10 イジられてしまった!
結局あの後も頭の整理をすることは出来ず、気づけばもう翌日の朝になっていた。
そして一度スマホの連絡を見て、あれが夢でないか確認をしてみる。
「…やっぱり夢じゃない…」
昨日葵から送られてきた浮気の確認が残っていて、百合は現実だということを理解した。
「はぁ〜。まさか私の友達欄に人が増えるなんて。まあ友達じゃないけど」
高校で新たに連絡先を交換するなんて思いもしなかったし、その相手が恋人になるなんて一ミリも予想していたかった。
流石にまだ困惑が勝っているが、そうも言ってられない時間だ。
「とりあえず朝ごはん食べよ__っ」
思い切り身体を伸ばし、部屋を出て一階に降りる。
「おはよ〜」
リビングの扉を開いて中に入ると、三人の女の子が出迎えてくれる。
「おはよう、百合」
「あら、昨晩とてもうるさかった百合じゃない。おはよう」
「え、やっぱそうだよね!?うるさかったよね!?」
「ええ。夜遅くに何かを嘆いていてとても迷惑だったわ」
「だよね〜。百合姉サイテー」
「……」
順番に紹介していこう。
まず最初にキッチンから挨拶をしてきたのが母の華恋。数年前夫と死別して以来、百合を含めた三姉妹を一人で育ててくれた尊敬できる人だ。
そして上品で毒舌なのは姉の恋雪。彼女は勉学に秀でていて、入学以来ずっとトップの成績を維持している。ちなみに百合と同じ高校で生徒会長をしている。
最後にこの生意気なのが妹の莉々恋。こう見えて頭のが良いのだけれど、それ以上に凄いのは運動の方。彼女は女子テニスで全国トップレベルの実力を誇り、その底力はまだまだ成長段階にある。
で、その間に生まれた何もかもが平凡な百合。どうやら全てを二人に吸われてしまったらしい。もちろんコミュ力も。
まあそこはこれから頑張るから大丈夫。頑張っただけでどうにかなれば良いけど…。
「お母さん今日のご飯なにー」
「あ、逃げた」
「逃げたわね。そんなに恥ずかしいことをしていたのかしら?」
「私が見た時は枕に顔を埋めて何かを嘆いてたよ」
「なるほど…つまりどういうこと…?」
「さあ…?」
あのうるさい姉妹は置いておいて、とりあえず母を手伝うことにしよう。
「私ご飯よそうね」
「ありがとうー。あ、莉々恋の分は少なめにしてあげて?ちょっと太ったらしいから」
「ちょ__!?何暴露してんの!?」
「別にいいじゃない。家族しかいないんだし」
「そういう問題じゃないの!!女の子なら誰に聞かれようと恥ずかしいものなの!!」
「そうなの?」
「いや私に聞かれても…」
正直太るとか太らないとかとは無縁の人生だったから莉々恋の話はよくわからない。まあ女の子なら気にした方がいいんだろうけど、私の場合気にしたところで誰にも見られてないから関係ないというか…。
いやでも七瀬さんは私のことを見てるから気にした方がいいのか…?
(…私も少なめにしておこ…念のためね…!!別に七瀬さんに見られることを想像してるとかじゃないからね…!!)
誰に向かって言ってるんだか。
まあでも少しは気にするようになったのは良いことだ。これには華恋も関心のようだ。
「あら、今日は少ないのね。もしかしてあんたも太ったの?」
「ちがぁぁぁう!!!」
関心…?ただノンデリなだけな気がするんだけど。
「痩せようとするのは良いことよ?百合がそこを気にするようになってくれて嬉しいわ」
「百合姉が体重気にしてるの初めて見た」
「今までは好きなものは好きなだけ食べるタイプだったものね。まあ良いことだと思うわ。これを機にあなたも普通の女の子になれるんじゃない?」
「失礼すぎない!?私は既に普通の女の子だよ!!」
「「「普通…???」」」
「え?」
家族全員に不審がられてしまう。
いや家族相手にそこまでする!?流石の私でも悲しくなってくるんだけど…。
まあそれは今までの積み重ねがそうさせているのだろうから仕方ない。これからの変化に期待してもらおう。
とまあこれが恋塚家の日常である。主に妹のせいで騒がしいけど、百合からすれば楽しい家庭でとても居心地が良かったりする。
でもまあ、こういうイジリはやめてほしいなぁ。




