92 考えすぎてしまった!
その後も葵とのお家デートを思い切り満喫した。百合が好きなゲームを一緒にしたりホラー映画を見たりなど、この家でしか出来ないことをたくさんしていった。
「百合さんのばかぁ…!」
そんな一ミリも怖くない怒りの声が聞こえてくることもあったが、それでも二人はこの限られた時間で幸せというものを実感していた。
しかし楽しい時間はあっという間に過ぎ去るもので、気づけばもう日が落ち始める時間になっていた。流石に葵の家族も心配するだろうさ、そろそろ家に帰そうと声をかけたのだが…
「え??帰る??」
「そ。もうすぐ暗くなりそうだしね」
「嫌ですけど」
「???」
一瞬で拒否されてしまった。
でもこちらにはこちらの言い分があるため、それをしっかりとぶつけておくことにする。
「いやだから遅くなったらご家族が心配するでしょ?完全に暗くなる前に帰っておいた方が良いって」
「別にそれは連絡すれば済む話なので」
「…でも葵に夜道を歩かせるのは心配だからさ…」
「!!」
「私だって不安になることはあるんだよ…?」
葵は百合のことが大好きだ。
そんな大好きな相手からこんなことを言われると流石に黙っていられなくたるだろう?まあ結構わざとらしい演技だけど。
でも実際に思っていることを話しただけだからこの気持ちが伝われば何でも良い。と思っての発言だったのだが、それは誤った形で彼女に伝わっていて。
「…わかりました。百合さんがそこまで言うなら仕方ありませんね」
「わかってくれたか!」
「はい。百合さんに不安な思いをさせるわけにはいきませんので、今夜はお世話になろうと思います」
「うん!…ん…???」
満面の笑みで騙されそうになったけど、よく考えてみればこれ泊まろうとしてない?
流石の百合でもそれに気づき、本人にしっかりと問い詰めた。
「あのさ…もしかしてだけど、泊まろうとしてる??」
「はい!♪」
「何で…??」
「百合さんを心配させるわけにはいきませんので」
「今すぐ帰れば問題ないよね?」
「それは無理です」
「えぇ…」
葵はたまに変なところで強情になる。それがちょうどこのタイミングで出てきてしまって、百合もかなり困ってしまっている。
「でも明日学校だよ…?準備とか何も出来てないよね?」
「あ、それなら大丈夫です。いつでもお泊まりできるように支度は済ませてあるので」
「…もしかして最初からそのつもりだった?」
「さぁ。どうでしょう?♪」
「………」
やけに荷物が多いと思ったら。普通にバッグから学校用の鞄が出てきたし。絶対最初から泊まるつもりできてたでしょ。
最初からそうしたいと言ってくれたらこちらにもやりようはあったというのに、どうして今になってから告げてくるんだ。もう少し泊める側の気持ちにもなってほしいものだ。
「はぁ…もうなんかどうでも良くなってきた…」
「泊まってもいいですか?♪」
「それはお母さんたちに訊いてみないとわからないけど」
「百合さんはどう思ってるんですか?」
「それは…」
相変わらず鋭い質問を投げてくる。どうせ拒否されることがないからってやりすぎじゃないかな?いや別に良いんだけど。でも毎回ドキドキさせられるこっちの身にもなってほしいものだ。
「まあ、良いんじゃない…?私も友達とお泊まりは憧れあったし」
「やったっ。あ、でも勘違いしないでくださいね?私は友達としてではなく恋人としてお泊まりするつもりですから」
「えぇ…」
わざわざ訂正するのはやめてほしい。マジでそういう意味にしか聞こえないから。
(もしかして今晩そういうことするつもりなの?いや流石に展開早すぎない!?一応まだ正式にお付き合いしてないんだけど!?)
葵はたまに暴走するから、もし今夜暴走されたらマジでそうなってもおかしくない。
貧弱な百合に葵を止める術は無いし、彼女がその気にさえなってしまえばいつでも襲えてしまう。
しかしそう易々と襲わせるわけないだろう?こちらにはこちらなりの対策っていうものがあるんだよ。
「でも念の為、私は床で寝るからね」
「じゃあ私も床で寝ますね」
「…いやベッドで寝なよ。身体痛くなるでしょ?」
「それは百合さんも同じです。二人でベッドに寝るべきです」
「……」
よし、対策失敗。
もう何を言っても論破されてしまう気がするし、諦めて身体を開け渡すしか無いのか。
脳がパンクしそうになっている百合はそんな風な思考に陥るが、ここで一歩立ち止まって考え直すべきことがある。
それは、なぜ襲われる前提なのかということだ。




