97 流石にダサかった!
お風呂での触り合いっこを終え、二人はお風呂から上がって百合の部屋に向かった。
ちなみにあの後特にそういう展開になったりもせず、ただ顔や鎖骨のあたりを軽く触り合った程度で終わった。やはり葵は純粋な子のようだ。あの脳内ピンク女の心花とは違って。
身構えていた自分が馬鹿みたいだったが、それが杞憂に終わったのであればそれで良い。それよりも今は彼女の服装についてツッコミを入れたいところだ。
「…あのさ、他に服なかったの…?」
「??何か問題ありましたか??」
「いやそういうわけじゃないんだけど…なんでそんなダサい服着てるの…??」
彼女は着替えを持ってきているはずなのに、なぜか百合の服を着たいと言い始めた。まあ断る理由も特にないので適当に選んでもらったんだけど、なぜか百合の趣味であるホラー映画のTシャツを着ている。
百合の感覚からすればそれは格好良い服なのだが、それを葵が着るとなると話は別だ。美少女が着ることによってTシャツのダサさがより浮き彫りになっていて、顔面と身体の温度差がとんでもないことになっている。
しかしそれはあくまで百合の感覚に過ぎなくて、彼女からすれば全く違う感想らしい。
「ダサいですかね?私は全然格好良いと思いますけど」
「いや確かに格好良いとは思うけどね?好きで買ったわけだし…。でも葵が着たらなんか…申し訳なくなってくる」
「どういうことですか…?」
自分でも言語化が難しいが、とにかくこれを葵が着るのは良くない気がする。こんなに可愛く生まれたんだからもっと可愛い服着せないと。
そんな母親みたいな感情に駆られた百合は、タンスを漁りながら葵に服の提案をし始める。
「もっと可愛い服着たら?ってこと。ほら、これとか似合いそうじゃない?」
「私には百合さんみたいに可愛い人が着る服は似合わないですよ」
「かわっ…。もぉ、揶揄わないでよ」
そんなことを言いつつも胸がドキドキしたのは内緒。
「ふふ、揶揄ってなんかないですよ?私は今率直に思ったことを話しただけです」
「それが揶揄ってるんだよぉ…」
無自覚が一番怖いが、この子は自覚ありそうだからタチが悪い。結局このままの調子だと葵のペースのままだし、こちらもそらそろ威厳というものを示さないと。
というわけで一旦気持ちを切り替え、葵に格好良い姿を見せてあげることにする。
「全く、葵ももう良い歳なんだから、女心をちゃんと理解しないといけないよ?」
「私も女心の持ち主なのですが」
「女の子は難しいんだからね?扱いには気をつけないと怒っちゃうかもよ?」
「百合さんはそんなことする人じゃありませんけどね」
「………」
毎回的確なのはなんで。確かに葵相手に怒ったりする未来なんて見えないけど。そういうことが言いたいんじゃないんだよなぁ…。
「とにかく!!私のこと揶揄うの禁止!!守れない人とは付き合えません!!」
「!!そうきましたか…」
こっちにだって手段はいくらでもある。あくまで選ばれる立場だということを忘れないでよね!
「わかりました。百合さんがそう言うのであれば従います」
「わかってくれたなら良いんだよ。じゃあ早くこれに着替えよっか」
「それは構いませんけど…。着替えを見たりしないですよね?」
「そんなことしないよ!?私のこと何だと思ってるの!?」
「ふふ、冗談です♪」
「もぉ…!!」
やはり揶揄われてしまう。恐らくそれが百合の運命なんだろう。
まあ楽しいから別に嫌ではない。ただ恥ずかしがってる姿を何度も見られるのは流石に堪える。いつか絶対に立場逆転させてめちゃくちゃ照れた顔を拝んでやるんだから…!!
そんな誓いを胸に、二人の長い夜は幕を開けた。




