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第三十二話 蓄える力

「まずは奴の能力を整理しようか」

デーバの警察隊官舎へとついたフィダイルとスピル

警察隊員に本部への連絡を任せて能力の影響を直接受けた2人がフィードバックをまとめておこうという話になった

「奴の影の力 広い空間を作ったり弾丸を影に潜らせてデタラメに飛ばせたり、これだけでもかなり強いが分身を作る能力まであった」

「幅が広いですよね 異能持ちでもここまで多彩な技を持ってる人は初めてみました」

「動物系の異能じゃないし、ピンテアみたいに特別な異能なのかもね」

ピンテアの異能ヴァルサトールは水の操作とそれに関わる様々な事象を起こせる力がある このタイプの異能は解釈を広げればかなり応用を効かせた技を発明することができる

「あの血の量も1日で使えるとしたらすごいですよね」

「あれに関してはカラクリがありそうだけどね」

「カラクリですか?」

「多分、異能が日持ちするんだろう 作って置いておけば自由に使える」

「作り置きですか…確かにあの影の世界、かなり精巧にデーバの街並みがつくられていました」

「作り置き自体は知らなくても感のいい人間なら気づくことが多い 逆にあんたはアイザックの小僧に教わらなかったのかい?」

「俺たちが隊長のところに預けられた時は血装甲の維持で精一杯だったので…」

たはは…と申し訳なさそうにスピルが笑う

「そういやあんた覚醒してからあんまり時間経ってないんだったね ここ最近は色々立て続けに事件が起きてたから1年は過ぎたような感覚だったよ」

フィダイルは軽口をたたきつつ、ブラッドスコーピオンの覚醒から時間が経たないうちにこれほどの事件が起きていることに何らかの予兆を感じずにいられなかった

(ブラッドスコーピオンは時代の変革期に現れる…これからもっととんでもないことが起きてもおかしくないか…)

「まあともかく、こっちも作り置きをやるってのもアイデアの一つさね あたしはワニの数を増やすかね」

「そうか 敵にできるならこっちにもできるんですよね 俺も何かできることあるかな…」

スピルはノートを取り出してパラパラとめくりながら思案する

「毒なら小瓶に入れて持ち歩けるかな…」

--------------

影の世界

「あの野郎俺が丹精込めて作った影の街をボロボロにしやがって!」

積み重なったガレキの塔を見てアンブラが叫ぶ

その塔の裏から別の男がぬるっと現れる

「彼らの実力がわかりましたかなアンブラ殿」

「……あんたか サジェスター」

「おとなしく我々の軍門に降る気になったでしょう 強く知恵の効く集団には同じような集団でしか対抗できないのですよ」

「……」

「我々としても何としてもブラッドスコーピオンの異能は欲しい だからこそ殺さずに捕縛できるあなたの影の能力には期待している」

サジェスターは小瓶を投げてアンブラたちに渡した

「血を回復させる栄養剤です 是非飲んでウツボの彼と共に異能を回復させなさい 4日後に再び彼らを襲撃します」

そう言い残すとサジェスターは異能で影を登っていき地上へと脱した

「言うだけ言って帰りやがった…ギアニ、いつまでも落ち込んでないでお前これ飲んどけ」

体育座りでおとなしくべそをかいていたギアニと呼ばれた男は小瓶を受け取った

「ごめんよぉアンブラ…俺が弱いからあいつを抑えられなくて…しかも街も壊しちゃったし」

「お前が壊す分は織り込み済みだ それよりもこの忌々しい塔をどうにかしたいから早く回復させてアンジェラを起こしてくれ」

「わかったよ…」

蓋を開け一気に飲み干すと、全身から力が溢れるような感覚がギア二を襲った

「アンジェラ!出てきてくれ!」

そう叫ぶと地面が割れ巨大ウツボのアンジェラが現れた

アンジェラは塔に体当たりをしてバラバラにし、大口を開けて全部を飲み込んでいった

「良い子だアンジェラ そのまま地ならしまで頼む」

アンジェラは身を揺らし地面を平らにしていった

「こんなところか?アンブラ」

「助かったぜギアニ さて、街を作り直すついでに影自体を拡張しておくか…」

新しく影を創造し、ゆっくりと街並みが作られていく

「やっぱこの光景は何度見てもすげーな」

横で見ていたギアニとアンジェラも見事に見惚れていた

「今度こそこの檻で奴らを捕まえる あのニヤケヅラの鼻をあかしてやる」

アンブラは静かに燃えていた

続く

前々回の話で区切りがつくかもって言ってたのに話が続いてしまいました すみません

デーバ編がここまで続くことになるとは予想してませんでした

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