第二十五話 列車強盗事件(未遂)
かつてのブラッドスコーピオン保有者の親族が住む街デーバに向かうスピルと、里帰りで同行したフィダイル隊長
乗車していた車内で吸血怪人に襲われるもなんとか退けた二人は車掌に連絡を取り車内に吸血獣や吸血怪人がいないか点検をしていた
「今の所それらしいやつは見つからないですね お客さんにも話を聞きましたが怪しい人もいないそうです」
「単独犯…だったのかね 吸血怪人の知的能力はまだどの程度なのかはっきりしていない 身を隠し息を潜められるほどだったら厄介だね…」
二人の会話に車掌が割って入ってくる
「あの…これは地元の警察隊の方にも相談中なのですが…実は最近車両強盗を狙う珍走団が現れていてかなり運行の妨げになっているんです」
「車両強盗ですか?」
「まだそんな集団がいるんだねぇ この辺の警察隊には異能持ちはいないけどそれなりに強いはずだが、まだ制圧の話まで行ってないのかい?」
「はい どうも連中神出鬼没でアジトも把握できてない状態なんです」
「面倒だね…」
再び沈黙する三人 考え込みながらスピルは吸血怪人の持ち物を確認する
(ラジオがある…もしこれを使って俺たちを襲う命令を実行させてたのなら…)
「車掌さん この列車に無線設備はありますか?」
「はい このあいだ都市部から降ろされてこっちにきた車体なので比較的新しい設備がありますが」
「では無線でこう送ってください ブラッドスコーピオンはここにある と」
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十分後
耳をつんざくような改造マフラーの排気の音が列車の窓越しにも伝わってくる
「オラオラ!車両強盗団“夜鷹の夢”のお出ましだ!とっとと金目のもんとブラッドスコーピオンをよこしな!」
車掌が話していた例の車両強盗の一味が現れた
「ここまで手筈通りだね あたしは乗員の警備だけでいいのかい?」
「はい フィダイルさんがいてくれて心強いです よろしくお願いします」
スピルはそう言って列車の屋根から身を乗り出し強盗団の方を見た
(数は10もいない…これなら即時制圧も可能だな)
「一気に決めるか… 血装甲!」
ブラッドスコーピオンの鎧を全身に纏うスピル
列車から高く飛び、刀を伸ばして強盗団のバイクに巻き付け近づきながら一気にクラッシュさせる
「な、なんだ!?何が起きた!?」
一瞬の出来事に困惑する強盗団
ほとんどはクラッシュの衝撃で気絶しているが2、3人は立ち上がろうとする
その立ち上がったメンバーに威力の高い非殺傷性ゴム弾を打ち込み瞬く間に気絶させた
「制圧完了 あとは動けないようにして列車と合流するか」
強盗団を丁寧に巻き込んだあと、地元の警察隊の車を借りて次の駅で停車していた列車に合流した
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乗客に前の方の車両に詰めてもらい、最後尾の車両を簡易的な取り調べ室にして、警察隊の強盗団に対する取り調べが始まった
「放せやオラァ!縄をほどきやがれ!」
「ほどくわけないだろ 聞きたいことは山ほどあるんだ話してもらうよ」
「ちっ…どうせ俺らが地下組織と繋がってるかどうかとか聞きたいんだろ?俺たちみたいなアウトサイダーにリスクとって関わってくる組織なんかねえよ」
「じゃあこの吸血怪人も無関係かい?」
そう言ってフィダイルはさっき倒した吸血怪人の死体を投げつけた
「!!お前らボベに手かけたのか!そこまでやることないだろ!」
リーダー格の男は死体を見てひどく憤る
「そいつが襲いかかってきたから始末したまでだよ というかどういうことだい?まるで知り合いみたいな言い方だけど」
「みたいも何もこいつは俺らの大事な仲間だ!ちょっと気が弱くて、何日か前から姿も消してたから俺たちも心配してたんだよ!」
リーダーの言葉にひっかかり、スピルが質問する
「待ってください 何日か前から…?彼は今回の計画に関わってないのですか?連絡が取れなくなったのは最近なんですか?」
「ああそうだよ こいつの家に行っても家族も何日か前から帰ってきてないっていうし」
「彼は吸血怪人になっていました」
「吸血怪人?今テレビで騒いでるやつか?あれって人間がなるものなのか?」
「それに関しちゃまだ国も何もわかっちゃいないよ しかしそうなるとまずいね…」
「ええ…警察隊ではあくまで吸血怪人は自然発生した吸血獣の一種として対応してきましたが、最近の行方不明者が怪人化してるとなると、人為的に引き起こされてる可能性が高い」
「スピル デーバについたら電話からすぐあんたの上司にこのこと伝えな アイザックの小僧なら正確に上に伝えるだろ」
「わかりました しかしそうなると彼の遺留品にラジオがあったのが気になります リーダーの方、今回の犯行は無線通信を聞いて行なったものではないのですか?」
「そうだよ 無線を傍受してブラッドスコーピオンだったか?なんか大事そうなもんを運んでるっていうから襲ったんだ まさか返り討ちに会うなんて思いもしなかったけどな」
「ありがとうございます 僕の推理はこうでした 彼のラジオになんらかの細工がしてあって、攻撃指令を飛ばして内部をかき乱しその隙に強盗をするという計画です でも一般人はともかく吸血怪人の攻撃力では乗客を殺傷してしまう可能性がたかい そうなると警察隊も異能持ちを送ってきて結果的に強盗団の首が締まる だから強盗団が地下組織と繋がってるか、立場が危うくなってでも襲う必要があるほど困窮していた 判断がつかなかったので、どっちであっても引っかかるようなフレーズ『ブラッドスコーピオン』を無線に入れてもらってもらいましたが、まさかどちらでもなかったとは…」
「まだわかんないよ こいつらが嘘ついてる可能性だってあるさね」
「ふん 疑いたければ勝手にしろ いくら調べようが拷問しようが徒労だろうがな」
「彼らへの取り調べは一旦地元の警察隊の方に任せましょう 僕たちは誰かが吸血怪人を送り込んだと仮定して、そっちを調べたほうがよさそうだ」
「そうさね 吸血怪人を人為的に作れるようなやつらなら、異能持ちもいるだろうしそうなるとあたしらの出番だね」
ここでフィダイルは今回の目的を思い出した
「そういえばあんたは話聞きにきてんだろ?街のことはあたしの方が詳しいし、あんたはそっちが終わってからにしなよ」
「いいんですか?すみません フィダイルさんにお任せしてしまうような形になってしまって」
「別に構わないよ 年寄りと地元住民はどしどし頼りな ちょうどもうすぐデーバにつくころだし」
列車はゆっくりと停車し、スピルは目的地のデーバに降り立つことになった
続く




