53 帰ってきてしまった!
「ただいま〜。百合ちゃんいらっしゃ〜い♪」
「おばさん…!?お、お邪魔してます!」
突然帰宅した心花の母、花菜の姿を見て驚いてしまったのにはワケがある。
「お母さん!?今日は夕方までママ友ととショッピングって…」
今日心花の家でデートをしていた理由は、夕方まで両親共に家にいないからだった。心花もそのつもりで張り切ってデートに臨んでいたようだが、親が帰ってきて話が変わってしまったみたいだ。
「そのつもりだったんだけど、お子さんが熱を出しちゃったみたいで早めに帰っちゃったのよ〜。で、その子以外でショッピングっていうのも気が引けて、今日は早めに解散することにしたの〜」
「そ、そっか…。じゃあ今日はもうずっと家にいるってこと…?」
そんなに悲しそうな顔をするとバレちゃうでしょ。もっとポーカーフェイスでいてよ。
「ええそうだけど…もしかしてもうちょっとゆっくりしてきた方が良かった?」
「ううん全然…!!早くお母さんに会えて嬉し〜…!」
「そう?♪ふふ、今日は珍しく素直ね〜♪」
花菜が嬉しそうに笑いながら頭を撫でている。どうやら先ほどまでデートしていたことはバレていないようだ。
いや普通に考えて幼馴染が家でデートしてるなんて思わないか。同性だし。
しかも花菜からすれば百合は小さい頃から慕っている、いわば娘みたいなものなので、余計にそういうことは考えづらいのだろう。
まあ単に彼女が滅茶苦茶鈍感なだけの可能性もあるけどね。この人昔からそういう感じだから。
「やめてよ…!髪崩れるじゃん!」
「別にいいじゃない〜♪恋人とデートしているわけでもあるまいし♪」
「「え?」」
前言撤回。意外と鋭いぞこの人。
いやでも恋人と断定するには材料が少なすぎるし…やっぱりたまたまか?
「そ、そりゃそうだよ…!恋人なんて…ないない!!」
「私と心花は親友ですからね…!」
「そうね〜♪まあでも、私としてはそっちの展開もアリだと思うけど♡」
「!!??」
「何言ってんの!!??」
いやあなたもそっち側なんかい。
もしかして心花が女の子を好きになったのも親譲り?いやでもこの人はちゃんと男の人と結婚してるし…やっぱり心花が変なだけか。
「普通そんな展開あり得ないでしょ!?女の子同士なんて…そんなのあたしにはムリ!!」
「え?」
その冗談は流石に無理がある。百合からすれば謎以外の言葉が浮かんでこない。
しかし花菜は何も知らないので簡単に納得し、その上で心花には軽く攻撃を仕掛ける。
「それもそうね〜。でもその割には浮いた話の一つも聞かないんだけど?」
「__!!ほっといてよ!!今頑張ってるんだから!!」
「そうなの?なら恋人を連れてくるのも時間の問題ね〜♡」
「…まあ、そうだね…!!」
心花ぐらい可愛くて明るい子なら恋人なんて簡単に作る事ができるだろう。それは花菜も理解して喜んでいるみたいだが、彼女が恋人に選んだのは女の子だったので非常に申し訳ない。
きっと爽やかイケメンを連れてくるのを期待してるんだろうなぁ…。先に謝っておきます。本当に申し訳ございませんでした。
「それよりも!!あたしたち今から外行ってくるから!!」
「え?」
そんなの聞いてないんですけど。
「(いいからついてきて!)」
「(う、うん…)」
これは何かありそうな気がする。いやただ単に母親から逃げているだけかもしれないが。
いずれにしろ花菜と離れた場所に行きたいみたいなので、とりあえず恋人の意見に従っておくことにする。
「そう?じゃあ暗くなる前には帰ってきてね〜」
「うん…!」
「晩御飯百合ちゃんの分も用意しておくわね〜♪」
「あ、お願いします…」
結局後でここに戻ってこないといけないらしい。まあでもこの人私がいる時はめっちゃ豪華な料理を出してくれるから喜んで食べさせていただくけど。
「じゃあ行ってきます!」
「い、行ってきます!」
「行ってらっしゃ〜い」
ニコニコ笑いながら手を振ってくる花菜に背を向け、心花に手を引っ張られるままに外に走り出した。




