12 考えすぎてしまった!
(デート…!?デートってあの良い感じの男女がするリア充限定イベントだよね…??)
一限目が始まったわけだけど、百合は教師の話を全く聞かずに先ほどの葵との会話を思い出していた。
(いやでも私たちは女の子同士だし私はリア充じゃないし…デートなんてして良いモノなの…??)
完全に偏見だ。
誰にだってデートをする権利はあるし、そもそも恋人がいる時点でリア中である。まあ百合がそれに気づくのはまだまだ先になりそうだけど、それは気長に待つとしよう。
とにかく、今はそのデート当日のことについて考えておかないと。
(ま、まあとりあえずデートプランとか考えた方がいいのかな…?お試しだけど一応恋人なわけだし、ちゃんと満足してほしいし…)
いやでもこういうのって誘った方が考えたりするのでは…?全く常識がわからない…。
まあ備えあれば憂いなしというし、とりあえず考えておくだけ考えておこう。
(でも…デートって具体的に何をすればいいの!!??)
今まであまりにも無縁すぎて考えたこともなかったため、実際に自分事になった今、何も考えることができなくなっている。
(そもそもデートの定義って何…?人によっては家で二人きりになるのもデートって言うし、もしかしたら一緒に学校に登校するだけでもデートになったり…?あ゛〜わけがわからなくなってきた__っ!!)
頭がこんがらがってくる。もういっそのこと全部任せきりにした方が良いデートになるのかもしれない。
(でも、せっかくのデートなんだから私がちゃんと考えて、たくさん満足させてあげないと)
ただただ彼女の笑顔が見たいという理由だ。しかしそれはデートプランを考えるには十分すぎる理由で、百合は自分の中で何かが燃え上がったような気がした。
(よし!!後で図書館に行って色々調べてやるぞ!!そして葵を満足させて、たくさん笑顔を見せてもらうんだからっ!!)
授業中なので小さくだが、確かに拳を握った。
そして固まった決意は百合の恋愛感情を増幅させ、早速彼女は葵のことを見つめ始めた。
「………」
「クラス委員をやってくれる人、いませんか?」
「………」
「七瀬さんとか良いんじゃないですか〜?」
「!!??」
なんか気づいたら我が彼女の名前が上がっていた。
そして当の本人は、驚いたように目を見開きながら慌てて言葉を放っていた。
「え!!??わ、私なんかにそんな重要な役割務まりませんよ…!!」
まだ葵と出会って二日目だけど、それでも彼女が目立つのは苦手ということだけはわかっていた。
なのでこの状況は百合にとってもあまり良くないことで、彼女は咄嗟に声を上げようとした…その時だった。
「では私がやりましょうか?」
「花園さん…?」
百合よりも先に名乗りを上げたのは、葵の友人である菫だった。彼女も葵がそういうのは苦手というのを知っていて行動したのだろう。
やっぱり、こういうところが私と陽キャ達の違いだよね…。友達のためなら自分を犠牲にしてでも行動して、友達を守ろうとするなんて。私にはそんな立派なことできっこないよ…。
「じゃあお願いしても良いですか?」
「はい。みんな、これからよろしく頼む」
拍手と歓声が湧き起こる。
やっぱり、菫はとても立派な人だった。葵の友人に相応しい…いや、恋人に相応しいのはきっとああいう人なんだろう。
(…やっぱり私なんかを好きになっても…)
満足させられない。
(なんて言うと思った!!??全っ然怖くなんてないんですけど!?むしろ燃えるというか、私の方が幸せにできる自信しかないんですけど!!??)
お、おお…。すごい自信だ…。
菫に勝てるところなんて一つもないことを知っていながらこの胸の張り方。流石の葵もドン引きするだろう。
しかし今の百合に必要なのはこういう気持ちでデートに臨むことだろうから、今ぐらいは目を瞑ってやってほしい。後でぶっ飛ばして良いから。
(今週末のデート、絶対に満足させてあげるんだから!!そして私以外のことは考えられなくなるぐらいにメロメロにしてやるんだからっ!!!!)
コイツ昨日まで「お友達からお願いします」とか言ってたんだぜ?信じられないだろ?
これが本気になった陰キャの暴走状態なのだが、この数分後には冷静になって敗北者の気分を味わうらしい。




