62 恋バナしてしまった!
「………」
「さ、早くこっち来な??」
「いや、私は別に…」
「なんで?せっかくの楽しい楽しいお泊まりなのに」
あの後普通に美味しい料理を頂いたわけだけど、その時なぜかお泊まりする流れになってしまい、今に至る。
「いや一応付き合ってるわけだし…同じベッドで寝るっていうのはなんか…恥ずかしいし…」
「ほほぉ〜ん?♡付き合って早々あたしと添い寝するのが恥ずかしいんだぁ〜♡」
「そ、そうだよ!!」
あとついでに襲われそうだし。ベッドに入らない理由としては十分だ。
でもこういう時、彼女の交渉力はピカイチになることを、百合は完全に忘れていた。
「百合ちゃんは可愛いですねぇ〜♪あたしと一緒にいるとドキドキしちゃうもんね〜?♡そりゃ同じベッドなんて心臓破裂しちゃうから無理だよね〜?♡」
「はぁ??んなわけないんですけど!?」
「じゃあ隣、来れるよね??」
「……っ」
気づけば完全に心花のペースに乗せられていた。しかし今更逃げることもできず、結局心花の隣に寝そべった。
「今日は珍しく素直じゃん」
「っ…いつもは素直じゃないみたいな言い方しないで」
「ごめんごめん。つい可愛くて揶揄いたくなっちゃった」
心花の顔がいつもより近くにあって、不意にドキドキしてしまう。そしていつもより素直になれなってしまって、ついツンツンした態度をとってしまう。
「可愛いって言わないで…!」
「なんで?可愛い人に可愛いっていうのは礼儀でしょ」
「なんでそうなるの…っ!!」
どうして彼女はこんなにも平気そうなんだ。好きな人が同じベッドに居るんだぞ?普通心臓バクバクでまともに会話できないでしょ。
もしかして慣れてる?いやでも恋人いるなんて聞いたことないし…いや決めつけるのは良くない。こういう時はちゃんと聞いて不安を解消しておかないと。
「てか女の子の扱いに慣れすぎじゃない…?もしかして誰かと付き合ってたこととか…」
「ないない!!絶対にない!!」
この必死な否定の仕方見るに、どうやら過去に恋人はいたことはないらしい。誤解を避けるために手や表情でアピールをしてくれて、百合も心のどこかでホッとした。
「あたしなんかのこと好きになる人なんているわけないし…!!」
「え??」
「え、何その反応…」
そんなに可愛くてスタイル良くて明るいのに、あたしなんかぁぁ!!??それって遠回しにdisってる?こんな自分にすら遠く及ばない百合ちゃんは存在価値ないってことですかぁぁ!??
とまあ、そんな脳内の被害妄想は適当に無視しておくとして、とりあえず彼女の認識を訂正しておかないと。マジでそのうち傷つきすぎて心消失するかもしれないから。
「いや、心花のこと好きになる人なんていくらでもいるでしょ…」
「はぁ??ナイナイ。そんな物好きいるわけないって」
「ちなみに今まで告白された回数は?」
「ゼロ」
「男の子なら?」
「…十から数えてない」
「ほらやっぱり!!モテモテじゃん!?」
ね??こんな美少女男の子が放っておくわけないんだって。私が男だったら出会って二秒で告白してるね。まあ女だから告白も好きになることもないんだけどね!!??
というか普通に青春しすぎでしょこの子。いいと男の子も沢山いただろうに、なんでわざわざ私を選んだんだろう…。
「てか恋人いたことないってことは全部断ったの!?」
「まあね〜。正直恋愛とか興味無かったし。なんかしがらみとかも増えて面倒そうだったから、申し訳ないけど全員バッサリ切ったね」
「あ、悪魔…」
「誰が悪魔やい!?せめて小さくて可愛らしい小悪魔と呼べ!!」
「いやそこ??」
なんでモテる人ってこんなにも心に余裕があるんだろう。私なんていつ告白されるか毎日ハラハラしてるのに…。まあ最近はいつ女の子に好きになられるか怖くなってたりするけど。
でもやっぱ、心花は私には釣り合ってないよなぁ…。こんなにモテモテの子が私なんかと付き合ってるって知ったら、振られた男の子たちに滅多刺しにされるんじゃ…。
うん、背中が寒くなってきたからこの辺は考えないようにしておこう。それよりも今はこの絶望的に近い距離感をどうにかしないと心臓が破裂してしまいそうである。
「てか百合の方こそどうなん?実は告白されてました〜みたいなの無いの?」
「何それ嫌味??」
「あ、なんかごめん…」
「はは、はははははははは」
急に古傷を抉られて虚空に笑みを向け始める百合であった。
9月1日から4、5日程度お休みをいただきます。詳細は活動報告に載せてますので、よければご覧ください。




