60 返事が欲しかった…
「はぁ…」
「どうした?ため息なんかついて」
「あ、いえ別に何も…」
とある休日、カフェで美少女二人がお茶をしている。その光景は周りから見れば優雅なひと時を過ごすお嬢様たちだが、実際のところ二人はそんな大層なものではない。
「今日は最初からあまり調子が良いようではなさそうだが…もしかして体調でも悪いのかい?」
「あ、いえ。そういうわけでは」
「じゃあ…悩みとかか?」
「っ…」
あまりにわかりやすい反応に、菫は瞬時に食いついた。
「なるほど。では、せっかくこうして二人でお茶してることだし、悩み、聞かせてくれないか?」
「………」
葵は口を思い切り締め込んだ。でもこちらの悩みに真剣に向き合ってくれている彼女のことを蔑ろにすることは心が許さなくて、結局重い口を開いてしまう。
「実はその…まだ百合さんにお返事をいただけてなくて…」
「!!…なるほど。そういうことか」
この短い言葉だけで菫は全てを察し、お茶を一口飲んでから一応確認をしてくる。
「つまり葵は彼女からの返事がなくて不安になっている、と」
「まぁ…はい…」
その瞬間、菫の中で疑問と憤りが芽生えてきた。
「一応、お試し期間は終わったんだよな?」
「一旦はそうですね…」
「百合はお試しが終わったら返事をするって言っていたよな?」
「はい…」
「でも百合からは何もないと。何をしているんだ彼女は」
葵を弄んだのか?
そんな考えが菫の頭に浮かぶ。でも百合はあの時、葵とは本気だと言っていた。菫はその真剣な眼差しに惚れ、彼女と友達になることを決めた。
だから正直、百合がそんな無責任なことをする女だとは考えたくない。彼女には彼女なりの理由があるのではないかと、頭が囁きかけてくる。
そんな風に菫の中でいろんな思いが交錯して頭がこんがらがっている時、葵が弁明をするように語りかけてきた。
「あの、一応百合さんにも事情があったみたいで…」
「事情?告白への返事より大事なことなのか?」
「それはその…そうみたいです…」
「なるほどな」
葵は百合を悪く言われるのが心底嫌のようで、菫もそれを察して彼女はの不満を心の奥底に沈めた。
「まぁ、葵がそう言うのならきっとそうなんだろうな。私だって彼女を信じたいし、ここは事情があったということにしておこう」
「ありがとうございます…!!」
「別に感謝されることじゃないさ。私が勝手に疑ってしまっただけだから」
ひとまず菫の怒りは収まり、いつものように楽しいお茶会が戻ってくる。
「で??その百合とは今どうなんだ?」
「どうっていうのは…?」
「良い感じなのかってこと」
「そ、それは…」
なかなか答えにくい質問だ。
一応付き合える直前までは行った自信があるけど、今の彼女はこちらだけを見ているわけではない。良い感じと答えるには百合の気持ちの揺らぎが気になるし、悪いと答えるには親密すぎる。
結局のところ、葵は友人を安心させることを選んだ。
「はい。良い感じだと思います」
「そうか?なら付き合えるのも時間の問題だろうな」
「そうですかね…。まあ百合さんは気持ちの整理に時間がかかっているみたいですし…」
「確かに、彼女はやや優柔不断みたいだな。こういう大事な話だと特に悩むのだろうな」
これも葵の一つの悩みである。彼女がもう少し素直で、決断力のある子だったら、こんなにももどかしい気持ちになることはなかったのに。
「…百合さんのばか」
「ははっ。それは直接言ってあげてくれ」
「それは無理です…!!百合さんにそんなこと…言えないですぅ…」
好きな人相手にそんなこと言えるわけがない。葵は良い子なんだから。
いや思い出してみれば何回か言ってたような気がしなくもない…?いや気のせいか。うん気のせいだ絶対。
温厚で優しい葵がそんな汚い言葉を使うわけないだろう?あまり舐めるなよ。
「にしても、百合の話となると元気になるよなぁ」
「っ!!??そ、そんなことありませんっ…!!」
「そんなことあるだろ。今も普段出さないぐらいの声が出てるし」
「〜〜っ!!」
やっぱり好きな人の話を出されるとつい興奮してしまう。そろそろこの癖直さないと他の人に悟られる可能性が…。
でもそんな簡単にうまくいくなら苦労してないよ。それは多分、恋愛もそうだ。
早く、私のものになってくれないかなぁ…。
「百合のことが大好きなんだな」
「それは…はい…!!」
「自信満々。これは今後に期待できるな」
「何に期待してるんですか!!??」
毎回お茶するたびに遊ばれてる気がする。
でもそれは仲が良い証拠でもあるから、とりあえずはこの時間を楽しめるように努力する。




