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第二十二話 謀略燃え尽くす

レキンはすでに地下から侵入してこようとした吸血怪人を6体は倒した

(この吸血怪人って連中は能力の強弱はあれど俺ら異能使いと同じ能力を持ってやがる…異能持ちでもなければ地面を潜りながら戦うことなんてできるはずもねぇ 問題は「警察隊で異能持ち」はそんなにいねえのに吸血怪人は100%異能持ちってことか…)

レキンが地面の中に潜り海のように自由に泳ぎながら戦えるのはひとえに彼の異能が成せる技である

地面を移動する吸血獣でもレキンほど自由に移動できるものはすくない

だからこそ地面の中での潜水戦闘はアドバンテージのはずだった

(環境適応がメインで攻撃的な能力としては発現しない…とかでも不利だな こっちの隊員はほとんど生身だ ビタに怪人の数を確認してもらうためにも一旦浮上してカラパッサのおっさんに指示を仰ぐか)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ふむ…環境適応の異能持ちの可能性か…早速対策を進言してみよう 報告ご苦労だった」

カラパッサは伝令役を送り情報は直ちに総隊長の元へと届けられた

伝令からの情報に総隊長は眉を顰める

「異能持ち…まずいな 各隊の負傷状況から見ても今回は何かイレギュラーな要因が働いているな」

「テロ組織が関わっているということですか?」

テイロスが発言する

「その可能性ももちろんあるが…おそらく撒き餌がされている」

「撒き餌!?あれは潜んでいる吸血獣を炙り出すためのものでは!?」

「ああ 防衛任務に使う代物ではない それに分量は極めて厳格に調整しなければいけないものだ この規模の吸血獣や吸血怪人を招いているとなると…」

(まさか…セザール政務官が?いくら功を焦っているからってやりすぎだ…!)

「仕方ない 全部隊に今から言うことをすぐに伝えてくれ」

ヴルフォク総隊長は集まっていた伝令役に命令を発出する

「全部隊撤退 今すぐ最終防衛ラインに戻れ」

「私が刀を抜く」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「全部隊撤退!?…失礼 了解しました バルボラさん!総隊長命令で撤退です!堅牢な迷路を作っていただいて申し訳ありませんが放棄して戻ってきてください!」

伝令を聞いたカプラが大声で呼びかける

バルボラが地面に付けた起伏は迷路のようになっていて、上から隊員たちが銃などの飛び道具で吸血獣を一掃していた

なぜこうなったかというと、最初は一本道を作ろうとしていたバルボラが、大きな音を出す吸血獣に驚きあちこちの地面を沈没・隆起させた結果まるで迷路のような形になっていたのだ

「ご、ごめんなさ〜い!出口がわかりませ〜ん!」

そんな状況なのでバルボラ自身も道に迷ってしまっていた

「…仕方ありませんね 何人かついてきてください バルボラさんを引き上げにいきますよ」

カプラたちは声の方に向かっていった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「全部隊撤退完了しました!」

「報告ありがとう 全員ガード状態で待機していてくれ」

総隊長が刀を抜き空気が変わった

「すべて叩き落とす ヴゥルトゥ・ヴァナトアレ」

刀から巨大な炎の鷹が現れ、首都の一角を覆った

鷹はゆっくりと羽ばたきながら向かってくる吸血獣や吸血怪人を全て焼き尽くしていった

「すげぇ…」

レキンも思わず呟く

美しくも恐ろしいほろぼしのための炎は焼き尽くして消えていった

「この技は街中で使うと対象を選べなくて危険だし、引火の可能性もあるから使いたくなかったが なんとか無事で済んだようだな」

異能を使い疲れた表情のヴルフォクがその場に座り込む

「あとは全部隊地下からくる吸血怪人に気をつけてくれ あの鷹でも地下までは燃やしきれない 後の指揮は…カプラくん、テイロスくん 補助を頼む」

テイロスは指揮の補助に指名されたことに少し驚いたが、カプラに続いて返答した

「了解」「了解です」

ゆっくりと身を起こしながら、ヴルフォクは考えていた

(アイザックくんがいない…おそらく部隊撤退を聞いて私の意図を察したか…ならそっちの対応は彼に任せるか)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ブカレストの中心地から警備している方を見ていたセザールは青ざめて腰を抜かしていた

「な、なんだあの大きな鳥は!あんな力を首都で使ったとバレては我らが国家の父になんて言われたものか…どうする!どうする!?」

セザールは大きく動揺し滝のような汗をかきながら、自身の保身のことに頭を捻らせていた

その時ドアが開く

「やはりここにいましたか セザール政務官」

「貴様は…アイザック!なぜ警察隊の隊長が警備もせずにこんなところにいるのかね!」

「あなたに一つの疑いがあるから…でしょうか」

ツカツカとセザールに近づくアイザック 引き出しを開け、錠剤の入った小瓶を取り出す

「やはりここにありましたか ピンテアさんの医務室からなくなっていたのでもしかしたらと思いましたが…彼女がいない隙に持ち出すとは…」

セザールを睨むアイザック

「誰が手引きしたんですか?ピンテアさんが長期で留守にしているとはいえあなた一人では持ち出せないはずだ」

「私には何のことだかさっぱり…」

「あくまでシラを切ると言うわけですか では、この件は軍事裁判にかけさせていただきます」

「なっ!?」

「当然でしょう 総隊長があの技を使う判断をするくらいみんな疲弊していた 死者が出なかったから良かったものを一歩間違えばあなたの出世のためなんかで貴重な隊員が死んでいたかもしれなかった」

「そ、そもそもわたしがやったという証拠はあるのかね!?」

アイザックは壁に向かって指を指す

「あそこに盗聴器を仕掛けてあります そもそも小瓶の錠剤の数を数えてもわかることではありますがね」

「ぐぬぬ…」

「ご同行を」

セザールは力無く俯いた

大きな炎の鷹を見た市民たちが騒ぐ街中とは対照的なほど、大臣室は静まり返っていた


続く

撒き餌が錠剤なのに分量があるのは、全体の総量が致命的にならないための措置です(今回のように一つの錠剤を完全に砕いてもギリギリ対応はできる)

通常は錠剤を任務ごとに割合を分けて割って、小さい方が空気に希釈して撒き餌になります

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