28 寝落ちしてしまった!
最近できた恋人、葵と寝落ち通話をしている百合。彼女はふと思い出し、先ほどまでの出来事を正直に話した。
「あのさ、実はその…私たちの関係、話しちゃったんだけど…」
【ふぇ…?】
初めて聞く葵の腑抜けた声。その声には困惑と驚きが乗っていた。
【だ、誰にですか…?】
「お姉ちゃんと妹と、それから私の親友に…」
二人の関係は世間で言う百合カップルというやつだ。法律的には結婚もできないし、数も少数だ。少し大袈裟な言い方をするとマイノリティと言うことになるわけで、それを他人に話すのはかなりハードルが高い。きっとそれは百合だけでなく葵もそうだろうから、こうして緊張しながら正直に打ち明けているのである。
「本当に申し訳ないって思ってる…!葵に相談もなく他人に話しちゃうなんて普通に考えて嫌だよね…!私もちゃんと反省してるしこれからも気をつけるから__」
しかし、どうやら葵にとってこの関係に何の後ろめたさもないらしい。
【つまり百合さんの親しい方に私のことを紹介してくれたってことですか?】
「え?ま、まぁそうなるの…かも…?」
【じゃ、じゃあその、私との交際を正式に認めてくれるってことですか…?】
「…え?」
なんかすごい良いように捉えてないこの人!?
「いやそれは違うよ!?」
【で、でも親しい方に話すのは世間一般では正式にお付き合いを始めてからだと思うんですけど…!】
「確かにそれは一理あるけど…!!でもまだ正式に付き合うって決めたわけじゃないから!!」
【そうですか…】
声だけでしょんぼりしているのがわかる。
そしてこれだけの説明では拒否されているという誤解を招きかねないので、一応訂正をしておく。
「で、でも可能性はあるからね…!まだお試し期間中だからっていうだけで…!」
【(私は今すぐでも良いんですけど…)】
「……」
彼女の吐息混じりの声が電話越しに聞こえてきてついドキドキしてしまう。
(いや負けるな百合!!このまま流されると大変なことになるぞ!!)
そう自分に言い聞かせつつ、葵に他の話題を振りかける。
「そ、そろそろ遅いし葵はもう寝た方がいいんじゃない…?夜更かしはお肌に悪いし…!」
まあ私はそんなの全然気にしたことないけど。
でも葵の肌はとても綺麗だし、彼女としてちゃんと気を遣ってあげないと。
そう思って言葉をかけたわけだが、彼女にその言葉は届かなかった。
【あ、いえ。お肌は気にしたことないので大丈夫です】
「え?スキンケアとかは…?」
【それは人並みにはしてますけど。でも私多分百合さんが思ってるほど女子力高くないですよ?】
「え…??」
その容姿で言われても。
肌はツルツルで近づけばいい匂いするし、よく見れば爪まで綺麗に整えてるし。そんなの百合からすれば女子力以外の何でもない。
しかし本人が違うと言っている以上、これ以上詰めるのは失礼にあたるのでそれ以上は話さないでおく。
「…まあそういうことにしておこうかな…。ていうかそれを抜きにしても睡眠はちゃんと取るべきじゃない?明日学校だし」
至極真っ当な意見だ。しかし発言の本人はまだ夜更かしをするつもりである。
でもそんな百合の策を察しているのか、葵もまだ寝るつもり無さそうに言葉を返してくる。
【私はまだ百合さんとお話ししていたいですけど…だめですか…?】
「っ__!!??ま、まぁ葵がいいなら私はいいけど…」
【じゃあ私が寝落ちするまで付き合ってくださいね…!♡】
「出来るだけ早く眠ってね…」
結局二人とも寝落ちするまで続けた。
ちなみに二人が眠ったのは深夜の二時だった。




