27 電話してしまった!
デートが終わって数時間。もう完全に外も暗くなり、人によっては眠り始めるような時間になった。しかしもちろん我らが百合がその程度の時間に眠るはずもなく、いつものように部屋でゴロゴロしている時、突然携帯から通知音が鳴った。
(ん?どうしたんだろうこんな時間に)
心花がこんな時間に連絡してくるなんて珍しいと思いながら携帯を手に取った。
しかしそこに表示されていたのは心花ではなく、最近新しく連絡先を交換した葵の名前だった。
「え゛、葵…!?」
完全に不意打ちを喰らい、スマホをお手玉した。
(そ、そっか…連絡先交換してるから葵から連絡くることもあるんだ…)
既に数回やり取りをしているのに、まだ葵と連絡先を交換したという事実を受け入れられていない百合。その背景には、家族と心花以外の人間とはまともに話せないというボッチストーリーがあって。未だに家族と心花以外の人間から連絡が来るということを脳が理解出来ていないのだ。
(急にどうしたんだろう…。もしかして別れ話とか…!?長文で『あなたとは付き合えません』ってフラれるの!?いや告白されたの私の方なのに!?)
あまりに友人と連絡を取ったことがないため、百合は完全に誤解してしまっている。
(や、やっぱり私なんかに恋人なんて務まらなかったんだ…。うんうん、それは正しい判断だよ)
なぜか誇らし気に自虐をする。しかし確実に心は傷ついている。
(葵も私なんか忘れて本当に大事にしてくれる人を探した方がいいよ絶対)
そんなことを考えながら恐る恐る葵とのトークを開いた。そしてそこに表示されたのは、想像とは少し違った内容の文面だった。
『夜分にすみません!もしよかったら電話しませんか…!』
「…え?」
一瞬理解が追いつかなくなるが、直後に百合は全てを悟った。
(あ、なるほど。電話で別れ話するタイプか。確かにそっちの方が相手に伝わりやすいから良いよね!)
また謎に鼻を高くする百合。一体何がそんなに誇らしいのかわからないが、ひとまず葵との連絡を覗いてみよう。
『いいよ!』
『ありがとうございます!』
連絡は一瞬で途絶えていた。
しかし直後、葵から電話がかかってくる。それに対し百合は怯えながら深呼吸をし、ガッチリ拳を握ってから電話に出た。
【もしもし。聞こえてますか?】
「もしもし。聞こえてるよ」
【夜分遅くにすみません。もしかしてお休み中でしたか…?】
「ううん全然。私基本寝るの遅いから」
【そうなんですね。よかったぁ…】
こっちの睡眠事情まで心配してくれる彼女、最高かよ。
というかこうして耳元で声を聞いて気づいたけど、葵の声が良すぎる。彼女の癒しボイスがいつもより間近に感じられるし、お陰で吐息混じりの声が耳の奥まで伝わってくる。これはASMR配信をすればかなり売れるぞ。
いや今そんなのはどうでもいい。こんな可愛くて美声の恋人がわざわざ電話してきてくれたんだからそっちに集中しないと。
「それで、どうしたの?わざわざ電話かけてくるなんて」
【それはその…こ、恋人の声を聞きながら眠りたいなって…】
「っ!!??」
つまり寝落ち通話したいってこと!!??
【ダメでしょうか…?】
「…そ、それはぁ…」
顔を見なくてもわかるぐらい声が物欲しそうにしている。
こんなお誘い断れるわけないじゃん!!
「まぁ…いいけど…」
【!!本当ですか!?】
「うん…。ただし!明日学校なんだから長電話はダメ!ちょっとお話したらすぐ寝るんだよ?」
【ふふ、お母さんみたいなことを言いますね】
「微妙に嬉しくないな…まあなんでも良いけど。それで?なんの話する?」
【あ、じゃあ私たちの将来の話から__】
「気が早すぎるって!!??」
いつもそうだけど、葵は早とちりしがちな傾向がある。そしてそのせいで自爆して顔を真っ赤にする。どうせ今回もこの流れだろうけど、これは彼女から言い始めたことなので付き合ってあげよう。今回はどんな表情を見せてくれるのかなぁ?
いや電話だから顔見えないんだけど。




