09 憂鬱になってしまった!
なんか、とんでもないことになってしまった。
高校に入学した初日、私はある美少女に告白されてしまった。私みたいなボッチを受け入れてくれて、嬉しくなってお試しで付き合うことになってしまった。
正直、私は後悔していた。
「はぁぁぁぁぁぁ…!!どうしてこんなことに…」
枕に顔を埋めながら心の声を漏らす。
そして今日の出来事を今一度思い返す。
【私と…付き合ってください!!!】
誰もが羨む美少女が選んだのは私だった。それも出会ったばかりで何も知らないはずの私を。
「どうして私なんかを…。私なんて、何の取り柄もない陰キャなのに…」
実際私は中学時代、あり得ないぐらい陰キャだった。見る人全てが話しかけるのを拒むような、陰の中の陰の存在だった。
でもこのままじゃいけないって思ってお姉ちゃんや妹、そして心花に協力してもらって何とか少しはマシにすることができた。
でもそれで変えることができたのはあくまで外見だけで、やっぱり中身はそう簡単には変わらなかった。だから高校でもどうせボッチのままなんだと、少し諦めていた。
「…でも…嬉しかったなぁ…」
家族や心花以外の人が初めて手を差し伸べてくれた気がした。それは私にとって運命みたいなもので、告白されたのだって認められた気がして嬉しかった。
でもその手を取ることは出来なかった。私があの人に相応しくないのもそうだし、彼女を幸せにできる自信もないから。
百合なんて名前のくせに、百合について全然詳しくないんだもん。笑えるよね。
だから何もわからない私なんかが七瀬さんの貴重な高校生の時間を奪うわけにはいかないんだ。もっと可愛くて明るくて優しくて、幸せにしてくれる人と結ばれるべきなんだ。
「本当に…どうして私なのぉ…」
一目惚れだと言ってくれた。でも一目見ただけで惚れられてしまうほどの魅力があるとは、我ながら思えない。何かの間違いだったと言ってくれた方がまだ納得できたのに、それでもあの子は…。
【恋人からがいいです】
私が出した友達からという案を軽くあしらった。彼女は私を本気で女として見てくれていたと確信した。でも私にどうすればいいのかわからなくて、結局お試しで付き合うことになってしまった。
「はぁぁぁ…お試しかぁ…。お試しでも一応恋人だからデートとかするんだよね…?」
そんなのまともに出来る気がしないっ…!だって今まで家族と心花以外の人と外で遊んだことなんてないし!ましてやデートなんて二次元でしか見たことないんですけど!?
それに七瀬さんおしゃれだからきっといい雰囲気のカフェとかに連れて行かれるんだろうなぁ…。私なんて家で一人寂しくお茶飲んでるだけでいいのに…。
「あぁぁぁ!!!もうどうすればいいのぉぉぉぉ!!!」
「ちょっとうるさいんだけど!?」
突然現れた妹に怒られてしまった。でもこっちにはこっちの事情がある。
「仕方ないじゃん!!だって…だって…!!」
「…だってなによ…?」
「そ、それは…〜〜っ!!」
恋人の話を家族にするつもりはない。少なくともお試し期間の間は。
だからもちろん妹にも話すわけにはいかないので、私は咄嗟に言い訳を絞り出した。
「別になにしようと私の勝手でしょ!!」
「それはそうかもだけど、とにかくうるさいから静かにして!!」
「それはごめん…気をつける…」
こんな頭が回っていない状態でまともな言い訳なんて思いつかなかった。でも妹は部屋に帰って行ったから何とか耐えることができた。
「全く…私の気も知らないで…」
女の子に告白された側の身にもなってみてほしいものだよ。本当に気遣いができない妹なんだから。
でも理解されないのは仕方ないよね。私もあの子も昔は少女漫画でイケメンに告白されるシーンでキャーキャー言ってたのに。それが突然「女の子に」なんて察せるわけもないよね。
でももしお試し期間がいい感じに進んでいくとそのままお付き合いを続けることになるから、自然といつかはみんなに紹介しないといけなくなるかもしれなくて…。
「はぁぁぁぁ…明日から憂鬱だぁ…」
またトラブルに巻き込まれるんじゃないかと不安になる。でも今そんなことを嘆いたところで何にもならない。
だったらもう諦めをつけて、全部を忘れることにしよう!そうだ!映画でも観よう!
その映画が同性愛をテーマにしていたのはまた別の話。




