執事と呼ばれる者であろう。


ジィ

「申し訳ございませんエヴァン様」

鈴音

「およ」


ジィは鈴音の頭に手を乗せ自身と同タイミングで頭を下げさせる。


ジィ

「エヴァン様本題に戻りますがお客人がお見えです」

白童

「客人?誰だ」

ジィ

「はい、負・葊様にございます」

白童

「帰ってもらえ」

ジィ

「はい、そうお伝えするかと思い先んじてお引き取り願おうとしたのですが何やら重要な依頼があるとの事で、直接話をしたいと」

白童

「…っ」


白童はカイと顔を見合わす。


負・葊

「ふーふふーん♪」


ガチャ…(扉の開く音)


カイが扉を開ききり白童の少し前へ立つ。

これはいつ手を出されても対処できるよう警戒している証だ。だがこの時もカイの目線は下に向けられていた。


負・葊

「どもー」


負・葊は白童に手を広げ挨拶をする。

白童は顔色一つ変えない。


白童

「何のご用でしょうか」

負・葊

「ちょっと頼まれごとされてたの忘れててさ〜。

政府機関のお偉いさんの子供を殺して欲しいんだって」

白童

「それはどこのですか」

負・葊

「えーっと、なんだったかな〜。

あ〜!思い出した!財務省代表大久保さん家の子だって」

白童

「財務省?なぜですか」

負・葊

「しーらない、お金関係で揉めたんじゃなーい?あ、これ一応天心さんからの依頼だからよろしくね〜」


負・葊は言うだけ言って車に乗り込んだ。


負・葊

「じゃあバイバーイ、今度はプライベートで会おうね。あ!カイちゃんもまたねー」


負・葊は嵐のようにきて嵐のように去っていった。去る車を見つめ続ける白童。


白童

「カイ」

カイ

「はい…」

白童

「出る準備だ」

カイ

「承知いたしました」


白童は依頼を受ける為支度を始める。


白童家から去り行く中ノイズが負・葊に言葉を投げる。


ノイズ

「負・葊様」

負・葊

「うん?」

ノイズ

「今回の件、一人を片付ける為に浄命会や空洞プログラムを失った損害は大きいのでは?」

負・葊

「そうかもね〜。まぁでも良いんじゃない?

あの宗教団体も死ねて嬉しかっただろうしほら

雇代も浮いた事だし。結果オーライ?」

ノイズ

「一つお聞きしたいのですが…今回の騒動、全て計画通りなのですか?」

負・葊

「何言っちゃってんの?

考えてるわけないじゃん、だって俺…」


負・葊の声のトーンが少し低くなる。


負・葊

「物心とか持ってないし」

ノイズ

「…っ!?」


ノイズがバックミラーを見ると確実に負・葊と目が合っている。負・葊のその目は光が一切なくまるで深淵のように奥底のない暗闇が広がっているようだった。


ノイズ

「すみません、言葉が過ぎました」

負・葊

「なになに〜やめてよノイズちゃん。

俺別に怒ってないよ、てか怒れないし。

そんな感情ないから」


負・葊は車の窓外を眺める。

その間ノイズは、バックミラーをチラリと見つつ冷汗をかく。


ノイズ

(自由奔放からの気まぐれによる物なのか…はたまた全て計画通りなのか…私でも分からない。

ただどの道全て負・葊様の都合の良い方向へとことが進むのは事実。やはり一族の中で最も恐ろしい人は負・葊様だ)

負・葊

「あ、そーだ!ねーノイズちゃん」

ノイズ

「はい」

負・葊

「お腹空かない?」

ノイズ

「えぇ、お昼時ですから」

負・葊

「じゃあさ、なんか食べにいこーよ」

ノイズ

「何にしますか?」

負・葊

「何でもいーや」

ノイズ

「ハァ…承知いたしました。

ただ私が選んでも後から文句は言わないでくださいね」

負・葊

「はいはい分かった分かった」


車はそのままビル群が目立つ都心へと走っていった。



場面は移り朝、人守り本部内へ。


谷村、早川、門崎の3人は案内人に更衣室へ招かれ専用の戦闘服に着替えさせられていた。


谷村

「なんだこれ」


それは今まで来ていた物とは違い首元まで伸びたファスナー付の黒のトップスに黒のズボンに白色の線が入っているシンプルな服だった。


案内人

「それが前線で戦う関東陣営の制服ですよ」

谷村

「へぇ…でも私服の人もいるんですよね」

案内人

「彼らのような人は特別だと思ってください。

本来はそちらの格好かスーツが基本ですから」


更衣室を出ると早川と合流する。

早川は女性用の戦闘服を着用していた。

男性と違うのは、トップスがダウンでできている。


谷村

「あれちょっと違う」

早川

「みたいね」

案内人

「女性は男性より体温に敏感な方が多いので

ダウンが推奨されているのですよ」

早川

「そうなんだ」


しかし早川が着るとファッションとして見れてしまう。


谷村

「な、なんか早川似合うな」

早川

「え?ほんと?」

谷村

「おん、さまになってる」

早川

「へ〜褒めてくれるんだ。谷村も似合ってるよ」

谷村

「マジ?」

早川

「えぇ」

案内人

「それでは任務を受けにロビーへ向かいましょうか」

谷村

「あ!ちょっと待ってください!」

案内人

「はい?」

谷村

「実はお聞きしたいことがあって」

案内人

「はぁ?なんでしょう」


谷村が聞きたかったことそれは。


案内人

「こちらですよ、失礼のないようにお願い致します」

谷村

「はい、ありがとうございます」


そこは3階で庭が見渡せる大きく横長に広がる窓が設置されてあった。谷村達はその空間の一室の前にいた。


谷村

「ゴクリ…」

早川

「ここが…あの希望の光専用の部屋なのね」

谷村

「みたいだな」


コンコン♪


谷村は扉をノックする。


谷村

「失礼します」


扉を開け谷村が部屋へ目をやるとそこには希望の光が立っていた。


門崎

「…っ」


希望の光はただ一点を見つめている。

その何かに真っ先に気づいたのは門崎である。


門崎

(あれは…白石さんとの写真)


棚の上にいくつも立てかけられてある写真。

そこには不貞腐れながら希望の光と写真を撮っていたり笑顔でボードゲームを楽しんでいたり希望の光に無理やり抱きつかれて嫌がる白石がいたりなど様々な思い出が写り込んでいた。


谷村

「あ、あの…俺達その、无雲先輩のことで話が」

希望の光

「帰ってくれないか」

谷村

「…っ」


希望の光はこちらを向こうとしない。


希望の光

「私にだって一人になりたい時くらいあるんだよ」


口調は穏やかだがこれ以上言葉をかけられる空気ではない。


谷村

「分かりました、失礼します」


扉を閉める谷村。

案内人の元へ向かいエレベーターへと乗り込む。


谷村

「流石に…喰らってるよな」

門崎

「当たり前だろ…きっと俺なんかよりもずっとずっと…な」

案内人

「あのお二方はどこへ行っても一緒でしたからね。側から見るとまるで姉弟のように見えまして、この人守り本部でも有名なくらいですよ」

谷村

「数回しか見たことない俺でもそう思いましたよ」

案内人

「アハハwそれだけ絆が深いお二人方でしたから門崎君が言った通り心に負った傷は相当深いんじゃないですかね」

谷村

「ですよね…」


エレベーターが一階に到着した。


案内人

「さ、こちらです」


案内人に招かれ次なる任務を受けに向かった。



場面は移り物音が一切しない3階。


希望の光はまだじっと写真を見つめている。


希望の光

(頑張ったんだろうね…分かるよ。

今はただ静かにお眠り…後の事は全て私に任せて)


希望の光が手に取った写真を床に伏せる。


-----


雲行きが怪しい空の下…森林の中が映る。


ザッザッ…(草を踏む音)


金色の輝きが緑生い茂る世界に異色の存在感を放つ。


それは紛れもなく希望の光である。


希望の光は立ち止まり木の下に落ちていた銃を見つける。


それは紛れもなく早川の落としたサブマシンガンであった。


映るあの時の光景…希望の光がその場を歩くたび白石達が四人衆と戦っていた残像が現れては消える。


希望の光

(銃を落とされ分断された…その後あの入り口へと逃れた)


希望の光は空洞プログラム空間を通り外へと出た。そして出口から少し離れた崖際にたどり着く。


希望の光の目に映るのは、負・葊の第三の基地であろう場所。


希望の光

(あの子がこれを見逃すはずがない…)


白石と同じようにしゃがむ。

その後立ち上がり少し下がった後指を銃の形状を思わせる形へ変え目の前の白石の残像へと向ける。


バン!(想像上の銃声)


希望の光の指先から煙が現れる。


手をポケットにしまい再び歩き出す。

そこは崖際…白石の死体が何者かに放り投げられた。


その者は今希望の光の横で息を切らしている。

コートを捲りその何者かへ本物の銃を取り出し撃ち込む。


バン!


希望の光

「…」


崖下に移動した希望の光が実際に白石が倒れていた場所へと近づきしゃがんだ後そこへ手を添える。


するとそれと同時に雨が降って来た。


ザァ…(雨の音)


希望の光

(痛かったよね…怖かったよね)


希望の光がありもしない白石の死体を優しく起こし抱きかかえる。


希望の光

(可哀想にね…)


自分の胸の中で目に光をなくし頭から血を流す白石の顔を優しく撫で血を拭き瞳を閉じさせる。


ゴロゴロ…ビカーン!(雷の音)


雷が鳴り響き瞬時に光の爆発を起こす。

それはまるで希望の光の心が荒れている事を表現しているかのようだ。


希望の光は優しい表情で白石を見ている。


ゴロゴロ…ビカーン!


雷の光によってカウボーイハットで隠れた表情が一瞬だけ映る。


希望の光

「グゥゥィィ!!!」


それは左側は隠れて見えないがもう半分は理性が焼き切れたような目に歯を限界まで食いしばって見えた。


しかし光が消えた途端先程の優しい表情へと戻っていた。


-----


被っていたカウボーイハットを脱ぎ、伏せた写真の上へとそっと置いた。


希望の光

「ンフ…」



場面は移り谷村達へ。


受付嬢

「谷村様の続いての任務ですが負・葊一族第三基地の空洞プログラム空間の捜査をお願いいたします」

谷村

「はい」


依頼を受けた谷村達は、本部を出て車へ乗り込み任務先へと向かう。


3人の顔つきは以前とは違い、何かを乗り越えた者の顔つきだった。



        「空虚」 END

第8話が終了になります。

ここまで読んでくださった皆様ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。