47 不安になってきた!
とりあえず幼馴染とお試しで付き合うことになった。きっとこれからデートとかして、お互いどんな感じかを確かめることになるだろう。まあ十五年一緒にいて今更何を確かめるんだって感じではあるけどね。でも意外と彼女について知らない部分も多いみたいだし、これもいい機会だろう。
だがしかし、この話はそう簡単にいくようなものではない。なぜなら、現在百合には付き合う直前の女の子がいるからだ。
「お二人とも、おはようございます」
「あ、葵…」
「おはよう七瀬さん…!今日も可愛いね!」
「え?可愛い…?あ、ありがとうございます…?」
百合も心花も気まずそうにぎこちない笑みを浮かべる。
だってこれから彼女にとんでもなく失礼なことを伝えないといけないんだよ?「他の女の子とお試しで付き合うことになりました」なんて付き合う直前の子に言われたら普通人間不信になっちゃうよ?
いやでも葵は優しい女の子だ。きっと笑って「わかりました」って言ってくれるはず…多分。
なんか今になって心花とお試しで付き合うことにしたのを失敗だったと後悔する。本当になんでこんなクズ人間みたいなことしてるんだろう?
「それであの…百合さん…?例の件、そろそろお返事いただけますか…?」
色々頭を悩ませている最中、葵は頬を赤く染めて期待した目を向けてきた。そういうところも滅茶苦茶可愛くて今すぐ本当の恋人にして抱きしめたいところだけど、それはできない。
「え、あ、その…じゃあ、放課後屋上に来てくれる?私と葵と、そして心花の三人で話がしたいの」
こちらからの告白なら心花は必要ない。これには流石の葵も疑問を抱いた。
「え…?朝日奈さんも一緒にですか…?」
「うん…」
ちょっぴり不安そうで、でもそれ以上にきたいした表情。それが百合と心花の心を痛めつけていることも知らず、葵はいつものように優しい表情を見せた。
「わかりました。百合さんがそう仰るのであれば、私は構いません」
「ありがとう…!」
「二人の邪魔はしないから…!」
「はい。では私は百合さんの言葉に期待することにしますね♪」
「う…うん…」
ニコッと笑みを浮かべた後、彼女は席に戻った。
それを確認してから二人は彼女から少し離れたところへ行き、バレないように声を殺しながら会議を始めた。
「(え?本当にどうすんのこれ!?)」
「(どうしよう…葵もめっちゃ期待してるし…)」
「(ここで『他の女と付き合うことにした』なんて言ったら人間不信になるよあの子!?)」
「(だよね…)」
ここに来て自分たちの失敗が浮き彫りになり、二人は本気で頭を悩ませた。
「(もういっそ私たちの関係はなかったことに__)」
「(それはダメ。あたしが恥かいただけになっちゃうじゃん)」
「(でもぉ…)」
本当にどうすればいいんだ。
心花の気持ちを蔑ろにしたく無いし、葵との将来も真剣に考えたいし。完全に板挟み状態に陥ってしまっている。
(ああもう…!!なんでみんな私なんかのこと好きになっちゃうのぉぉぉぉっ!!!!)
二人とも私のことなんか好きにならなかったらこんなに悩むことなかったのに!!後で文句言ってやる!!
「(ねぇ百合)」
「(ん?なに?)」
「(好きだよ♪)」
「ふぇ!?」
頬に手を当て、わざと屈んで上目遣いをしてくる心花の目はいつも以上に楽しそうで、完全にこちらを揶揄ってきている。
でもそれは自分の首も締め付けていて、直後に顔を真っ赤にして背中を向けた。
「ごめん、今のなし」
「え?無理」
「なんでだよぉ…!!」
「いつもの仕返し〜」
「百合のくせに生意気ー!!!」
顔を真っ赤にながら反撃してくるが、全然痛くは無い。そんなことよりも今は心花に勝ったという優越感が大きくて、彼女が可愛くて可愛くて仕方なくなってきた。もう付き合ってやろうか。
いや流石にそれはしないけどね。葵に失礼すぎるし。
(てか、葵のこと本当にどうしよう…)
心花に軽く叩かれている間、百合は葵とのことを真剣に考えた。




