第二十七話 強き女
スピルがお使いをこなしている間、フィダイルは吸血怪人事件の調査と聞き込みをしていた
『フィダイルばあちゃんだー!』
『ばあちゃんお元気〜?』
「元気だよクソガキども あんたたちも元気そうだね」
フィダイルはデーバの孤児院で子どもたちの相手をしていた
この時代、ルーマニアにはチャウエスクの落とし子という人口拡大政策の歪みによって生まれた孤児が増えていた
中には悪質な環境で子どもを家畜のように扱う孤児院もある中、デーバの孤児院はフィダイルが目を光らせ隊長権限を行使することで比較的良質な環境を保っていた
「お久しぶりですフィダイル隊長」
一人の若い女性がフィダイルに声をかける
「ようクララ こっちの調子はどうだい?」
クララと呼ばれた女性はこの孤児院で子どもたちの面倒を見るシスターのような存在だった
「実は少しお話があって…」
少し暗い表情を見せるクララにフィダイルも思わず怪訝な表情になった
「話を聞こうか ガキどもはあっちの方で遊んでな」
『はーい!』
子どもたちを園庭の方に誘導し、二人は事務室に入って行った
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「吸血獣被害が増えてる?」
「はい 子どもたちにはまだ被害が及んでいないのですが、ここ最近は街でも怪我する人が多くなっていて…夜の酒屋なんかも吸血獣の鳴き声で客足が遠のいてるという話は聞きました 警察隊の人も対処してくれてはいるのですが間に合っておらず…」
「なるほどね…何か怪しい集団なんかを見かけたりはしてないかい?」
「私は直接見てはいないのですが、子どもたちの中にも何人か知らない怖い人を見たと言ってる子たちもいて…」
「ガキが外うろついてる時間でもお構いなしかい なかなかやばい奴らが居着いたのかもね こりゃとんだ里帰りになりそうだ」
「すみません 私が戦えればこんなことには…」
自分を責めるクララに対し、フィダイルは優しく頭を撫でる
「あんたは今までよく戦ったさ もちろん今もガキどもの世話をしてくれてるし
それだけで十分頑張ってるよ」
「フィダイル隊長…」
クララはかつて警察隊に所属した隊員であった
異能を持たないながらも、それなりの戦績を叩き出しフィダイルの元で働いていたが、ある日吸血獣の攻撃によって癒えない傷を負ってしまった
外傷と心の傷で復帰が難しくなっていたところを、フィダイルの手回しでこの孤児院でシスターをすることでなんとか働いていた
「あとは任せときな とりあえず吸血獣は退治しとくからさ」
フィダイルは立ち上がり孤児院を後にした
(吸血獣からでもしっぽを掴めりゃいいけどねぇ…)
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夜 日も沈み吸血獣が活発になってくる時間である
「それじゃああんたたちは比較的被害報告の少ない西の方を頼んだよ あたしは東の方を見て回る 基本的に手助けはできないから頑張りな」
地元の警察隊を招集し、本格的な吸血獣退治を敢行することにしたフィダイル
言葉は強いが、激励と信頼の意味も込められたその言葉に隊員たちも身が引き締まっていた
「さて、じゃあ始めるかね 『クロコディル・フィル・カル・デルモンチェス』」
フィダイルがそう唱えると、地面から鋼鉄の体を持ったワニの群れが現れはじめた
フィダイルの異能は鋼のワニの使役 単独でも群を作れる強力な異能である
異能持ちの戦いはこれまで見てきた通り基本的に一瞬で終わる
自身の血液を使う異能はそれを維持するだけでも強い負荷がかかる
ましてや、鋼のワニを血で再現するのは非常に厳しい 事実フィダイルは全盛期よりワニの数を1/3にまで減らした
ただそれでも、彼女は多くのワニを使役し、使役し続けることができる
その驚異的な異能と継戦能力の高さが彼女を未だ隊長に押し上げてる要因の一つである
「さあ、どんどん噛みついていきな」
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1時間後
『よし、この辺の敵は一掃したぞ』
『フィダイル隊長のおかげでようやく吸血獣の掃討ができたな』
『すみません、俺詳しくないんですけど、フィダイル隊長は一人で東側全部抑えて大丈夫なんですか?』
『フィダイル隊長の能力なら俺たちが心配するのもおこがましいくらいだよ まあでももう吸血獣も見当たらないし一度合流するか』
デーバの警察隊が東側にいるフィダイルに向かって歩き始めた
隊員たちもそれなりの消耗はしたが重症者は0で任務を終えかなり充足感に満たされていた
『あそこが合流地点だな フィダイル隊長!任務完了しまし…』
その時、影が隊員を飲み込んだ
続く




