31 ボッチを肯定されてしまった!
「なるほど。つまり百合は今まで友達もほとんどいた事がないのか」
「そうですヨォ…」
葵に屋上に呼び出されたはいいものの、最終的には菫という彼女の友人とずっと話をしている。しかも話題が何気に心に刺さってきて、百合のメンタルHPは徐々に低下している。
「意外だな。君のような人間なら友達ぐらいいくらでも作れそうだが」
「私そんなにコミュ力高くないですよ…」
「でもほぼ初対面の私とちゃんと話せているではないか」
「それは…」
あなたがエグい質問ばっかりしてくるからですよ!!
なんて言えるはずもなく、適当に言葉を取り繕った。
「葵の友達だからですかね…?葵が親しくしている人なら私も仲良くなれるかもしれないって」
「なるほど。なら葵と友達になった甲斐があったな」
そっと葵に笑みを向けた。すると彼女が少し頬を赤くし、恥ずかしそうに視線を逸らした。
「ふふ、私の友達は可愛いだろう?」
「まぁ…そうですね。みんなが葵と仲良くしようとする理由がよくわかります」
容姿端麗な上に親しい人にはとことん甘えるタイプだろうし、恐らく男女からの人気はとてつもないだろうなぁ。私にはわからない世界。悲しい。
「なあ」
「はい?」
「もしよかったら、私と友達にならないか?」
「…え??」
あまりに突然の出来事に、脳がフリーズしてしまう。
「なぜ私なんかと…?」
「色々と忙しい高校生活で友達が少ないというのは少々不便だろう?」
「私別に忙しくないですけど…」
「それに葵との進展も百合の口から聞きたいしな」
「それって別に友達になる必要ないんじゃ…」
「…私が君と友達になりたいんだ」
「私なんかと友達になっても何も良い事ないですよ…」
「………」
友達は欲しいと思ってる。でも友達ってこんな感じでなるものなの?仲良くしているうちに気づけば友達になってるみたいなのが普通じゃないの?
こんな風に百合の中に刻まれた常識は現実とはかけ離れている。自己肯定感の低さ故に、菫も葵も顔が引き攣っている。
「…なるほど。何となく百合に友達ができにくい理由がわかった気がするよ」
「流石にこれは少々手に負えないですね…」
「二人揃って酷くない!?私泣いちゃうんですけど!?」
というか出会ってそこまで時間が経ってない二人に友達ができない理由を見抜かれるなんてどんだけわかりやすいの!?そういうのはもっと早く教えてよ!?心花!!
全てを友人のせいにする百合。そういうところに友達ができない理由が詰まっている気もするが、ひとまず二人の言葉に耳を傾ける。
「まあでも、あまり友達が多すぎるのも良くないか」
「どうしてですか?」
「百合の周りに可愛い女の子がたくさん寄ってくるとどうなる?」
「はっ__!!??争奪戦が始まってしまいます…!!」
「そういう事だ」
「どういう事…??」
百合は二人の会話についていけないが、彼女を放って話は進む。
「だから百合は不人気な方が葵にとっては都合が良いと思わないか?」
「確かに…!!そっちの方が百合さんが目移りする心配も少ないですしね…!!」
「そうだ」
「どうなんだそれは…」
ボッチを肯定されているのか否定されているのわからないけど、とりあえず葵が嬉しそうにしているのはわかったので彼女の満面の笑みを鑑賞しておく。
「百合さん…!!」
「なに…?」
「これからもずっと独りぼっちでいてください…!!」
「どんなお願い…!!??恋人にそんなお願いする人聞いた事ないんだけど!?」
しかしこの葵の提案には欠点があって、菫がそれを指摘した。
「でもそれだと葵も百合と仲良くできないことになるぞ?」
「ふぇ…?」
「百合が独りぼっちなら当然私も葵も百合に話しかけたりも出来ないだろう?」
「た、確かに…!」
「つまり二人の恋人関係も解消になるな」
「!!??それはダメです…!!今すぐ友達を作ってください!!」
「もうどうすればいいのぉぉぉぉ!!!!」
まぁどの道葵が心配するようなことにはならないだろうから安心して欲しい。
まさか葵以外にも恋人を作るなんて、そんなことは致しませんよ。百合に多少なりとも常識があれば、ね。




