81 争いが起きてしまった!
三人でいろんな話に花を咲かせ始めた女子たち。次第に盛り上がってきてかなり踏み込んだ話にもなってきたのだが、そこで突然リビングの扉が開かれ、思いもよらぬ人物が入ってきた。
「え!?百合!?」
今さっきまで絶賛熱で寝込んでいた百合の登場だ。流石に三人とも驚き、すぐにこちらにやってくる。
「ど、どうしたんですか!?」
「歩いて大丈夫なのか?」
「呼んでくれればそっちまで行ったのに!!」
心配してくれる三人をよそに、百合はぎこちない笑みを浮かべる。
「あはは…ちょっとお腹空いて」
「部屋にゼリーとか置いてたよね!?」
「あ、うん。一応食べたんだけど…まだお腹空いてて…」
「マジか…もっと買っときゃ良かった…」
「ごめんなさい!次からはもっと買ってきますだ!」
「いやもう体調不良は勘弁して…」
焦っている時の葵は少し的外れなことを言うことがある。普段なら心の中でクスッと笑っているが、今はそんな余裕もなくて弱いツッコミしか出てこない。
とまあそんな感じでみんなに出迎えられたわけだが、とりあえず立ったままは辛いからソファに座ることにした。
「で、どうすんの?」
「どれぐらい食べられそうですか?」
「う〜ん…どうだろ…」
「少し多めに作っておいて余れば私たちが食べれば良いんじゃないか?」
「それが良いね」
みんなそばに来て心から寄り添ってくれている。流石に嬉しすぎて今すぐにでもお礼したいところだけど、流石にそんな余裕ないからそれは後日にしておく。
そんなことよりも今は真剣に考えてくれている三人の気持ちに応えてあげないと。
「体調不良の時はお粥かうどんあたりが定番な気がしますけど」
「じゃあうどんで…」
「わかりました!」
「まっかせて!あたしの今までの努力ぜんぶこめるから!」
「え?心花さんも作るつもりなんですか?」
「え?葵が料理するの?」
ここに来てまさかのライバル展開か?せめて体調万全の時にしてほしいんだけど…。
しかしそんな百合の気持ちを無視し、二人は百合のために争いを繰り広げ始める。
「あたしの方が百合の好みの味を知ってると思うからあたしが作った方が良くない?」
「それはそうかもですけど…!一番真心込めて作れるのは私ですから…!!」
「んん??真心ならあたしだって相当込めるけど?何なら愛を込めるけど!?」
「愛__っ!?そ、それは私も__」
「二人ともやめないか。病人の前だぞ」
そこで菫が割って入り、二人の争いに終止符を打った。
そしてようやく二人も過ちに気づき、しょんぼりした顔で謝罪を述べ始める。
「ごめんなさい…。百合さんに早く元気になってもらいたくて…」
「あたしの気持ちを込めたら少しは力が出るんじゃないかと思って…」
「二人とも気持ちはわかるが、わざわざ言い争う必要はないんじゃないか?」
「「はい…」」
多分二人ともこちらのことを憂いてくれた結果なのだろう。それは正直言ってめちゃくちゃ嬉しい。でも争いが勃発するのはちょっと頭に響くから、菫の行動はとても助かった。
結局三人ともこちらのことを考えてくれていて、優しさとか温かさを身をもって実感する。
「みんなありがとうね。嬉しいよ」
「っ…!?」
「…はぁ。アンタには敵わないよ」
「百合がここまで言ってるんだ。これはもう協力して最高のサービスをしてあげるべきじゃないか?」
「そうですね…っ!!」
「よ〜し!!やるぞー!!」
とりあえず仲良く料理してくれるみたいで安心した。やっぱり喧嘩は良くないからね。それも恋人候補同士のなんて余計に。
多分菫はそういうところまで汲み取ってくれて二人をやる気にしたんだろうが、あまりにも巧妙すぎて逆に怖くなってくる。何というか、二人をどうすればやる気にさせられるかを完全に理解しているというか…。
あれ?そういえばこの人心花が私のこと好きなのって知ってたっけ…??




