11 誘われてしまった!
まさかの告白から一日。百合は昨日と同様心花と共に登校し、教室の扉を開いた。
「あ、朝日奈さんおはよ〜」
「おはよ〜」
「朝日奈さんおはようございます!今日のお昼一緒にどうすか!?」
「ごめ〜ん!先約があるから!」
「くっそ〜!じゃあまた今度お願いします!」
「は〜いっ」
「ねぇねぇ朝日奈さん!」
「ん〜?」
(す、すごい…人気者だ…)
さっきまで二人で適当なことを話していたはずなのに、気づけばクラスメイトに取られてしまっていた。これも人気者の友達を持つ人間の苦悩なのだろうか。いや、ただのボッチの宿命だ。百合自身もこの輪の中に入れば済む話。
(流石にこの中には入れないなぁ…私なんてただの陰キャなわけだし…)
もちろん百合にとって陽の光は眩しくて、そこに踏み出すことは出来なかった。
で、いつも通り暗い雰囲気のまま独りぼっちで席に向かう。
(まあ、これが本来の私だよね…。独りぼっちの私に構ってくれる心花がおかしいんだよ…)
幼馴染とはいえこんなボッチと一緒に行動するなんて、きっと心花も気を遣ってくれているのだろう。彼女だってもう立派な女子高生だし、きっと他の明るい友達たちと青春を謳歌したいはずだ。
(はは…やっぱ私って邪魔者だよね…この世のみんなの…)
少し冗談混じりに、けれども心の底から気持ちを心の中で呟く。
(もう私なんて必要とされてないよね、私なんて__)
「あのー…どうかしたんですか?」
「へ!?」
目の前に可愛いお顔が。破壊力抜群すぎて一瞬我を忘れてしまった。
「ど、どうしたんですか!?」
「それはこっちのセリフです。さっきからずっと呼んでたのに…何かあったんですか?」
「あ、そうだったんですね…すみません…」
考え事をしていて全然気づかなかった。
でもまさかよりにもよってこんなカースト上位の美少女を無視してしまっていたなんて、下手をすれば切腹モノだ。まあでも、それはあくまで他人だった場合に限る話なのだが。
「別に謝る必要なんてないですよ。だって私たちはその…こ、恋人同士…なんですから…♡」
「っ…!?」
そう、二人は昨日恋人になったばかりの新米カップルなので怒られたりなんてするはずがないのだ。いや本当、付き合っといて良かった。お試しだけど。
昨日は友達からが良いとか言ってただろって?そんな都合の悪い話はもう忘れた。姉と妹とは違って普通の脳みそなので。
まあそこら辺はどうでも良くて、とりあえずこの超絶可愛い彼女を何とかしないと。ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうだ。
「そ、そうですね…!私たちは恋人…。でその、何か用ですか…?」
「あ、そうでした。あの、今週の休日は何か予定がありますか?」
「予定ですか…?」
そんなの訊かないでほしい…わかりきっていることだから。
「もちろん空いてますよ…!」
「では日曜日にデートをしませんか?」
「………え??」
突如恋人の口から放たれたデートというワード。自分とはあまりにも無縁すぎて一瞬理解が追いつかなかった。
すると葵は不安そうな目つきに変わり、少し声のトーンを比較しながら暗い言葉を放った。
「もしかして嫌、ですか…?」
「え!?そんなわけないですよ!?私だって七瀬さんとデートできるのは光栄というか、むしろ私で良いのかっていうか!!」
ちょっと慌て気味に弁明すると、彼女は小さくクスッと笑った。
「恋塚さんは私の恋人なんですから、私がデートをする相手はあなたしかいませんよ?それとも、浮気を疑ってるんですか?」
「そ、そんなことないですよ!!??ただ驚いただけでっ__!!」
「そうですか?それなら良かったです」
もしかしてちょっと性格悪い?まあそんなところも可愛いけど…。
いやでもまだお試し期間だし、この程度でドキドキするわけにはいかない。そうでないとお試しの意味がないし、最初から「友達から」なんてお願いをする必要もなかったことになってしまう。
(わ、私はそう簡単に落とせませんからね…!!)
誓いだけは一丁前に、ドキドキ高鳴る心臓を何とか黙らせようとする。




