第六話 荒ぶるサメ 思い返す
少し前…レキンがクマの吸血獣に会ったころ
(このクマ…見かけ倒しではねえな ソ連帰りか?だが…)
ザシュッ
クマの皮膚に深く切り込む
「血装甲している俺様の敵じゃあねえなぁ!」
おそらく相応に強いであろうクマをあっさりと倒し切る
(アイザックのおっさん、雑魚狩りを匂わせておきながらこのレベルの吸血獣がいることを隠してやがった…俺たちの力量を測ってんのか?舐めた真似するぜ…)
レキンは頭部に感覚を集中させる
サメにはロレンチーニ器官という微弱な電気を感じ取る器官がある
レキンはこれを使った簡易的な探知能力ができる。制度はコウモリの力を持つビタには及ばないが、ざっくりとしたことはわかる
そして、彼が探知を始めた瞬間
(!?でけえヘビの感覚だ 敵か?いやちげえな ボンクラどもの中に蛇の力を使う奴がいた)
(……?力が消えた まさか自分のキャパより上の技を使ったのか?ボンクラにしては度胸があるな だが)
そこまで把握して彼は動き出していた
と同時に叫び声が聞こえた
(倒しきれてねえな 蛇男の自爆攻撃でも倒せねえようなやつなら、コウモリ女の技はもっと効かねえ可能性がある ボンクラどもが自滅するのは勝手だが、あんな奴らでも死ねばこの国の損失だ)
(……弱いやつを助けるのは強い奴の当たり前の行動だ だが、キリがねえこともわかってる)
(本当に、どこまで繰り返せばいいんだか…)
レキンは2人の元に辿り着くまでに少し自分の過去を振り返っていた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レキンは小さな田舎の港町で生まれ育った
例年吸血獣の被害は大きくなかったが、ある年に大量発生した魚の吸血獣が漁民を苦しめた
彼は乱暴だが正義感に溢れていた。同時に少し無鉄砲でもあった。
だから魚を網にかけて棒で叩けば倒せるんじゃないかなどと悪知恵を思いついたのだ
「オラ!オラ!おかしいな これで退治できると思ったんだけどな」
吸血獣にはそれなりの仲間意識がある
そしてレキンの網は全てを網羅したわけではなかった
魚の吸血獣たちは網に囚われた同胞を助け出そうとレキンを襲った
「うわああああああ!」
身体中に飛びつかれ噛みつかれるレキン
(このままじゃ死ぬ…!それは嫌だ!)
その時、彼の中に眠っていた力を呼び起こした
「うおりゃ!」
魚たちは次々と細切れにされていく
「た、助かった…でもなんで…うわぁー!」
レキンは水面に映った自身の姿に驚愕した
そこにはサメのような装甲を纏った自分自身が映っていた
「これって…」
レキンが血装甲に覚醒した瞬間であった
そこから彼は町や周辺に現れる吸血獣を狩り続けた
しかし彼の行いは町を治める行政長や政治家からは褒められたものの、それ以外の大人は彼の親も含めて恐怖していた
あの荒くれ者がその牙をこちらに向けてきたらどうしようと
だからレキンは警察隊に入れる年齢になった時、真っ先に志願し町を出た
(町のことが嫌いだったわけじゃねえ…でも助けても助けても冷たい視線を向けられるあの感覚は最悪だった あの街から出れば、キリのない俺の人生も変わると思っていたが…)
レキンはそのことがあってから本質的に他人を信用できないし、したくもなかった
だからこそ荒々しい態度をとって他人を寄せ付けないようにしていたのだ
(見つけた…気分を切り替えねえとな!)
血装甲を纏う
「ずいぶんデケーネズミだな!」
声と共にネズミは真っ二つに裂かれた
「レキン!」
「よおボンクラども!ずいぶん手こずってたみたいじゃねえか」
「!そもそもあんたが勝手に行動しなきゃ…まあいいわ ありがと」
「ハッ 勘違いしてんじゃねえ 俺は俺のポイントを稼ぎにきただけだ で、残りの2人はどうした?」
「わかんないけど、それよりテイロスがやばいの 手伝えって言ったって手伝わないでしょうから、拠点までの吸血獣倒してきてくれない?」
「尻拭いかよ まあいいぜ 倒せば倒すだけ俺のポイントになるんだからな とっととそいつを隊長に診せるこったな」
ザパン!とレキンはまた地面に潜り吸血獣を探し始めた
「もしかしてあいつ…」
勘のいいビタは、レキンですらわかってないレキンの心理に気づき始めていた




