32 知ってしまった
私の名前は心花。実は最近友達百合の周りには人が増えていて、正直驚いている。
姉妹は前より気さくに話しかけるようになってるし、学校で友達が一人もできたらしい。百合にとっては大偉業だ。
その上百合の隣にはなぜか恋人がいて、毎日のように惚気を聞かされている。
…そんな状況であたしが黙っていられるわけないじゃん!!
「百合!!」
「え…?どうしたの急に」
ある休日、次の日にデートを控えた百合とショッピングをしている。でもあたしは全然買い物に集中出来てなくて、ずっと百合のことを目で追っていた。
そこで気づいた事がある。それは、百合が女子らしくなったという事だ。
「あんた最近女子力高いけど、何かあった?」
「へ…?どういう事?」
相変わらず鈍感な子だ。でもあたしは優しいから客観的な意見を教えてあげる。
「なんか最近服装オシャレになってきたし良い匂いするようになったし、それってあんたも女子としての自覚が芽生えたって事じゃないの?」
「そう…なの…??」
「いやそうでしょ。あたしから見てあんたはJKらしくなって来たよ?」
「それって普通の女の子になれてるって事…!?」
申し訳ないけど現実はそんなに甘くない。
「いや普通までは行かないけど」
「しゅん…」
「でも前よりはめっちゃマシになってる。ギリ人前に立たせられるぐらいには」
「それ前が酷すぎたって事!?」
「そりゃそう」
どうせ本人も自覚はあるだろうけど、少中学生時代の百合はマジで酷かった。
実際初対面の人と話しただけで鼻血出して保健室で寝込んだ事だってあるんだよ?
その時代から百合を知ってるあたしからしたらこんなにも堂々としてるのは本っ当に成長したって感じる。まあこの子変なところで鈍感だから言ってもわからないんだろうけど。
「まあ一応褒められてるのかな…?」
「まあね」
「う〜ん…」
「嬉しくないの?」
「…まだ、足りないかな。せめて心花に普通の女の子になれたって言ってもらわないと、葵の隣に立つのに相応しくないでしょ?」
「っ__!!」
不意に、心がモヤっとした。
いやそんなのおかしい。今までずっと面倒見て来たたった一人の親友がこんなにも立派になって、しかも恋人に相応しい人間になりたいなんて言ってるのに。
あたしは、どうして素直に喜べてないの?
「それに、こうやってオシャレするのってとっても楽しいし!何で今まで気づかなかったんだろう?」
「………」
ポカンと、百合を見つめることしかできない。
あたしが今まで子供だと思っていた百合は、知らない間にずっと大きくなっていた。あたしなんていなくても普通にやっていけそうなぐらいに、百合は立派な人間に育っていた。
なのになんでこんなにもモヤモヤしてるんだろう?百合の成長を喜ぶべきなのに。
「お〜い!!心花??」
「…え??あ、ごめんどうかした?」
「どうかしたのは心花の方でしょ。なんか心ここに在らずって感じだったけど大丈夫?体調悪かったりしない?」
「ううん。全然元気!」
「………」
怪訝そうな目を向けられる。そして直後、百合があたしの額に手を伸ばしてくる。
「う〜ん…熱は無さそう…?」
「何してんのよ公衆の面前で!!」
「いや熱あるのかなって…」
「元気だって言ったじゃん!?」
「…嘘、でしょ?」
「え??」
「何年心花と一緒にいると思ってるの?嘘ついてるくらいわかるよ」
「………」
衝撃で言葉が出なくなる。
まさか、百合がそんなにもあたしのことを見てくれていたなんて。
その瞬間、あたしの心は言葉では言い表せないような温もりに包まれた。とても心地良くてドキドキして、そして我を忘れてしまいそうで。
今まで長いこと一緒に居て百合にこんな感情抱いたことはない。きっとこの子に彼女が出来た影響なんだろう。
だったらあたしは、もしかして…。
「ああもう!!あたしのことはいいから早く服探すよ!!」
「え??でも体調が__」
「体調は本当に悪くないから平気!!体調は!!」
「そう??なら良いか」
「早くして!!恥ずかしいから!!」
「恥ずかしい…??」
もしかしたら、百合とはもう普通の友達には戻れないかもしれない。




