第四十一話 強くなったレキン
スピルが悩んでいる間も吸血怪人と化した父の猛攻は続く
その攻撃を凌ぎながらもスピルは悩み続けていた
(父さんに手をかける…そんなことが俺にできるのか?)
そんな最中、警戒区域に少年が迷い込んでいた
「なんでこんなところに少年が!?」
「まずいっす!」
テイロスとカルモが真っ先に気づき駆け寄る
だがそれより先にスピルの父が動いていた
「ガルルラァ!」
少年に襲いかかる父を見てスピルは青ざめた
同時に伸ばした剣がギリギリで父を食い止める
(このままだと父さんが人を殺してしまう!)
今までにない緊張がスピルを襲う
スピルを覚悟を決めた
一方その頃レキンは大暴れしていた
「ウラァ!いっちょ上がり!」
レキンは元々あったスピードに、強化された血装甲によるシンプルな殴りの強さを加えてかなり強くなった
さらにレキンができるようになったことはそれだけでない
「パージ!アタック!」
自身の体からパーツを分離することによって、半分自律稼働で敵を倒す小さなサメを使役することに成功した
(とにかくスピルに時間をやらねえと…あいつはまだ迷ってやがる)
レキンは意外にも、自分が暴れることよりもスピルを気遣うことを優先して戦っていた
というのも…
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レキンがスラニクに着いたばかりの頃
「前の首都防衛の時も思っていたが、お主は周りに対する気遣いが足らんな」
「気遣いだ?」
休憩中に呼び出されたレキンは意外な言葉をカラパッサから投げられ、虚をつかれた
「うむ 聞けばブラッドスコーピオンの所有者、同志スピルはこれまでのブラッドスコーピオン所有者とは違うかなり異質な戦い方をしているそうじゃないか
最初はそういう性格なのかと思っていたが、お主の戦い方を見て合点がいった
同志レキンよ、お主同志スピルにサポートばかりやらせているな?」
気迫のある問いかけに、レキンですら思わず縮こまる
「な、なんだよ…それが悪いのかよ」
「悪い!…とまでは言わんが、仲間の戦闘の幅を狭めるのであればそれは回り回って特定の戦略しか取れないという致命的な弱点になる
その弱点を突かれればこの国の防衛にダメージを与える結果もあり得る
主がサポートし、同志スピルが前衛になるような戦い方も学んでおいた方がよい
これはお主のためにもなるだろう」
(へっ…俺に合わせられねえやつのサポートなんかして何になるのかね)
レキンはカラパッサに言われたことに冷ややかな態度をとっていたが、同時にスピルは自分に合わせてついて来れる仲間であることにも気づいていた
(…ま、どうせできるまでやらされるんだろうしテキトーに合わせてやるか)
そんな低いモチベーションから始まったコンビネーション訓練であったが、思いの外レキンは楽しんでいた
「なんだよ!これ面白いじゃねえか!カルモ、ボベ!背中はまかせろ!」
レキン、カルモ、ボベの3人はほぼ同期入隊であるが、戦闘の歴でいえば吸血獣退治をしていたレキンが最も長い
元々の視野の広さとロレンチーニ器官を活かした索敵範囲で吸血怪人に扮したカラパッサ隊の先輩メンバーを次々に引き受けつつ、カルモとボベにうまく点数を稼がせる立ち回りをしていた
『隊長、レキン隊員思ったよりノリノリですね』
『最初に隊長の話を聞いてた時は結構ゲンナリした顔してましたけど』
特訓の様子を見ていた隊員たちが口々に発言する
「うむ うちで預かる前にあやつの入隊前の遍歴は調査していた
強さを他人のために使える人間は、守ろうとする意思がある
そういう意思がある者は後衛もこなせる
だがあやつの頭にその意識がなかったのは、あまりに出身の街で強く、仲間と共に戦う意識が弱かったのが影響しているのだろう
何年かに一度はあの手の若者が入ってくるからのう」
『さすが隊長 ノウハウがあったわけですね』
『新人部隊一の暴れん坊をうちで預かるって聞いた時はかなり驚きましたが、ここまでできることを見越してだったんですね』
「若い隊員は警察隊全員で面倒を見ていかないといかんからな…」
カラパッサ隊長はそう小さく呟いたあと、隊員たちの方を向き直して背中を叩いた
「お主らも参加してこんか!これからはもっと強い吸血獣や吸血怪人が現れるぞ!」
こうしてカラパッサ隊に鍛えられたレキンは、サポートもこなせるようにさらに強くなったのだった
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だが、警察隊員が強くなるということは対峙している吸血獣や吸血怪人も強くなるということである
レキンの包囲網を掻い潜り、スピルの方に向かう吸血獣の姿があった
「まずい!一体逃した!」
気づいた時点でレキンは警告を発する
すり抜けた蛇の吸血獣は、自壊し体内から吸血怪人を2体出現させた
「あんな芸当もできるのかよ!」
レキンが吸血怪人の方を向き、向かおうとしたその瞬間
ザシュ!
「レキンさん、こっちは俺に任せてください!」
カルモが綺麗に剣でダメージを与える
「やるじゃねえかカルモ!よし!そのまま頼んだぜ!」
もう一度向き直して吸血獣の群れの方に向かっていくレキン
前衛の戦い方ではあるが後ろにも気が回るようになったレキンは今までの比じゃない強さを持っている
そう感じながら、テイロスは蛇の吸血獣がスピルの方を目指してきたことに引っ掛かりを覚えていた
(もしかしたらこいつらの狙いはスピルなのか…?)
戦いはまだ終わる気配がない
続く
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