第二十一話 研鑽の結実
スピルたちのチームは、他のチームの活躍によって比較的楽な状態で戦えていた
それでも元々押し寄せた数が数であるため、疲労も重なりじわじわと戦局は追い込まれていた
『隊員負傷!後退します!』
あちこちでその声が響き防衛戦が始まった当初から5〜6人が減った
その分をカバーするようにスピルとフルジェルは異能を使って倒していたが、敵が減る気配がない
フルジェルの異能は、鹿の角を模した双剣と電撃のような力であり、電撃で膂力をあげて動きを加速させながら戦うスタイルをとっていた
瞬発的な動きは敵を一掃できるが、血の消費よりも肉体負担が重く、長持ちする戦闘スタイルではなかった
(このままじゃまずい…でもどうしたら)
「フルジェルさん!」
スピルがフルジェルに声をかける
「俺が敵を巻きつけて一箇所にまとめます!それを叩いてください!」
「……仕方ありませんね その作戦でいきましょう」
ブラッドスコーピオンをよく思ってないフルジェルにとって、保有者であるスピルから作戦を提案されたことに思うところがあったが、フルジェルは飲み込んで作戦に乗ることにした
「ロール!スプレッド!」
剣を媒介してブラッドスコーピオンを伸ばすスピル 動きの速い吸血獣の中には剣の軌道を避けるものもいたが、新技スプレッド(麻痺毒を撒き散らし食らった相手の動きを鈍らせる)によって巻き取る
「今です!」
「ルヴィトゥラ・カプール」
フルジェルの双剣が輝きを増し、腕をクロスさせた状態で巻きつけられた吸血獣に突っ込む
レールガンのようなスピードの突進であっという間に吸血獣を一掃していく
「す、すごい…」
ほとんどの吸血獣が一撃で倒され、残りを他の隊員が倒していく
(これで一息つけるかな…)
スピルが安心したのも束の間
「グッ!」
フルジェルが何かに弾き飛ばされたのを視界の隅にとらえた
「あれって…」
スピルはフルジェルの方に視線を向ける
そこには今話題になっている吸血怪人と思わしき存在がいた
「邪魔ヲスル者ニハ死ヲ…」
吸血怪人はカタコトの言葉を口にして倒れ込むフルジェルに手をかけようとする
その時
「ロールアンドワイヤー!」
スピルが剣を伸ばし地面に差し込み、再び縮めることでワイヤーのように使い吸血怪人とフルジェルの間に割り込んだ
ガキン!と音がして吸血怪人の爪はスピルに食い込むかのように見えたが
「割り込むならやっぱ部分装甲は必須だな…危なかった」
脇腹に部分装甲を差し込むことで攻撃を防いだ
「お返しだ!ブラッドストライク ジュモーテ!」
スピルは右腕を血装甲で強化して貫く攻撃を発動する
吸血怪人に見事にヒットし、倒すことができた
ブラッドストライクは本来鋏で相手を押さえて貫く技だが、相手が避けられない場合血装甲を節約して発動することで血の消費を抑えられる
(うまくいくかわからなかったけど、一か八か試してみてよかったな…)
スピルは何度も自身の血の量の不足と力不足で悔しい思いをしてきた
それはブラッドスコーピオンを保有する前から抱えてたものでもある
だからこそ、彼は研鑽とトレーニングを欠かさない
その努力が窮地の賭けを成功させたのである
「…そうだ!フルジェルさん大丈夫ですか!?」
少し放心した後、フルジェルの方を向き直すスピル
「……助かりました 感謝します スピル」
意外にも素直な感謝の言葉にスピルは少し力の抜ける感じがした
「残った隊員は集合してください 数が減った今、一度戦力の再確認をしましょう」
フルジェルの号令で隊員たちが集まり始める
今回はなんとか退けることができたが、また同じような物量で吸血獣が襲撃してきたら持たないかもしれない
隊員たちは皆焦っていた
今回の話は完成がかなりギリギリになってしまいました
私もスピルのようにもっと研鑽しないといけませんね(汗




