74 眠気に襲われてしまった!
自分で宣言したからにはすぐ行動に移す。
とりあえず平均以上、あわよくばトップ三十位ぐらいを狙ってみる。
早速部屋で問題集を開き、颯爽と勉強を進めていく。やはりモチベーションがいつもより高く、普段の倍ぐらいのスピードでペンが動く。しかしこれでも書くスピードが追いつかないぐらいに頭が回転していて、百合は徐々に勉強の感覚を掴み始めていた。
(勝手に頭が回る…!!スラスラ答えが浮かんでくる!!これだ!!これをすればいいんだ!!)
少しずつ勉強が楽しくなってきた。今までとは違う頭の入り方に心が興奮していく。
(きっとお姉ちゃんもいつもこんな感じなんだ!!そりゃ勉強楽しくて仕方ないよ!!私に足りなかったのはこれだったんだ!!)
誰にも負けないぐらいの圧倒的なモチベーション。それは才能にも努力にも勝るモノで、恋雪もきっとこれを繰り返してあの領域にたどり着いたんだろう。
(てかやっぱり私にも頭の良さは遺伝してたんだ!!もっと早く教えてよ〜)
なんか急に虚しくなってきた。
自分も多分あっち側なんだと思った瞬間、今までの苦悩の日々がしょうもなく思えてきた。まあまだそう考えるには早すぎるけど。でも少なくとも今の状態なら姉や妹にも追いつけると感じ、百合は今までにないぐらいのスピードで問題集を解いていく。
それから一時間、脳をフル回転させながら必死に手を動かした。圧倒的な効率で頭に叩き込まれる感じは何よりも爽快で、この瞬間だけは勉強を楽しいと思えた。
しかし、その時間は長くは続かない。一時間も頭をフル回転させればオーバーヒートが発生し、視界もフラフラしてくる。
「あれ…何コレ…」
慣れないことをした代償というやつなのだろうか。筋トレで例えると初心者がベンチプレス百キロに挑戦する的な?
いやなんで今筋トレで例えたの。そんなのしたことないのに。
もう完全に頭がおかしくなっている。恋雪たちはよく耐えられるな。コレが日頃からやってる人間とやってない人間の差なんだろう。やっぱり今すぐ追いつくのは無理みたいだ。
「やっぱ二人はすごいことしてるってことか…。私なんかじゃ身体がもたないみたいだね」
幼少期から取り組んできた人間との差は想像以上に大きいらしい。人生を賭けても取り戻せるかわからないぐらい、その差は大きく感じられた。
「てか本当にフラフラする…。今日はもう寝よっか…。問題集もだいぶ進んだし」
一応もう寝る準備は済ませてある。あとはベッドに転がって目を瞑るだけ。
それだけのはずなのに。
(あれ、身体が動かな…)
強い眠気が百合を襲う。自然と身体が机に突っ伏し始めたため、必死に抵抗する。
(流石にベッドに…)
自然と目が閉じられてしまう。もう完全に寝落ちしてしまいそうだ。
最後の力を振り絞ってベッドに行こうとするも、それは叶わない。
「…………」
深い寝息と共に意識が暗闇に消えていった。
◇◇◇◇◇
珍しく妹がテスト勉強を頑張るらしいし、ここは姉として多少は労ってあげたい。とりあえず紅茶を淹れて部屋に持っていくことにした。
数分後、部屋の前について早速ノックをする。でも反応はなくて、今度は声を出して反応を待つ。
「百合??私だけど」
無反応。十秒待っても中から音は聞こえない。
「入るわよ?」
もしかしたら集中しすぎて周りの音が聞こえなくなっているのかもしれない。昔の私がそうだったから。
もしその場合は一旦休憩させないと大変なことになるから、彼女の承認を得ずに扉を開いた。
「…寝てる…」
妹が珍しく机に突っ伏すように眠っている。つまり限界まで勉強をしていたことを表していて、私は過去の自分を思い出した。
(私も、昔はこうだったわね)
勉強が楽しくて仕方なくて、気がつけば疲労困憊するまで勉強していたあの日々。頭がオーバーヒートするたびに熱が出て、たまに親に怒られてたっけ。
「もう、こんなところで寝たら風邪ひくわよ」
姉妹だからいつかこうなるんじゃないかとは思っていたけど、苦しむ姿は見たくない。
せめて助かってほしいという思いを胸に、毛布を上からかけてあげた。
「おやすみなさい。百合。テスト、頑張ってね」
可愛くて仕方ない妹の頭を優しく撫でたあと、邪魔をしないために部屋をあとにした。




