91 手料理を振る舞った!
いよいよお試し期間最後のデートが始まる。
相手は出会ったその日に告白するという奇行に出た葵。しかも相手は同性で陰キャの百合。やはり何度状況を整理しても意味不明だ。
しかし彼女の行動のおかげで百合の人生は間違いなく豊かになり、これからも楽しくて幸せな未来があることを確信している。だからこそ、まずは彼女に出会えたことに感謝し、笑顔で出迎えることにする。
「おはようございます」
「おはよう。ちょうど朝ごはん出来たよ」
「やったっ。じゃあ早速お邪魔しますねっ」
「は〜い」
お察しの通り、お試し期間最後のデートは百合の家で開催されることになった。
いやどうしてこうなった!?
あれはそう、昨日の夜のことだ。お風呂から出て少し明日の支度でもしようと自室に入ったとき、スマホに葵から連絡が入っているのに気づいた。そしてその連絡に目を通すと、『明日百合さんの家でデートしたいです』という内容が送られてきていた。
いや確かにデートプランとかは任せるって言ったんだけど、まさか家に来るなんて。しかもちょうど妹の試合で家族みんな家に居ないし。
ちなみに家族には「大事な用事があるから」と言ったら何かを察したように頷いてくれた。多分全部バレてるねこれ。まあどの道みんなが家に帰ってくる頃までデートしてるからバレるんだろうけどね。こればかりは仕方ないと諦めるしかない。
まあ今はそんなことより、目の前の女の子に集中することにしておこう。朝ごはんめちゃくちゃ楽しみにしてくれてたみたいだし。
「おぉ〜!!これが百合さんの手料理!!」
「あはは…たまにしか作らないから下手かもだけど…」
「そんなことありません!!とてもよく出来ていると思います!!」
優しくて料理ができる恋人にこんなこと言われてもお世辞だと思ってしまうのは捻くれているからだろうか。まあお世辞でも悪い気はしないけど。
「じゃあその、とりあえず食べよっか」
「はい!!」
あまり料理の見栄えについて語られても恥ずかしいだけだし、早く席に着いて食べることにした。
「いただきますっ!」
「ど、どうぞ…」
手を合わせた後、期待に満ちた表情で白ご飯を頬張った。すると彼女はパァッと大きく目を開き、とても嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ん〜!!美味しいですっ!!」
「そう??それなら良かったけど、ご飯は別に誰が作っても同じじゃない?」
「違いますっ!!百合さんが作る料理はなんでも美味しいです!!」
ただ炊飯器で炊いただけなのに、なぜかとても満足そうにしている。少しだけ理由を考えてみたが、そういえば前に葵の手料理を食べさせてもらった時に答えは出ていた。
「そっか。じゃあ多分、隠し味の愛情のおかげだね」
「っ__!!??ど、どうしたんですか急に!?」
なぜか驚いた表情を浮かべる葵だが、一応これは前にあなたが言っていたことですよ。でもなんか顔真っ赤にしていて可愛いからもう少し揶揄ってみることにする。
「どうせ作るからには美味しく食べてもらいたいからね。でもそこまでの技術はないからな〜って考えてたら、『私には愛の力があるじゃん!」 』って気づいてね」
「〜〜っ!!?」
「葵への恋愛感情は私の専売特許だから、もしかしたらいける!って思ってたら、思った以上に良い反応してくれたね」
「な、なんですかそれぇ…」
とうとう顔まで隠して下を向いてしまった。流石に調子に乗り過ぎたか。でも一応言ってることは間違ってないし、これから長く付き合っていく上で知っていてもらって損はないんだけどなぁ。いやまだ付き合うって決めたわけじゃないけど。でもこの子を振る未来は全く見えない。
だってこんなに可愛いんだもん。せっかく私に惚れてくれてるんだし、このチャンスを活かさない手はないでしょ?
だから今のうちにメロメロにさせておいて、絶対離れないように手綱を握っておかないと。あとあわよくば胃袋を掴んでおきたい。握られっぱなしは良くない気がするから!
というわけで恥ずかしがっているところ申し訳ないけど、楽しみで仕方ないから早く料理を食べてもらえるよう促すことにした。
「ねぇねぇ、この卵焼きうまく焼けたから食べてみてくれない?あ、ちなみに塩?醤油?」
「じゃあお塩で…」
「りょーかいっ♪」
手料理好きな人に食べてもらえることがこんなにも楽しいことだなんて。これなら毎日だって作ってあげたいぐらいだ。
(!!これが世の奥さんたちの気持ちなのか__!?)
そしてなぜかかなり将来の話に辿り着いてしまい、葵が美味しそうに料理を食べている間に脳内で結婚生活の妄想を膨らませるのだった。




