04 浮気されてしまった!
そして自己紹介は淡々と進んでいき、いよいよ皆が注目する女子生徒の自己紹介が幕を上げようとしていた。
「次は七瀬さんね。よろしくお願いします」
「はい」
気高く、可憐で、そして気品のある少女が立ち上がった。全クラスメイトの視線が集まり、彼女はそれに応えるように小さく笑みをこぼした。
「私は七瀬葵と言います。趣味は音楽鑑賞で、特技はピアノです。これから一年間よろしくお願いしますします」
特に気取ったり付け足したりしない、あくまでテンプレ通りの自己紹介だった。でも周りの反応は他の人の時と全く違い、彼女が頭を下げたタイミングで大きな拍手が起こった。
「「「「「おおぉぉ…!!」」」」」
みんなが興味津々で彼女を見つめる中、恋人である百合はというと…
(す、すごい…!!自己紹介しただけでこの拍手…!!やっぱり可愛い人は違うなぁ…)
チヤホヤされる葵のことを羨ましそうに眺めていた。
そして彼女が頭を上げた時、こちらの視線に気づかれてしまう。
(あ、こっち見た…ってあれ、前向いちゃった)
目が合ったと思えば、彼女はすぐに目を逸らして一瞬で席に座ってしまった。そして後ろからでもわかるくらい顔を赤くしている。
(…やっぱり私たち、付き合ってる…ってことになってるんだよね…?)
ただの陰キャ女子を見てここまで取り乱すのはやっぱり恋人同士だからだろうか。いやそうでないと説明がつかない。
(はぁ…どうしよう…。女の子同士で付き合うなんて…考えたこともなかったし…)
読書が趣味だから恋愛小説も色々読んできたし、もちろんBLだって読んだことがある。
でも百合だけは、本当に何も知らない。同性で付き合うというとはもっと非現実的で、一生関わることがないものだと考えていた。
(あの子…七瀬さんには悪いけど…一回ちゃんと話をして、まずはお友達からってお願いしよう…!)
困惑している状態で決断するのは良くない。だから告白を受けるでもなく断るでもなく、まずはキープするぐらいの気持ちでいこう。
(…いやこれはキープとかそういうんじゃない…!!ただ純粋な気持ちで、友達になりたいって思っただけ…!!決して!!同性の恋愛が全くわからないから一旦保留にするわけではない…っ!!)
という感じで彼女をキープする事に決め、百合は心の中で拳を握りながら決意を固めた。
「じゃあ次は花園さん。お願いします」
「はい」
ふと前を向いた時、とある少女が立ち上がった。
その立ち姿はとても高貴で、まるでどこかの令嬢なのかと思わされるほどだった。
「私は花園菫。趣味は写真を撮る事と、そこの葵と出かける事だ」
「!!!??」
これって浮気??
いや七瀬さんが女性相手に好意を抱く前提はおかしいか。でも私告白されたから…。
「たまに突拍子もないことを言い出して困惑させられるけど、根は良い子だからみんな仲良くしてやってくれ」
ニコニコ笑いながら恋人(?)の話をする菫。
やっぱ浮気だこれ。こんな綺麗な恋人がいるのに私に告白してくるなんて、七瀬さんってとんでもない女たらしなんじゃ…?
まさか女の子に対して女たらしの疑いをかける時が来るとは。流石にあの告白が本物なのか不安になってきた。
「そして私自身も、クラスメイトとして仲良くやっていけたらと思う。よろしく頼む」
そこで葵の恋人(?)の自己紹介が終わった。もちろん周りからは大きな拍手が上がっているのだが、一人だけ考え事で頭がいっぱいになっている人もいた。
(どうしようどうしようどうしよう…!?もしかして私とんでもない事に巻き込まれてるんじゃ…!?結婚詐欺…!?浮気されたから慰謝料…!?ああもう私の人生終わりだぁぁぁぁあ!!)
昔から考えすぎな性格なのは変わっていない。
そしてその考えを唯一の友人の心花に相談してドン引きか大笑いされるのもいつものことだ。
しかし今回は彼女に相談するつもりはない。なぜなら女の子同士の恋愛なんていう普通じゃないことを受け入れてもらえると思えないから。いやまだ恋愛には発展してないけどね!?
でも近い将来にそうなる可能性は大いにあるため、ひとまずそれを防ぐためにも本人と話をしなければ。
というわけで百合は珍しく勇気を振り絞って友人以外の人物と話をする事にした。




