37 負けてしまった!
「これでもくらえ!!」
「はっ!!それずるいです!!」
「ズルじゃないもーん。戦略だもーん」
「ぐぬぬ…!」
葵の部屋の中で白熱した戦いを繰り広げる二人。今現在、絶賛ゲーム中である。
「はい一位〜!!楽勝っ!!」
「はぅ…また二位です…」
ちなみに二人がやっているのは百合が持ち込んだ結構定番のレースゲームで、今のところ百合が五連勝している。しかしそれに対して初心者である葵は経験者の百合にしっかりとボコられていて、毎度良いところまで行って敗北を喫している。
「まあまあ、初心者にしてはセンスあると思うよ?私には及ばないけどね」
「も、もう一回です!!」
「仕方ないなぁ。葵が諦めるまで付き合ってあげるよ!」
悔しそうに眉間に皺を寄せつつ、次の戦いに挑む葵。
だが、現実はそう甘くはなくて。
「やったー!また一位〜!!」
「後一歩だったのに…」
「結局この戦術が一番強いんだよね〜。あとついでに二位に屈辱を与えられるし」
「どうしてそんなことをぉ…」
ゴールまで後少しのところで百合のアイテムに当てられ、直前で交わされてしまった。これは誰がやられてもかなりストレスが溜まる戦法なのであまり推奨された物ではないのだが、百合はゲームになるとなりふり構わない性格で。可愛い彼女にもしっかりと洗礼を浴びせている。
「これがゲーマーの意地ってものだよ!!私に勝ちたければ毎晩夜更かしすることだね!」
「毎晩は無理ですヨォ…」
「睡眠時間を削ってゲームをしてこその実力だからね。そう簡単には勝てないよ!」
「………」
なんか引かれているような…。まあいいか。こっちは楽しくてゲームやってるだけだし!?そのせいで学校で眠くなるのも仕方ないって思ってるし!?堂々とゲームやれば何も恥ずかしいことないよね!!
とんでもない持論をお持ちの百合さん。今すぐそんなもの捨てて真っ当に生きた方が自分のためだよ。まあこの程度の言葉が響くのならもうゲームなんてやってないだろうし、ここは彼女の好きにさせておくことにしよう。
「あの、もう一回やりましょう」
「ふふ、葵も懲りないね。ゲーマーの才能あるよ?」
「ゲーマーにはなるつもりありませんが、負けっぱなしは悔しいです」
「いいよ…今日はとことん付き合ってあげる!!」
こうして二人の長いゲームが始ま…らなかった。
「か、勝った…!勝ちました…!!」
「ウソ…負けた…??この私が…??」
「やった!!やりました!!」
果たして葵が勝つまで何時間かかるのかと思っていた矢先、一瞬で百合に勝ってしまった。
これには二人とも驚きを示すが、反応は全く対照的になっていた。
「私、勝ちましたよ!!」
「そう…それはおめでとう…」
「これで私も百合さんに肩を並べられましたかね!?」
「いやそんなことは!…あるのかも…?」
負けておいて見苦しい事はできない。そんな格好悪い姿を恋人の前で見せるわけにはいかず、ちゃんと負けを認めることにした。
「何にせよ、本当にすごいよ。おめでとう」
「ありがとうございます…!百合さんが色々教えてくれたおかげです!」
「ううん。葵のセンスが良かっただけだよ」
「それはそうかもしれません」
「あ、認めるんだ」
「ドヤです」
「ぐぬぬ…」
自分の三桁時間の努力をほんの一時間で越えられたのだと思うと途端に悔しさが上ってきた。そして気がつけば、立場が完全に逆になってしまっていた。
「もう一回!!もう一回やろ!!」
「ふふ、今度こそは私に勝てるでしょうかね?」
「まだ一回しか負けてないし!?トータルで見たら私の方が勝ってるし!?」
「でも直近では私が勝ってますからね。私は今を見るべきだと思うんです」
「じゃあ次で白黒つけよ!!次勝った方が強いってことで!!」
「望むところです!!」
ここが先輩としての腕の見せ所だ!経験の差を見せつけてやる!
そう意気込んで次の戦いに挑んだ百合は、絶望の連敗を喫するのであった。




