48 話してしまった!
とうとう約束の放課後がやってきてしまった。
「あの…お返事、いただけるんですよね…?」
恐る恐る屋上に来た葵を、百合と心花が出迎える。
「うん…そのつもりだけど…」
「その前に一つ、あたしから話があるの」
「??」
全く訳がわからず疑問符を浮かべる葵。そして対照的に心臓の鼓動を早める二人。
「朝日奈さんからお話ですか…?でも、あの…」
葵は少し不安そうに百合の顔を眺めた。
それに対し、百合は彼女を安心させるように小さく微笑んだ。
「大丈夫。私の話はその後でするから」
「そうですか。ならその、お話ししましょうか?」
まだ不安は拭いきれていないようだが、ひとまず心花に視線を向けた。
「うん。でもちょっと緊張するから時間もらっていい?」
「構いませんよ…??」
緊張するような話って何だろう?
そんな疑問を抱える葵は、心花が深呼吸をしてこちらに向き直した瞬間にギュッと手を握りしめた。
「一応念のため、七瀬さんも心の準備をしておいてほしいんだけど…」
「私も、ですか…?」
「うん…その、七瀬さんにとってはショッキングな話かもしれないから…」
「??」
やはり葵は何も理解していないようだ。
ま、当たり前のことではあるけど。逆に知ってたら怖すぎるわ。恐怖のあまり失禁してしまうわ。
(流石に漏らさない…よね…?)
二人とも緊張しているのに一人だけ漏れる漏れないとか考えている馬鹿が。
そんなアホは置いておいて、とりあえず心花の方に目を向けてみよう。
「大丈夫です…!心の準備はできています…!」
「そう?ならもう言っちゃうけど…」
緊張の瞬間だ。百合も固唾を飲んで見守る。
「えっと…あのね…。実はあたしも百合のこと…好きになっちゃったみたいなんだけよね…」
「………ふぇ?」
目を見開いたまま腑抜けた声を上げた葵。彼女はそのまま固まってしまい、緊張の沈黙が流れ始めた。
(…へ?何この空気。めっちゃ気まずいんですけど!?)
こんなこと考えてるけど一応百合も当事者なんだよね。全然気づいてないけど。
「えっと…葵…?大丈夫…?」
「…あ、はい。大丈夫ですけど」
意外と平気そうな反応を見せてくれた。もしかしてそんなにダメージ大きくない?
少しホッとした百合と心花はバレないようにそっと胸を撫で下ろし、彼女の言葉に耳を傾けた。
「でもそうですか。朝日奈さんも好きになってしまったんですね」
「うん…」
心花は頬を桃色に染めて首を縦に振った。その仕草も今まで見たことないぐらい可愛らしくて、傍観者の百合も不意にドキッとしてしまう。
いやそれよりも今は葵だ。下手をすればブチギレて喧嘩になっちゃったりするかも__
「ふふ、まさかこんな近くに同志がいるだなんて…!」
「「え??」」
いつになく嬉しそうに笑みを浮かべる葵を見て、二人は不意を突かれたように疑問符を浮かべた。
しかし葵は二人を無視してニコニコで百合への好意を語り始めた。
「朝日奈さんも百合さんの魅力をわかってくれるんですね!♪」
「え?あ、うん…まぁ…」
急に心花の手を握り、目を輝かせる葵。その姿は同志を見つけたオタクのようで、百合に通ずるものがあった。
「しかも朝日奈さんは幼馴染ですから百合さんの可愛いエピソードとかも知ってるんじゃないですか!?」
「ま、まぁ…多分?」
「ふふ♪これからがとても楽しみです♪」
「あ、うん…」
なんか、拍子抜けだ。
もっとこう、修羅場になると思っていたんだけど。まさか心花と共鳴し始めるなんて。まあどうしようもない状況になるより百倍マシか。
「では早速ですが、百合さんの可愛いところを十個ほど語り合いませんか!?」
「うぇ!?い、今!?本人目の前にいるのに!?」
「問題ありません♪私がいるので怖くありませんよ♪」
「いやそういう問題じゃないでしょ…」
なんか仲良くなってるな二人。こっちとしてはそっちの方が嬉しいんだけど、なんかモヤモヤするというか…。
「てか、何勝手に話進めてんのぉ!!??」
ようやく自分の危機に気付いた百合は、二人の話を止めにかかった。




