49 許されてしまった!
なぜかハイテンションだった葵だが、数分後には大切なことに気づいて笑みが消えてしまう。
「つ、つまり…百合さんは私と付き合えない…ということですか…?」
聞いたことないぐらい不安そうな声。流石に危機感を抱き、とりあえず否定しておく。
「確かに今は付き合うことはできないんだけど…。でも…!!だからって嫌いとかっていう訳じゃないからね!?むしろ私葵のこと大好きだ、し…」
なんかとんでもなく恥ずかしいことを言ってしまった気がする。その瞬間顔が熱くなってきて、恥ずかしすぎて背を向けてしまう。
「あははっwなんか自爆してるw」
「あ、ありがとうございます…。そんな風に思っていただけてとても光栄です…♡」
多分葵も顔を真っ赤にしているなコレ。やっぱ自分でもお似合いな気がする。やっぱ付き合うしかないな。
まあでも流石に心花を置いて付き合うことは出来ないのでとりあえずは保留にしておこう。
「もう…!!そういうのはいいの…!!とりあえずこれからどうするか話し合お?」
「じゃあ私と付き合うってのはどう?」
「だ、ダメです…!!百合さんは私のものです…!!」
「え〜。でも私も百合のこと好きだしな〜」
なんかこのままだと喧嘩が始まりそうだ。流石にその光景は見たくないので二人の会話の中に入る。
「とにかく!!私は今のところどっちかと付き合うつもりはないから!!」
「「え??」」
なんかキョトンとした目を向けられる。そんなに変なこと言ったかな?
「じゃあアンタ…七瀬さんを振るの…?」
「いや?とりあえず保留にしてもらうつもりだけど」
「ふぇ…?」
「百合…アンタって子は…」
「ん?」
なんか心花からめっちゃジト目を向けられてしまった。そんなに引かれる要素あったっけ?
「まさか本当に七瀬さんをキープし始めるなんて…流石のあたしもドン引きだわ」
「き、キープとは人聞きが悪いなぁ…!」
「いや事実でしょ。どう考えてもアンタが言ってることはキープしてるだけだって」
「そ、そうなんですか…?」
心花が変なこと言うから葵まで不安そうな顔をし始めちゃったじゃん。後で責任取ってもらうからな?
「いや違うから!!ただちょっとだけ時間が欲しいだけなの!!」
「キープしている間に他の女と付き合うと。なかなかいいご趣味で」
「一応言っとくけど心花のせいでもあるからね!?」
「それとこれとは話が別。あたしは別に七瀬さんをキープしろなんて言ってないし。アンタが勝手にそうしようって言い出したんじゃん」
「それはそうだけど…」
なんか圧倒的に不利すぎる!こんなはずじゃなかったのに!
でも正直心花の言い分の方が正しいから本当に何も言い返すことができない。我ながら最低な女だ。
しかしだからといって自分の欲望に逆らうことは出来ないため、ここは葵にご容赦いただきたいところなのだが…
「いいですよ」
「「え??」」
「百合さんがそうしたいのなら、私は従いますよ」
少し寂しそうだが、目はいつものように綺麗な笑みを浮かべていた。そんな優しい少女の言葉は、百合の心の温度を自然と高くする。
「いいの…?」
「はい。もともと女の子同士なのに付き合ってほしいなんて言った私のわがままから始まったことですから。百合さんには選択の権利があると思います」
「でもいいの…?百合は七瀬さんのこと振っちゃうことになるかもしれないのに…」
「そうなった時は…仕方ありません。私じゃ幸せにできないんだなって諦めるしかないですね」
やっぱりこの子は優しすぎる。絶対振られるなんて嫌なはずなのに、必要のないチャンスを心花に与えてあげるだなんて。こういうところが損する性格というか、他人の幸せを願すぎているというか…。
「あ、でも条件があります」
「条件?」
「はい。百合さん、私とのお試し期間を延長してください」
「え?そんなことでいいの…?」
「でないと私、嫉妬でおかしくなっちゃいそうですから」
「あぁ…」
なんかちょっと怖い。これってヤンデレってヤツ?いやでもヤンデレならわざわざ心花に譲ったりしないだろうし…やっぱまだまだわからないなこの子は。
まあその方がこれから色々知っていけるから楽しそうでいいけど。もちろん心花も同じ理由でお試しで付き合うつもりだ。
とりあえずひとまずこれで一件落着かな?思いの外修羅場にならなくてよかった。
でもなんか、一つ大切なことを忘れているような…
「これって二股じゃね?」
「あ…」
心花の鋭い指摘が百合の心に突き刺さった。




