38 バラしてしまった
百合と葵がお家デートをしている最中、恋塚家には心花がやってきていて、百合の母、姉、妹とみんなで女子会を開いていた。
「そういえば、誰か今日百合がどこに行ってるか知らない?」
「!!??さ、さぁ…?」
「何も聞いていないわね…」
百合の母である華恋は百合たちの関係を全く知らないため、本人も母には言わずに出て行ったみたいだった。
そしてそれを瞬時に察した姉の恋雪と心花は何とか知らんぷりを貫き通そうとするのだが、ここで莉々恋が自慢のポンコツを発揮してしまう。
「え??百合姉あの恋人の家に行ってるんじゃないの?」
「「!!??」」
「………は???」
「あ」
急に目から光沢が消えた華恋を見てようやく事態の深刻さに気付いた莉々恋だが、もう時すでに遅しである。
「莉々恋…??それ、詳しく聞かせてもらえるかしら???」
「……はい…」
こんな鬼の形相で見つめられてノーと言える人物なんているはずがない。
というわけで母にも二人の関係を説明することになり、三人は正直に今の百合たちの状況を説明した。これが凶と出るか凶と出るか、三人は緊張しながら反応を待った。
そして次に華恋が目を開いた時、カノジョは想定外の反応を示した。
「何それめっちゃ面白そう!!」
「「「え???」」」
黙っていたことを怒られるのかと思いきや、まさかのハイテンションでこちらに迫ってきた。
「も〜!!どうしてもっと早く教えてくれなかったの!?」
「あ、いやそれは…」
「もっと早く知ってれば色々アドバイスとかしてあげられたのにー!!あの子のことだから今頃相手を悲しませてるんじゃないの!?」
「それあり得るけど…」
相変わらず百合への当たりが強い家族たち。しかし彼女のことを慮っている事は確かで、華恋に至っては本気で彼女のことを心配していた。
「しかも全然女心をわかってないから絶対に苦労をかけてるわ!!こうしちゃいられない!!今すぐその彼女の家に案内して!!」
こんなに楽しそうに会話をする華恋を見るのは初めてだ。やっぱり母親は子供の恋愛話が好きなものなのだろうか?いや流石にここまで楽しそうにするのは流石におかしい気がする。
なぜか鞄を持って今すぐにでも家を飛び出しそうになる華恋を、三人で必死に止める。
「待ってママ…!」
「私は止まらないわ!!今すぐ相手の子に挨拶しに行かないと!!」
「冷静になってちょうだい…!その子の家はわかるの?」
「私はわからないわ!でも誰か一人ぐらい知ってるんじゃないの?」
「「「………」」」
三人でを見合わせ、誰も葵の家を知らないことを共有する。
「え?もしかして誰も知らないの?」
「そりゃ、ね…?あたしと恋雪姉は話したことないし…」
「心花はクラスメイトじゃなかったかしら?」
「そうなの!?じゃあ心花ちゃん!!案内お願い!!」
「いや、その…実はあたしも知らなくて…」
「そうなのぉ…」
明らかに落胆する華恋。しかし励ます手段も無く、ただ寄り添うことしかできない。
「まあ落ち着きなって。そのうち百合姉が紹介してくれるよ」
「そうよ。あの子の彼女なのだから律儀に挨拶しに来てくれるわよ」
「確かに七瀬さんそういうタイプっぽいですからきっと近いうちに会えますって」
「私は今会いたいのよ…」
「「「………」」」
正直面倒臭い。でも流石に母相手にそんな事は言えず、三人は全てを百合に押し付けることしかできなくなる。
「とりあえず百合が帰ってきたらすぐに説明させましょうか」
「そ、それがいいですよ!!??それもこれも黙ってた百合が悪いんですから!!」
「それはそう」
「確かに一理あるわね…。よし決めた。帰ってきたら説教しましょうか。親子水入らずでじっくりと、ね」
「「「っ……」」」
笑っているはずなのに顔が怖い。
そんな心霊現象とも思える事態に遭遇した三人は、苦笑いの裏で肝を冷やしたのだった。




