94 褒められてしまった!
「じゃ、ごゆっくり〜♪」
そろそろ良い時間だしお風呂に入ることになったわけだが、なぜか葵と一緒に脱衣所に放り込まれてしまった。
流石に想定外の事態すぎて困惑してしまうが、それは彼女も同じでポカンとした目でこちらのことを見てきている。
「あ、あの…どうする…?」
勢いで連れてこられただけだから二人の間では一緒に入る話にはなってないし、別に今から片方が部屋に逃げることだってできる。だからとりあえず彼女の意思確認をするべく質問を投げてみて様子を窺ってみたのだが、思いの外彼女の反応は良好だった。
「別に私は…このまま入ってもいいですけど…」
顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにしている。
しかしそんな可愛い仕草にキュンと来てしまった百合は、理性を失って彼女の言葉に乗り始めた。
「じゃあ…入ろっか…?」
「は、はい…」
あっさり一緒に入ることが決まり、二人は早速服を脱ぎ始める。もちろん背中を向けて見ないようにはするが、どうしても服の音が耳に入ってきて邪なことを考えてしまう。
(めっちゃ緊張するんだけど…。私今から超美人とお風呂に入るの…!?そんなのマジで欲望を抑えられる自信がない…!)
葵は同性でも見惚れてしまうぐらいの美人だ。服の上からでもわかるぐらいスタイルがいいし、きっと生で見た時の迫力は相当なものだろう。
(いやでも流石にタオル巻いてたら見えないから平気だよね…?てかそもそも私の裸とか見られたりしないよね…??)
最近ダイエットに取り組んではいるものの、そこまで痩せたというわけではない。まあそんなに駄肉があるわけでもないけど、恋人候補の前でぐらいは良いように見られたいものだ。
まあそもそも裸を見られるのは恥ずかしいし、ここは一旦タオルを使って隠すことにしよう。
「あの、脱いだ服…ここに置いておいてもいいですか…?」
「あ、うん…。大丈夫だけど…」
声をかけられて彼女の方を向いた。
予想通り、彼女はタオルを巻いていた。
(よかったぁ…。心花みたいな展開にならなくて…)
葵もたまに暴走することがあるからもしかしたらと考えていたが、どうやら彼女にその勇気は無かったらしい。
しかし葵の美人たる所以の白い柔肌がいつも以上に露出されていて、自然と百合の乙女心を挑発している。
「……」
「あの…そんなに見られると恥ずかしいです…」
「あ、ごめん。肌が綺麗すぎてつい。何したらそんなに白くなるの?」
「別にこれといったことは何も。お風呂上がりに保湿と、外に出る前に日焼け止めぐらいでしょうか?」
「ウソでしょ…!?それだけでこんな美肌になるの…!?これが遺伝の力か…ッ!!」
気を紛らわすために適当な演技をしてみる。しかしやはり彼女の身体に目が入ってしまい、あまりの美しさに見惚れてしまう。
「…ちなみにそのモデル体型の秘訣は?」
「ふぇ__!?そ、それは…」
流石に身体をまじまじ見られながら答えるのは恥ずかしいのか、顔を赤くしながらモジモジし始めた。しかしそれも無理はない。だって百合は葵の身体をそういう目で見てるから。いくら同性でも恥ずかしいだろう。
「内緒です…っ」
好きな人に体型のことを話すのは流石にハードルが高いらしい。
でもいつか聞き出してその体型になってやるから覚悟しておいてよね!!
果たして何年後になることやら。期待せず待つことにしよう。
というかそんなことはどうでも良くて、早くお風呂に入らないと。流石にずっと下着のままは恥ずかしいから。
「というか、百合さんも十分スタイル良いですよね」
「ん!!??」
下着姿をジーッと眺めながら感想を述べてくる。流石に恥ずかしくて手で隠そうとするが、全身を隠すにはあまりに不十分で。
「胸もお尻も大きくて、でもお腹はしっかり細くて。百合さんは他の女の子がどれだけ努力しても手に入れられないものをお持ちだと思いますよ?」
「い、いや…それは言いすぎでしょ…」
自分的には胸とお尻が大きいのはそこまで良いと思ったことがないんだけど。すぐ下着キツくなって買い替えないといけなくなるし。あとお腹が細いは無理あると思う。自分でもこれは危機感を持った方がいいってぐらいには駄肉があると思う。
でもそれはあくまで百合の価値観でしかなくて、葵にとっては魅力でしかないらしい。
「言いすぎじゃありませんよ。実際菫さんも羨ましがってましたし」
「え、まじ??」
「マジです」
いや流石にそんなのあり得ない。あの長身超モデル体型の菫が他人の体型を羨ましがるわけがない。
これはきっと葵が私を元気付けるためについた嘘なんだ。優しくしてくれてありがとう。でも大丈夫。努力していつか二人みたいにスラッとした体型になってやるから!
「だから百合さんはそのままでいてください。それだけで十分魅力的ですから」
「そう…??まあ、考えておくよ…」
「はいっ」
良い感じに丸め込まれた気がするけど、悪い気はしないから流されておく。
でも百合は未だに下着姿のままで、流石にそろそろ顔が熱すぎてフラフラしてきたので早く浴室に行ってほしいところだ。
「それと、言い忘れていたことがありました」
「なに…?」
「(私にも、触らせてくださいね…?♡)」
「!!??」
彼女の悪魔の笑みは、百合の目の前で。




