95 つい見てしまった!
なぜか恋人候補の葵と一緒にお風呂に入ることになってしまい、百合は心臓をバクバク跳ねさせながら浴室の扉を開いた。
「「………」」
しかしお互いに何を話したら良いかわからなくて、少しの間沈黙が流れてしまう。
流石にこのまま黙ったまま何もしないのはいたたまれないため、とりあえず身体を洗うことにした。しかしそのためにはタオルを脱ぐ必要があって、どうしても彼女の視線が気になってしまう。
「あの…今から身体洗うから…」
「は、はいっ。えと、私もそうしたいんですけど、どうしましょう…?」
彼女も裸を見られるのは流石に恥ずかしいだろうし、ここは互いにうまく死角になるような感じで洗うのが正解だろう。
「じゃあ背中合わせにしよっか。そしたらお互い見えないはずだから」
「そうですね…!それが良いと思います…!」
頬が少し赤くなっている葵は、サッと後ろを向いた。そしてタオルに手をかけて脱ごうとし始めたが、そこで一度こちらをチラッと見て様子を窺ってきた。
「あの…見ないでくださいね…?」
「うん…!もちろん見ないよ…!」
もちろん見るつもりはない。流石にそんなことしたら不機嫌になるだろうし、リスクを冒してまで見たいと思うほど欲望に飢えていない。
わざわざ修羅場に足を踏み入れる理由もないため、百合は何も考えずいつも通りに振る舞う。
「あのさ、今日はどうしてウチでデートしようって思ったの?」
気を紛らわすために世間話をしつつ、タオルを脱いで身体にお湯をかける。
しかし数秒経っても彼女からの返答はなく、百合の頭には疑問符が浮かんでくる。
「葵…??」
返事が無い。一体何をしているんだろう?
気になって仕方ないから目の前の鏡で後ろを見てみる。するとそこにはチラチラとコチラを見ている美女の姿が。
「ちょ__!!??何こっち見てんの!!??」
「ふぁっ__!!ご、ごめんなさい__!!」
視線に気付き、咄嗟にタオルと手で身体を隠した。
「約束が違うじゃんっ!!」
「本当にごめんなさい…!!百合さんの身体が美しすぎてつい見ちゃいました…」
「な、なにそれ…!」
そんなこと言われても全然嬉しいんだからね!
でも恥ずかしい思いをしたのは事実だから許しはしないけどね。
「もぉ…まさか葵がこんなエッチな子だなんて…」
「ち、違いますからね…!これはたまたま横目に入ってしまっただけで…」
「その割にはしっかり見てた気がするけど?」
「そ、れは…」
言葉に詰まり、そのまま数秒間何も言わなくなった。
そしてその間にやり返す意味でコッソリ葵の身体を見てやった。そして勿論、後悔した。
(いやそのスタイルで他人を褒めるのは最早嫌味でしょ…)
まさに"美"という言葉が似合う美しい後ろ姿。
普段見えないうなじのラインや、全体的に細い背中。もう少し下に行ってみると、腰とは真逆に大きく広がる丸いお尻が。それらの全てが彼女の曲線美をを作り出していて、百合もつい彼女の後ろ姿に見入ってしまう。
「あの…百合さんからも視線を感じる気がするんですけど…?」
視線を顔に戻してみると、顔を赤くしながらジト目を向けてきていた。
流石に焦って一瞬で目線を逸らすが、おそらくもう手遅れだ。
「え゛!!?気のせいじゃない…?」
「そうですかね?お尻に視線を感じたんですが」
「いやいや、見てない見てない」
「そうなんですか?それはそれで悲しいんですが…」
わざとやってるでしょそれ。そんなこと言われたら肯定するしかなくなるじゃん。
「何それ…。まあ…見てないはちょっと嘘かもね…?」
「…百合さんのえっち」
「それずるいってもぉ〜!!」
彼女は拗ねたようにそっぽ向いた。
そして結局最悪の展開になってしまって、百合は身体を洗いながらここからの軌道修正について必死に考えるのであった。




