29 勘づかれてしまった!
翌朝、アラームの音で目を覚ました百合。しかし昨晩の寝落ち通話のせいで少しの時間しか眠れていなくて、彼女にとってかなり辛い朝が訪れていた。
「…はぁ…今日も学校かぁ…」
学校なんて滅んでしまえばいいのに。
中学までは毎日のようにそう思っていた。
でも今は少しだけ違う。学校に行けば葵に会えるから、最近は少しだけ学校に行く気が起きている。まあ今日は例外のようだが。
「二度寝したい…学校行きたくない…」
極度の眠気が百合を襲う。しかし時計を見るともうゆっくりしている時間はない。
正直サボりたいけど、そんなことをすると母に怒られるので頑張って重い腰を上げた。
そして何も頭が回っていない状態で支度をし、ボーッとしたまま家を出た。
「あ、おはよ〜」
「おあよ〜…」
いつも通り心花が家の前で待機していたけれど、やはり百合は眠そうなまま。
「どしたん?寝不足?」
「うん…」
「どうせあんたの事だからどうせゲームでもしてたんでしょ?そろそろ辞めた方がいいよ?もう高校生なんだし」
「…そうだね。うん、そう言っておく」
「言っておく…??」
百合は全く頭を回転させずに会話している。それは心花も理解しているため、多少会話が噛み合わないぐらいでは特に反応を示さない。つまり今なら何でもやり放題というわけだ。
「で??七瀬さんと寝落ち通話した感想は?」
「なんか変な感じだった…。話している時は楽しいんだけど、声が心地よくて気付けば眠ってて…」
「あ、ホントに寝落ち通話してたんだ」
「へ?」
何も考えず全てを話した百合は、そこでようやく自分のやらかしに気づき、咄嗟に誤魔化そうとした。
「いや__今のは違くて!!」
「何が違うの?」
「全然頭が回ってなくて…!!」
「の割には具体的だったけどね」
「っ…!!」
数秒前までの自分が憎い。
しかし今更どうすることもできず、心花からニマニマと笑みを向けられる。
「ほほぉ〜ん?♪お試しで付き合ってる癖に意外とやる事やってるんだ〜♪」
「っ…!!」
「まあ?私は全然いいと思うけどね?♪大好きでしょうがない彼女と寝落ち通話してたら寝不足になっちゃうのも仕方ないもんね?♪」
「っ__!!本当に違うからぁ!!」
ようやく目が覚めた百合の心の叫び。それはようやく心花に届き、彼女はようやく諦めたように息を吐いた。
「まあ私は別にそれでもいいけど、七瀬さんがそれ聞いたらどうなるかな?」
「っ……」
彼女の言葉が百合の心に突き刺さる。
確かに、この発言を葵本人が聞けばとんでもないぐらいのショックを受けてもう学校に来なくなるだろう。
もう完全に心花の掌の上で踊らされている気がするけど、だからといって葵のことを裏切るわけにはいかない。なので百合は勇気を振り絞り、心花に自分の正直な気持ちを伝えた。
「やっぱさっきのなし…。本当は葵と寝落ちできてとっても嬉しかったです…」
「よく言えました♪あんたは偉いぞ百合ー!!」
「もう!辞めてよ髪崩れちゃうじゃん!」
わしゃわしゃと頭を撫でられる。しかし直後、心花は未確認生物でも見つけたかのように目を見開いた。
「百合が髪を気にしてる…??え、もしかして今日嵐でも来るの?」
「何だよ急に!!私だって髪くらい気にするって!!」
「でもあんた去年まで『髪なんて全部一緒じゃん』とか言ってたよね?」
「あの頃の私とは違うの!!」
酷い言われようだけだ、前までそうだったからあまり否定はできない。でも百合は今を生きているわけで、それを心花にしっかりと伝えておく。
「今の私はどこにでもいる普通の女の子なの!!髪型だって気にするしメイクだってしてるの!!」
「でも普通の女の子は同性相手に思わせぶりな態度とらないと思うけどな〜」
「っ………」
しかしその普通を否定するのが葵という女の子で、それに少し魅力を感じているのが百合である。
だから百合は決して葵を否定しない。例え世間が普通ではないと後ろ指を指そうと、必ず彼女を守ってみせる。




