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L'amour pur -純愛-  作者: 鶯花
vérité -真実-
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52 犬も司祭をしかと見つめる

「本題から少しそれタが、ここからはクロードの質問に答えル。ヴィスとギネフェルディーナ様を誘拐したのはーー淫魔の王イディオファナだ」


「やはりか…」


金狼王は呟いた。クロードは問いかけを続ける。


「何故なのか教えて頂きたい」


「ギネフェルディーナ様に関してハ最初から狙ってイタ。ルカン、お前モ知ってるダロウ?」


「………」


ルカン・メールは納得した表情で頷いた。






+++






ここは君主宮モナルク・パレの中。竜族の君主宮モナルク・パレとは違い天井が高く見え、洗練、静謐という言葉が似合う。


(………)


行き先を誰にも告げることなく、今まで不在であった王が帰還したと聞いて、同族たちが王に群がっている…という。

そんな風の噂を耳にするだけで何も動かない。動かなくて、手を動かして雑用をこなす。こなすことが出来なければ、こんなことすらできないのかと嘲笑される。それが彼女の日課であった。普通であればそうであった。




「我らが王はギネフェルディーナ様をお連れしたらしい」


「まさか…契りを交わすつもりで?」




そんな噂をすれ違いざまに聞いたとき、彼女は眼を見開いた。




まさか…王がそのようなことをするとでもいうのか。あの方には心酔なさっている同族が何人もいるというのに…たとえお相手がギネフェルディーナ・シーニュ・ロワイヨム様だとて、それらを全て退けて結婚でもするというのだろうか。それともーー




「おまえ! グズグズしてないで手を動かしな!!」


「はい!」


嫌でも気になってしまう。いずれも詮索すべきではないことだというのに。もうあのお方と自分は接点などほとんどないというのに。自分ごときがなにを出来るというのか。このままでいる方が精神的には楽だった。


その度に彼の姿が浮かぶ。自分と同じ立場である彼は今も頑張っているのだろう。そんな彼と比べたら、私なぞーー吐き気が出るくらいのゴミであると、彼女は自分を嘲笑した。






料理を作るのは好きであった。以前から自分で作って食べていた…誰も作ってくれなかったから。

他人のための料理を作り終えたあと、清掃を始めるために城の中を歩いていく。


そんなときだった。




(…!?)




何かが、すれ違った。


「ちょ、ま、待って!」


彼女はすれ違ったその男のことを追いかけた。




「待ちなさい!」




一体どういうことか。分からない分からない分からない。何故あのようなものがいるのか。


(見失った…?)


淫魔族は容姿を殊更気にする族である。そのような族があのような存在を許すはずがなかった。一番許さないと思われるのは、王その方のはず。




「…何故お前がここにいる?」




聞き慣れた声が聞こえて振り向く。振り向いた先には君主(モナルク)の姿があった。

ふと気がつくと、そこは君主(モナルク)が殊更愛する中庭にたどり着いていた。城の最奥にある君主(モナルク)のプライベートスペースだ。もちろんここに入れるのは極々一部の者だけである。




「ここは貴様が居て良い場所ではないはずだ。早々に立ち去れ」


「………」


「何だ?」


「あ、あの…陛下」




なぜここにたどり着いたのか。

自分ごときが尋ねても良い返事が帰ることはない。それは痛いほど分かっているつもりなのに動揺してそこまで頭が回らなかった。取り乱すほどに彼女は衝撃を受けていた。




「………」


「あの者は、何ですか?」


「………」


「答えて下さい!」


「貴様がそれを問う権利はない」


「……っ!」


「消えろ」




罵声されて、若干ながら冷静さを取り戻した。

自分が問いかけた瞬間、王はーー嗤っていた。




反逆罪となるはずだった自分のことを見逃したのは自分が…王と個人的な繋がりがあるためだろう。きっと。そう思っても、あの王と似た容貌の男が気になって仕方がなかった。しかし、持ち場を離れたと上の者に知れたら折檻を食らうであろう。

取り敢えず、彼女は自分の持ち場に戻ることにした。






+++






「…それで」


ヴィスとギネフェルディーナ・シーニュ・ロワイヨムを攫ったのがイディオファナ・エロン・ロワイヨムという淫魔族の君主(モナルク)であり、彼が洗脳能力を持つということが分かった。

ヘルツバールの契約(コントラ)する幻妖(フェージョン)であり、竜族の君主モナルクであるアルゲベルトの娘であるプランナを始めとした竜族たち、また狼族。それ以外にも方々に被害が出ているらしく、イディオファナの洗脳能力に当てられてしまったものはイディオファナの操り人形になってしまうという。

それは君主モナルクでも例外ではない。現に金狼王グランドはイディオファナに操られていた。


「成る程…ということは、ここにいる皆は結託してイディオファナ様の策を破らなければならんと。そうしなければ神がギネフェルディーナ様から淫魔王に変わるということか…」


「そうダ」


「我々はギネフェルディーナ・シーニュ・ロワイヨム様を女神と崇めることで均衡を保ってきた。もしもイディオファナ様が神となった場合…真っ先に反感を買うのはグランド様のような獣の幻妖フェージョンであるはずーーどうですかな、グランド様?」


「……良く思わない部下がいるのは間違いないでしょう。しかし、今の話だとそういった感情もイディオファナ殿の洗脳によって潰される…ということでしょうか?」


「ああ、その通りだ。既に金狼王みたく、他の君主モナルクも思考を一部や完全に支配されていたりする可能性が否めない。今ならまだ…間に合う」


「………」


鞆絵にはリョクがソワソワしているのが伝わってきた。






「ん…?」


エフォールは突如かかってきた声に耳を傾けた。魔法(マジー)よるものだ。


「この声は…レジニアか?」


「レジニア…レジニア・ソワンか…? でかしたぞ、エフォール! すぐに出て良いぞ!!」


父親であるアルゲベルトは急かした。エフォール自身も先ほどの言葉に混乱していたのだが、父親の言葉により気を取り直した。なぜなら…ヴィスとギネフェルディーナ・シーニュ・ロワイヨムがどうなっているのか分かるかもしれないからだ。




「レジニア・ソワンは淫魔王イディオファナ・エロン・ロワイヨムの実娘です」




リジニスが鞆絵の疑問に答えた。


君主モナルク本人とその関係者については一通り教えましたね。それでも貴女に彼女のことを教えなかったのは…現在彼女が淫魔王から厭われていて…親子らしい交友がなかったためです。君主モナルクの実子だと何かしら重宝されることが多いのですが…彼女の場合、イディオファナ様の期待に応えられるような魔力シャルム魔法マジーを持っていなかったのです」


「それで…放逐されている。ロワンモンドだと…元王族といって差し支えのない立場かな」


リジニスに続いて、リョクが回答した。


「そ、それって…実の親子だっていうのに」


「淫魔族は特に実力主義だ。イディオファナ様は…その中でも特にな」


「イロンデルさんのいう通りだと、強い幻妖フェージョンの子供は必ずしも強い幻妖フェージョンになるとは限らないってーー」


「そうだ、トモエ。このことだ。だが強くなる確率は他の幻妖フェージョンよりも高い。だからこそ彼女は周囲から期待され続け…そしてそれに応えることができなかった」


なんて残酷なんだろうか。それとも…そう思ってしまうのは残酷なのだろうか。




「…俺からは何とも言えないよ。なあ、レジニア。ロワンモンドに来れたり…できないか? ボルトは近くにーーないか」




その後エフォールとレジニアとの会話に耳を傾ける一同。しかしレジニアの声はエフォールにしか聞こえず、皆んなに配慮してエフォールは口に出して応答していたが話の全容が見えなかった。


(言っとくが、レジニア・ソワンが弱いというわけじゃないぞ。あんな風に異界から思念の魔法マジーを使って会話できるなんて、そこそこ強い幻妖フェージョンでなければ無理だ)


(じゃあ…)


(それだけ、イディオファナ様や周囲の期待が強すぎたんだろう。そのせいで彼女は重圧に押しつぶされて本来の力が出せずにいる)


それは、何とも悲しいことではないかと…鞆絵はつくづく感じていた。

出来ないのであれば、淘汰される。これがあのギネフェルディーナ・シーニュ・ロワイヨムが統べる世界の常識、現実なのだろうか。

だとすれば、こちらの…幻妖フェージョンからはロワンモンドと呼ばれるこの世界の方が優しいのではないのだろうか。よく分からなかった。





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