第二十四話 吸血怪人について
ビタは研究所にいた
チャウエスク首相によるスピルたち新人部隊の一時解散宣言を元に、5人はチームを割り振られ一時的にアイザック隊を離れていた
ビタは科学隊のもとで吸血怪人の死体から性質を分析、研究する仕事を割り振られた
科学隊は警察隊の装備を作ったり研究を進めている機関で、ピンテアが前にスピルに渡した剣も科学隊との共同開発である
「ビタさんに一度説明がてら復習をしてもらおうかな 吸血獣には大まかにわけて三つのパターンがある それぞれの特徴を軽く挙げるとすると?」
隊長のストリンタがビタに問う
「ええっと…動物に何らかの形で吸血獣の血が混じって吸血獣になるAパターン 血だけで構成された純血種と言われるBパターン 先ほど述べた2パターンのうちどちらかが非吸血獣と交配することで子孫が吸血獣の性質を持つCパターン…だったと思います」
「正解だ ではそのうち死体が残るのは?」
「Bパターンは倒した後塵にかえるからAかCのパターンです」
「その通り よく勉強しているね
…吸血怪人を吸血獣のパターンに当てはめて考えると今の所死体が残るパターンしか確認されていない 人という生き物の成熟期間を考えると、おそらく意図的に吸血獣の血を注入された人が吸血怪人になるという見立てが正しいだろう」
「それって…」
「ああ とてつもなく恐ろしいことが意図的に行われてる可能性がある 何らかの組織が人為的に吸血怪人を作り出してるのであれば、それは人民に対する脅威そのものだ」
【吸血怪人は人為的に作られた可能性がある】
その“可能性”にビタは恐怖した
一方その頃
西へ向かう鉄道にスピルは揺られていた
『かつてのブラッドスコーピオン保有者の親族がデーバにいる ぜひ会って話を聞いてくるといい』
チャウエスクにそう言われ、鉄の老女と言われたフィダイル隊長と共にデーバに向かっていた
「こんな老いぼれがついてきちゃって悪いね デーバはあたしの故郷だから久々に里帰りしたくてね」
「いえ、こちらこそフィダイル隊長に一緒に来てもらえて心強いです」
「そう言ってくれると助かるね」
フィダイルはタバコのジェスチャーをして火をつける 煙は窓から外気に放たれて霧散していった
「あんたは吸わないのかい?」
「はい 父も吸わなかったのであまり習慣がなくて」
「ふーん 親も吸わないってのは珍しいね タバコはこの国の産業だからどんどん吸って国を支えようってのがあたしらの世代の教えさね 今でもバカ真面目に守ってるのはあたしくらいのもんだけどね」
フィダイルが一息ついて続ける
「なんせあたし以外のバカ真面目に守ってたやつはとっくの昔に土の中だからね」
ニカッと豪快に笑うフィダイル
スピルは苦笑いすることしかできなかった
「真面目なのは悪いことじゃないけどね、早死にの原因になったりもする
あんたもなんでも背負い込もうとするんじゃないよ ただでさえブラッドスコーピオンは特別視されがちだからね 頼る時は誰でも頼りな もちろんあたしでもいいよ」
「ありがとうございます じゃあその時は遠慮なく頼らせていただきます」
「そうそう そのくらいの気持ちでいなきゃいざって時動けないからね……ん?アレって」
通路の方を凝視するフィダイルに釣られてスピルも顔を向ける
「どうしました?」
「伏せな」
そういうとフィダイルは銃を抜き容赦なく発砲した
バン!バン!と放たれた銃弾は客室通路に立っていた人影に命中した
「フィダイルさん!?」
スピルは思わず驚く
だが人影は倒れることなくこちらに向かってきた
「グルアアル!」
巨大な爪を出現させた人影こと吸血怪人はスピルたちに襲いかかった
しかし
『ザシュッ』
すでに抜刀体制に入っていたフィダイルによって胴を真っ二つにされた
(吸血怪人と気付いてからのアクションの速さがすごい…アイザック隊長もそうだけど、隊長たちの技量は見事としか言いようがない 特にフィダイル隊長は10年以上のベテランだもんな…)
「しかしこんな辺鄙なところにまで吸血怪人が出てるのかい こりゃ一回車両ごと調べたほうがいいね スピル、手伝いな」
「はい!」
こうしてデーバへ向かう途中車内の吸血怪人の大捜索が始まった
続く




