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第二十三話 裁判

警察隊隊舎の法廷室

通常は隊の内部で起きた事件や揉め事の仲裁を行う部屋に隊員が詰めかけていた

今回の議題は「国防省政務官セザールによる吸血獣及び吸血怪人の首都侵入扇動の罪及び隊員に対する間接的傷害罪」であった

本来議員であるセザールは軍事法廷ではなく裁判所で裁かれるべきはずだが、国防省所属であり実質上の警察隊指揮権を握っていることと、被害の範囲が主に警察隊にあることを理由に、特例で軍事裁判にかけられることになった

「こんな裁判は違法だ!間違っている!」

セザールは叫ぶ

『俺たちに無茶させといてなんだ!』

『そうだそうだ!こっちは死ぬとこだったんだぞ!』

傍聴席にいた警察隊からもヤジが飛ぶ

とてもまともな裁判とは呼べない有り様であったが、裁判長は意図的にそうしていた

(通常の手続きに則って考えればこの裁判に効力はない かと言ってお咎めなしで終われば警察隊内部にも党との関係にも亀裂が入る セザール氏も大いに反省すべきところはあるし、ちゃんと聞き入れてくれればいいんだがな…)

だがセザールから出てきた言葉は

「そもそも君たちが職務を遂行できなかったのが問題なんじゃないかね!?この間の警備の件も吸血怪人のこともだ!」

どこまでも他責的なものであった

(こりゃあダメかもなぁ…)

「そもそも、ブラッドスコーピオンがいるのにここ最近の体たらくはなんだね!わたしよりも隊長たちの責任を問うべきだろう!」

黙って聞いていたカプラもこの発言にはさすがに手をあげ、口を開く

「取り扱いが厳重な撒き餌の小瓶を持ち出して許可なく撒いたご自身よりも隊長格である我々に責任があるとおっしゃりたいのですか?」

「そうだとも!君たちがきちんと仕事をできていればこんなことには…」

「とてつもない責任転嫁と侮辱ですが取り消さなくて良いのですか?監督責任は文民のあなたにもあるはずですが」

カプラが鋭く睨む

「君たちこそ自分の無能を私に押し付けるんじゃない!むしろ防衛任務を用意した私に感謝してほしいくらいだね!」

あまりのセザールの態度に全員が困惑、というかドン引きしていた

(ここまでダメな人だったなんて…むしろよく出世できたな)

ヴルフォク総隊長も内心で愚痴る

もはや白けた空気が場を支配し始めたその時、傍聴席の方からセザールに飛びかかり、殴りかかる一つの影があった

「さっきから聞いてりゃてめえなんなんだその態度は!自分の不始末を他人に処理させといて無能だなんだってふざけてんじゃねえ!」

レキンがものすごい剣幕で怒鳴る

「ヒッ!」

殴られた上に怒鳴られて気圧され震え出すセザール

(バカレキン…!殴ったらこっちが悪くなるじゃない!)

ビタは様子を見ながら心の中で叫ぶ

しかし拳一発ではレキンの怒りは収まらない

「てめえの出世欲のせいで命の危機に遭った隊員や市民のことを考えやがれ!むしろ隊員が有能だったからなんとかなったんだろうが!」

もう一回殴ろうと拳を振りかざすレキン

思わず隊員たちも静止に動き出したが

「そこまでだ」

とても冷たく部屋中に響く声がした

(この声って…)

誰かが声の主に気づく

裁判長も恐れ慄きながらその名を口にする

「チャ、チャウエスク首相…!」

その場にいた警察隊もセザールも全員が身をすくめる

「セザールくん 君には年長者として組織の統率を期待していたのだがね…残念だよ

労働教化刑だ 連れて行きたまえ」

チャウエスクの護衛をしていた兵士が彼の両肩を掴み部屋から連れ出す

労働教化刑は党の役職を解かれ、2度と同じ身分に戻ることができない

出世に取り憑かれたセザールには最も重い罪である

「さて…次は文民を殴ったキミだな? たとえ相手が不適格者だったとしても、剣と銃を取り扱う警察隊が暴力を振るってはいけない その道理はわかるね?」

この間にそろりそろりとレキンに近づいていたスピルとテイロスとビタがレキンの頭を押さえながら必死に謝る

『申し訳ありませんでした!レキンには強く言い聞かせますのでどうかご容赦の程を!』

「いや、道理を説いただけだ 

 大事にするつもりはないよ 君たちは異能持ちだ 処罰するよりも異能を活かしてくれた方が国益に叶う」

ほっとする3人 しかしその後思いもしない言葉が続く

「ただそうだな…少しの間チームは解散させてもらう 君たちの個人技を高めてもらうためにもね」

『一時解散…!?』

「ああ 君たち5人の…おや?そういえばもう一人はどこだい?警備中かな」

「あれ、そういえばバルボラは…」

あたりを見渡すスピルたち4人にカプラが声をかける

「バルボラくんならそこで気絶していますよ」

そこにはチャウエスクのオーラで気絶して真っ白になっているバルボラがいた


セザールの言い訳が酷すぎる…

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