56 決定してしまった!
豪雨を切り裂いて必死に走った二人は、数分後にようやく家に到着した。
「はぁ!!ようやくついた…!!何でこんなにタイミングよく降り始めるかなぁ!!」
「はぁ…はぁ…ホントにね…。というか流石にこのまま上がるのはマズいよね…」
二人ともびしょ濡れのためこれ以上先には進めない。
「あら二人ともおかえり__!!雨大丈夫だった!?」
頭を悩ませていたタイミングで心花の母がこちらにやってきて、慌てた様子で心配してくる。
「怪我とかしてない!?滑ってこけたとか雷に打たれたとかない!?」
心配性な花菜はちょっと危ないことがあっただけで人でも死ぬのかというぐらい慌てる人だ。当然娘たちが大雨の中走って帰ってきたりした日にはもう顔が真っ青になっている。
だがしかしそれは毎度杞憂に終わることを知っているため、慣れた手つきで彼女のことを説得する。
「ダイジョブだって〜。フツーにコンビニ行ってただけだし」
「でも__!!」
「まあまあ落ち着いてください。見ての通り私たちは何事もなく無事に帰っききましたから」
「それは…そう…ね…。ごめんなさい。取り乱したわ」
「いえいえ。おばさんが心配してくれてたのは伝わってきましたから。こちらこそ、心配をおかけしてごめんなさい」
百合も頭を下げ、一応これで花菜の心配は晴れた。ちなみにこれがいつも通りの流れだ。彼女は割と単純な人なのだ。おかげでいつも説得しやすくて助かる。
とまあそこら辺は一件落着として、とりあえず寒くなってきたからタオルか何かが欲しいところだ。心花ももちろん同じ状況のため、彼女の口からそれを告げ始めた。
「でさぁ…寒いんだけど?」
「あ!ごめんなさい!!今すぐにタオル持ってくるわね!!」
「よろしく〜」
流石実の娘。母の扱いをよくわかっている。
花菜がタオルを持ってくるために姿を消した後、心花が悪そうな笑みをこちらに向けてきた。
「しっかしまぁ…なかなかエ○い身体してますなぁ〜♪」
「エッ__!!??急に何言ってんの!?」
舐め回すように全身を見回してくる。流石にオッサンすぎて気持ち悪い。いくら恋人でも拒絶反応が出てしまう。
「服が濡れたせいで身体にピタッと貼り付いてさぁ…身体のライン丸わかりなんだよねぇ…♪」
「っ__!?」
幼馴染しかいないから気にしていなかったけど、確かに人に見せられるような格好ではないな。仮に葵に見られたとして、恥ずかしくて逃げ出してしまいそうなほどだ。
でもそれほどまでは恥ずかしくならないのが幼馴染というものだ。しかし目線は気持ち悪いからとりあえず手で隠しておく。
「恥ずかしいがっちゃってぇ…♪前を隠しても後ろからブラ丸見えだぞ〜?♡」
「ちょ__!!見ないで!?」
「恥ずかしがる百合もかあいいのぉ〜♡あたしが揉んで差し上げよう!!」
「ふぁっ__!?」
またしても軽いノリで胸を揉んでくる。それはもう、いやらしい手つきで。
「ほほぉ〜ん♪これは直で触りたくなる感触ですなぁ〜。一緒にお風呂入って確かめますかぁ」
「いや入らないよ!?今の話聞いて一緒に行くわけないじゃん!?」
「あら〜二人とも仲良しね〜♪そのまま一緒にお風呂入っちゃって?♪」
「おばさん!?」
タオルをたくさん持って帰ってきた花菜が胸を揉んでいる光景を目撃してしまい、生温かい笑みを向けられてしまった。これは流石に恥ずかしくて顔が熱くなってしまう。
「やっぱお母さんもそっちのがいいと思う!?」
「もちろん♪一人だけ待機してたら風邪引いちゃうし、二人同時の方が効率的だものね〜」
「いや待ってください!?私たちもう高校生ですよ!?」
花菜もあっち側に立たれると流石にマズいので必死に説得を試みるが、そういえば彼女が鈍感で天然なことをすっかり忘れていた。
「何か問題あるかしら…?昔はよく二人で入ってたわよね?」
「それはそうですけど!!もう私たち色々成長してるんで!!」
「成長…?でも二人は女の子同士よね?」
「それはそうですけど…ぐ〜…!!」
花菜の言葉を否定するには付き合っていることを打ち明ける必要がある。しかし百合にそんな勇気はなくて、やるせない思いが喉の奥でつっかえている。
そして心花はその隙を逃さずこちらの手を握ってくる。
「じゃ〜あたしたちは一緒に入ってくるから、ご飯の準備お願いね♪」
「りょ〜か〜い♪」
「え、まだ話は終わっ__」
「さー行くよ百合!!あたしたちは親友だから一緒に入るよ!!」
「待って〜!!!」
襲われる未来しか見えない。それが心花という女の子だということは、幼馴染だからよく知っている。
いやでも恋人になったから流石に控えめになったか?てかもうそれを願うしかないな。
(頼むから襲うのだけはやめて…!!)
一応初めては大切にしたいと、祈りを捧げるのだった。




