85 テストが終わった!
翌日以降、体調を完全に治した百合はテスト勉強のために毎日ペンを動かした。葵や菫が見てくれる時間は積極的に質問をし、一人の時はひたすら問題集を解いていった。だがまたやりすぎて倒れるわけにはいかないため、ある程度セーブはしていた。
その結果、珍しく自信を持ってテストに挑むことができた。葵達に教えてもらったことや自主勉強したところがちゃんとテストに出ていて、今までにないぐらいスラスラと問題を解くことができた。
(これは…今回いけるんじゃない!?)
そんな気持ちを抱きつつ、一週間に及ぶテスト期間を乗り越えて行った。
そして迎えた放課後、四人みんなでファミレスで打ち上げをしています!
「そんじゃ!みんなテストお疲れ!乾杯!!」
「「「乾杯!!!」」」
それぞれのドリンクを手に持ち、高々と乾杯をする。
そして今までで一番と言っても良いぐらいの味のドリンクを一口飲み、今回のテストの話を始めた。
「ふぁ〜。ようやくテスト終わったよ」
「お疲れ様です」
「なかなか大変そうだったな」
この中で一番苦労したであろう心花は、憎たらしい表情で学校に批判を申し上げる。
「本当だよもう!!何でテストなんてものがこの世に存在するの!?」
「そこからなんですね…」
「勉強が嫌いな人からすればかなり苦痛な事なんだろうな。私にはわからなくて申し訳ないが」
口ぶりからして勉強は苦痛ではないのだろう。まあ普通に考えて勉強が嫌じゃなくないとこの学校で一位争いをするなんて無理だろうし。きっとこういうのが才能というやつなんだろう。とても羨ましい。
「良いよねぇ。二人は勉強好きで。あたしたちなんて拒否反応が出るくらい嫌いだもんね?」
「え?別に私はそんなにだけど」
「は??」
しっかり勉強してみてわかったけど、別に勉強することは苦痛ではなかった。やればやるほど頭の中に入ってきて露骨に点数上がるのがわかるし、みんなの隣に立って恥ずかしくない女になるためにってやってたら夢中になって時間が過ぎていくぐらいには楽しかった。だから心花には申し訳ないけど、苦痛という感覚は過去のものになっていた。
しかし彼女は納得がいかない様子で、ほぼ八つ当たりのような仕打ちをしてくる。
「なんでアンタがそっち側なん??その脳味噌でそれは無理あるでしょ」
「言い過ぎでしょ…。まあ今までがアレだから否定できないけど」
しかし心変わりしたという事を、彼女にしっかり伝えておく。
「でも今回ちゃんと勉強してみて、ようやく楽しさに気づけたの。案外勉強するのも悪くないなって。それに多分結果も良いし、やり甲斐は結構あったね」
「ウソでしょ…!一体どんな悪い奴に取り憑かれたの!?」
「別に普通だよ」
「普通の人間が勉強好きになるわけないだろ!!!」
「それは暴論だと思います…」
心花がずっと意味不明な事を言っていると、そこに勉強出来る側の葵が入ってきて形成が逆転する。
「あ、あおたそはいい意味で普通じゃないからね…」
「たそ…??」
なんか急に呼び方が変わってる。まあでも心花は基本仲の良い人にはあだ名で呼ぶタイプだから、これも親しくなった証と言える。
じゃあ何で私は未だに普通に名前呼びなんだろう…。
「それは褒められているんでしょうか…?」
「褒めてるよ!!これ以上ないぐらい褒めてるよ!!」
「これが心花の語彙力の限界か…。もっと勉強する必要がありそうだな」
「あこういうところにも勉学の差が出るんだ」
こんなどうでも良いところで勉強の大切さを理解したらしい。
「あたしもいい加減ちゃんと勉強しよ…」
「急に改心したな…。もしかして焦っているのか?」
「っ……」
菫の言葉が胸に突き刺さったのか、心花が一瞬身体を跳ねさせた。それは誰が見ても肯定を表していて、彼女は諦めたように白状し始めた。
「そうだよ…!!あたしも良い女にならないと取られるって焦ってんの!!」
「やっぱりな」
「別に焦る必要なんてないと思いますけど…。心花さんは勉強が出来なくても十分魅力的ですし」
「そ、れはそうだけど!!」
「そこは肯定するんだ」
謎に見た目だけは自信あるんだよなこの子。まあ事実だから良いんだけど。
「百合が勉強して賢くなっちゃったらあたしだけ明らかに相応しくないじゃん…」
「まあそれは…」
「グループで一人だけ浮いてしまうな」
「浮くなんてそんなの…耐えられるわけがない__っ!!」
陽キャには陽キャの悩みがあるらしい。私なんて浮くのが当たり前なのに。
まあ心花は心花なりに必死に頑張ろうとしてるみたいだし、恋人候補としては応援してあげるだけだ。
「頑張ってね!」
「アンタには言われたくない」
「何で!?」
相変わらずこちらにだけは対応が酷い心花であった。




