33 揶揄われてしまった…
「………!!」
「………」
睨み合う二人。いや正確には睨んでいるのは葵だけだ。
「あの〜…あたしの顔に何かついてる?」
困ったような表情をする彼女のことは恋人からよく聞いている。
朝日奈心花さん。明るくて友好的で、私とは真逆のタイプの存在。
そんな彼女と今、ペアワークで一緒になっています!
「い、いえ…。綺麗なお顔がついていると思います…」
「ふふ、何それっ」
きっとこの人は何を言っても笑っていてくれる。だってあの人の親友ですから。
「それを言うなら七瀬さんの方こそ綺麗なお顔がついてるよ?」
「あ、ありがとうございます…」
やっぱりこういう人とはどうやって話せばいいかわからない。でも向こうは楽しそうに話しかけてくるから、余計に難しいのだ。
「なんか今の会話カップルっぽくない!?あたしたちもう付き合っちゃう!?」
「ふぇ__!?」
流石に突然すぎて衝撃が頭を襲う。でも葵にはもう断る理由があり、彼女にそれを説明する。
「ご、ごめんなさい…!!実は好きな人がいて…!!」
「そっか〜。振られちゃった〜」
恋人の友達を振るのは流石に気まずすぎる…!!
でも心花は全く気にしていない様子で、むしろ楽しそうに笑みを浮かべている。
「まさか百合に負ける日が来るなんて思わなかったよ」
「__!!??」
「あ、ごめん。あたし二人のこと知ってるんだ」
「………」
確かに前電話した時に話したって言ってたような…。
でもこうやって他人に面と向かって言われるのは初めてで、流石に恥ずかしさが勝ってしまう。
「で、できるだけ内緒でお願いします…」
「わかってるよ。大事な親友の恋愛のことをベラベラ喋ったりしないって」
あの人の友達だから悪い人なわけがないとは思っていたけど、実際話してみてちゃんと良い人そうで安心した。
まあでも関係者だけの時はちゃんと悪戯して来そうだから怖くはあるけど…。
でも一応悪い気はしないので、彼女を拒んだりすることはない。
「あたしは二人のこと、応援してるよ」
「ありがとうございます…。やっぱり良い人ですね」
「あたしが?ないない。あたしなんかより百合の方が何倍も良い子だって。あたし普通に性格悪いし」
たまに百合との会話を聞いていたけど、その時この人は彼女を普通に弄っている。でもこうやって百合以外の人と話す時は自分を下げて彼女のことをとことん褒め称えている。それだけで心花が優しい証明には十分で、葵の心は安心で包まれた。
「そんな事ないですよ。こんなに優しい方が百合さんの近くにいてくれるなんて、とても安心できます」
「そうかなぁ?まぁそういうことにしておこうかな。是非安心してくれて良いよ!」
自信たっぷりにグッドをしてくれる。これだけ頼もしいと本当に安心して恋人を任せられる。
だがしかし、それにはいくつかの問題点もあるわけで。
「あ、でもそれで百合があたしに惚れちゃったらごめんね?あたしが強いのが悪いから」
「っ!!??そ、それはダメです…!!」
「ウソ嘘冗談冗談。取ったりしないって」
「〜〜っ!!!」
本っ当にこの人は…!!
百合も毎日この人に苦しめられていると考えると本当に同情しか湧いてこない。陽キャラ恐るべし。
「二人には幸せになってもらいたいからね〜。あたしにできる事があれば何でも相談してね!」
「………」
こんなに揶揄ってくる人に相談して大丈夫なのかな…?いやでも百合さんはこの人に相談しているのかも…?
(こんな愉快な方と友達になっている百合さんってもしかして凄い人なのでは…!?)
結局葵の頭では百合が凄い人認定され、より彼女を崇拝するようになった。
しかし当然現実は全く違っていて、百合もいつも心花に振り回されてかなり苦労している。葵が想像するようなシゴデキ女子高生は、百合には一ミリも当てはまらないのだった。




