55 降ってきてしまった!
ザーーーー。
とてつもない音が外で響き始めた。
「「………」」
響く轟音と共に降り注ぐ大粒の雨に絶望した二人は、ただ虚空を見つめることしかできなくなる。
「ねぇ」
「ん?」
「これいつ止むと思う?」
「さあ…?」
心花からの質問に答えることはできず、ただ雨を眺めることしかできない。
「…もしかして濡れながら帰るしかない?」
「そうかも…」
「ウッソでしょ…!?せっかく今日気合い入れてたのに…!」
初デートだからとメイクや髪型、服装にまで気合いを入れていた心花が頭を抱え始めた。確かにいつもとは雰囲気が違うと思ったけど、正直そこまで変化には気づかなかった。我ながら最低だ。
でもまあ、いつもより気合を入れてきたのはこっちも同じだから気持ちはよくわかる。一体ここからどうすれば。
「とりあえず…傘、買う?」
「まーそうするしかないよね〜。傘くらい平気で貫通してきそうだけど…」
「確かに…」
この大雨だと傘を差した程度では横から雨粒が侵入してきてしままって結果のずぶ濡れになってしまいそうだ。
だが気休め程度でも自分を守ってくれるものがある方が安心するため、とりあえず傘を買ったわけだが…。
「なんかさっきより強くなってない…?」
再度コンビニから出た時には大雨に加え、強風と雷が訪れいた。
いや待ってこれ本当に帰れる?
「最悪おばさんに車で迎えに来てもらうとか…」
「お母さん免許持ってないんだけど…」
「………」
一応百合の母に迎えに来てもらうという選択肢も浮かんだが、そういえばあの人今日仕事だったわ。つまり絶望しかないということ。
「もう腹括って走るしかない!!」
「まぁそれしか選択肢ないよね…。うぅ…濡れるの嫌だなぁ…」
「あたしの家帰ったら一緒にお風呂入ってあげるから!!」
「はぁ!!??」
付き合って数日の恋人にそれは刺激が強すぎる。流石の百合も恐れ慄いてしまう。
「ふふっ♪期待した?♡」
「き、期待なんかしてないし!!」
「そう??その割には顔が真っ赤な気がするんだけど?♪」
「ぐっ…!!もういいから早く帰ろ!!」
「拗ねちゃった」
いくら幼馴染でもこの歳でこんなこと言われたら照れちゃうでしょ!ホント心臓に悪いんだから!
ま、そこらは家に帰ってから考えるとして、とりあえず家に辿り着くまでのことを考えないと。
「というわけで…朝日奈心花、行きます!!」
「え、何その掛け声」
「ほら!!百合も早くして!!」
「えぇ…」
ここで気合を入れて何になるのか。
まあでも心花が楽しそうだから仕方なくやることにする。
「こ、恋塚百合!!行きますっ…!!」
「いいね〜!!」
傘を差して豪雨の中に飛び込む。やはり傘程度では全てを塞ぐことはできず、ほぼ全身が濡れてしまう。
だがしかし、何というかこの状況…
「なんか楽しいね〜!!つい叫びたくなっちゃう!!」
雨に濡れて不快なはずなのに、謎の高揚感が胸を覆いこむ。流石に子供すぎて自分でも馬鹿らしいと感じるが、そんな気持ちは隣で楽しそうに走っている恋人のことを見れば吹き飛んでいってしまう。
「百合ー!!好きだぁーっ!!!!」
「!!??」
豪雨でほとんど声が聴こえないとはいえ、流石に至近距離で叫ばれると丸聞こえなんですよ。しかし心花もこんな外で愛を叫ぶだなんて、大胆なことをするものだ。
まあそれをされる側の身にもなってほしいけどね。
「何してんの!!??」
「あれ、聴こえてた??」
「そりゃ聞こえるよ!?こんなに近いんだから!?」
「そっか〜。じゃあ次からはこっそり言うね」
「コッソリでも言わなくていいから!?」
どれだけ好きなんだこの人。いやこちらを揶揄ってきているだけの可能性も…。
どちらにしろ本人の前で言うのはやめてほしい。いくら大雨だからって誰かが聞いてるかもしれないでしょ!!
というかそろそろ体力的な限界が近づいてきたんですけど。まだ半分も進んでないのに…!!我ながら体力無さすぎて失望してしまうよ。
「てかもう、限界…!!」
「えぇ!?アンタ体力無さすぎでしょ!?」
「引っ張ってぇ…」
「もう…仕方ないなぁ!!」
と言うわけで心花に引っ張ってもらい、何とか最後の力を振り絞って心花の家に帰ったのだった。




