25 やられてしまった!
楽しい時間は一瞬で過ぎ去るもの。気づけばもう暗くなってきていて、二人は今日のデートの終わりを迎えた。
「あの、今日はありがとうございました」
「ううん。こっちこそ楽しかった。ありがとう」
家族と心花以外の人と遊びに行ったのなんて久しぶりだし、その上とても楽しい一日だった。今日のデートはきっと百合の心の中に深く刻まれることになるだろう。
「もしよければ…また来週とかどうですか…?」
「え?来週もデートするってこと…?」
「百合さんさえよければですけど…」
どうせ来週も暇だし、今日みたいに楽しく遊べるなら断る理由は特にないので、百合は首を縦に振った。
「うん…。また来週…ね…?」
「!!ありがとうございます…っ!!」
満面の笑みで喜びを表す葵を見て、百合も心の底から喜びでいっぱいになる。
「じゃあそろそろ暗くなってきたし、気をつけて帰ってね」
「はい。百合さんも、お気をつけて」
いつまでも喜びを分かち合えるわけではない。彼女はとても可愛いし、あまり遅い時間まで付き合わせるわけにはいかないのだ。
「ばいばい」
「さようなら」
小さく手を張り合い、葵と別れを告げた。
そして彼女の姿が見えなくなったぐらいで自身も自宅に向かって歩き始め、夜風に当たりながら軽く考え事を始めた。
「はぁ。今日はなんか色々あったなぁ」
今日は間違いなく自分史上最多の初めてを経験した日だった。その全てを思い出そうとするだけで途方もないぐらいに色んなことを経験して、そして共に分かち合った。
人生でこんな経験を共にする人なんて、一体どれぐらいいるんだろう?
「お姉ちゃんに莉々恋に、あとは心花ぐらいかな?」
「呼んだ?」
「うん。私にとって大切な人って誰だろう…って、え゛ぇぇぇぇっ!!???」
背後から聞き覚えのある声がすると思えば、先ほど名前をあげた三人が真後ろに存在していた。
これには流石の百合も驚きを隠しきれなくて、驚きで大きな声を上げてしまった。
「ちょっと、うるさいわよ」
「いやいやいや!!??三人揃って何してるの!!??」
「百合姉のことが心配だったからついて来たんだよ?」
「はぁぁぁ!!??」
脳が理解を拒否している。でも一つだけ確認しておかないといけない事があるため、百合は何とか理性を保ってその質問をする。
「一体いつから私のこと付けてたの!!?」
「ひと聞きが悪いなぁ。監視してただけだよ?」
「どっちも一緒だよ!!??それでいつから私のこと監視してたの!!??」
「最初から」
「最初!!??」
ってことはつまり葵とあんな事やこんな事をしてたのも全部見られて…!?
「百合、帰ったら話があるわ」
「ち、違うのぉぉぉ!!!」
「何が違うのよ。あんなにイチャイチャしておいて」
「それはそう…かもだけど!!でも絶対に誤解してるから…!!」
「誤解…?はっ__!?もしかしてあなた達もうそこまで進んで__」
「そっちじゃなぁぁぁいっ!!!」
もう叫びすぎて息が上がってきた。そろそろこの面倒な会話も疲れてきたんだけど。
そんな百合の心の声が届いたのか、心花がやれやれといった表情で言葉を発した。
「まあまあその辺にしてあげときな。多分百合にも色々事情があるんでしょ」
「事情がないと百合姉とあんな仲良さそうに遊んだりしないでしょ」
「確かにそれもそうね。ごめんなさい。少しふざけすぎたわ」
「勘弁してよもぉ…」
ずっとこんな調子だと心臓がいくつあっても足りない。しかし今回はこの辺で面倒なノリが終わりそうなので良しとする。
「でも、ちゃんとした説明はしてもらうつもりだけどね?」
「え」
「そりゃそうでしょ。恋人ができたのにあたしたちに黙ってるなんてあり得ないでしょ?」
「いやそれはその…」
なんか勝手に恋人だと決めつけられてしまっているが、間違ってはないので否定できない。
「ま、最悪七瀬さんの方に訊いちゃってもいいんだけど?一体どんなラブラブコメントが返ってくるのかなぁ?」
「それだけは絶対にやめてぇぇぇ!!!!」
ニヤニヤしながら悪巧みをする心花には敵わないことはこの場にいる全員が理解しているため、百合は素早くそれを阻止しにかかった。しかしそれには相応の代償が必要になるわけで。
「じゃあ正直に話してくれるよね?」
「…はい」
「はい言質取りました!ささ、早く帰ろー!」
「(百合姉かわいそ〜…)」
「(悪魔って存在するのね…)」
「二人とも???何か言ったかな???」
「「いえ何も」」
「じゃあ早く来なって!ほらほら!」
「「「………」」」
恋塚三姉妹、心花に完全敗北す。




